ビスポーク(オーダースーツ)

スーツのオーダー、10の失敗から学ぶ【サラリーマンのためのオーダースーツ講座08】

投稿日:平成27年(2015) 5月31日  更新日:平成30年(2018) 12月18日 

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皆さんはオーダースーツで「失敗した経験」はありますか?

私はあります。それも、結構たくさん。しかし、そういった失敗を積み重ね、過去の反省を踏まえながら、少しずつですが良い物が作れるようになってきたと思います。

そこで今回は、私の失敗談をもとに、オーダースーツの気をつけるべきポイントについて考えてみたいと思います。なかには「オーダースーツの失敗あるある」だったり、はたまた「普通は失敗しないよ」だったりするかも知れませんが、皆様のお役に立てれば幸いです。

『サラリーマンのためのオーダースーツ講座』一覧

第1回:いま、オーダースーツとテーラーがアツい!
第2回:フル/イージー/パターンオーダーって何?
第3回:おさらい! オーダースーツ用語「生地編」前編
第4回:おさらい! オーダースーツ用語「生地編」後編
第5回:見た目を左右するオーダースーツ10の「ディテール」
第6回:着用者が注目すべき「サイズ感」7つのポイント
第7回:手縫いと機械縫いの違いとメリデメを考える
第8回:スーツのオーダー、10の失敗から学ぶ)【今回】


1.生地が予想より派手

自分の好きな生地を選ぶことが出来るのは、オーダースーツの醍醐味の一つです。しかし、小さな生地見本(バンチブック)で見た時と、実際に仕上がってきたものでは、雰囲気/印象が全く違うことがあります。

私の場合は、当初の想像よりかなり光沢/艶感が強く、そのスーツはパーティ用途限定になってしまった経験があります。また、柄物(ストライプ柄、格子柄)も難しい傾向にあると思います。

対策

  • 慣れるまでは、生地見本(バンチ)からでは無く、現物から選ぶ
  • 現物生地を肩から掛けて、仕上がりを想像する
  • 生地は、出来れば太陽光の下でも確認する(本当の発色や光沢を確認出来る)

 

2.初回オーダーで高い生地を使って失敗

良さそうなテーラーを見つけ初めて注文するとき、せっかくのオーダーだからと高い生地を使うのはかなりリスクの高い行為です。特に仮縫いの無いイージーオーダーやパターンオーダーでは止めた方が良いでしょう。初回に出来上がったスーツは、多くの場合、どこかに不満が出てしまうからです。

サイズの詰めが甘い、高めの生地を使ったスーツが今でも何着か残っています。これらは殆どが初回のオーダーででした。サイズ感が気に入らず、着用回数が少ないため、捨てるに捨てられず、結局は作った金額の3割くらいをかけて大改造(お直し)をした経験があります。

対策

  • 欲張らず、初回オーダー時は比較的安価な生地で作る(オプションも極力つけない)

 

3.裏地にポリエステルを使って蒸れる

これは個人差のある失敗です。私の場合は暑がりで結構汗をかきます。そのため、吸湿性に乏しいポリエステル生地を裏地に使うと、かなり蒸れます。冬なら暖かいので良いのでは? と思うかも知れませんが、冬も暖房などで本人の感覚以上に汗をかくので、出来れば避けた方が良いです。

※ 安価なイージーオーダーやパターンオーダーの場合、何も指定しないと殆どの場合ポリエステル生地が標準で使われてしまします。

対策

  • 裏地には、キュプラ(ベンベルグ)やキュプラ混紡生地などの比較的吸湿性の高い物を使う
  • 胴裏だけでなく、袖裏やトラウザーズ(ズボン)の裏地にも注意する

但し、ポリエステルを使っていても、夏専用の機能性生地などもあるので、その場合は選んでも良いと思います。

 

4.細番手の生地を選んで傷みが早い

SUPER1XX’Sなどの高級細番手生地。たしかに見た目は綺麗で、着心地も非常に軽いのですが、唯一にして最大の欠点が耐久性に劣ることです。特に、最近流行の薄い生地には要注意。サラリーマンのビジネス用途では、SUPER 120’Sを目安に、これを越えるような生地には注意しましょう。

特に、デスクワークが多いと、ビジネスデスクに多用されるポリエステル繊維にズボン(トラウザーズ)が負けてしまい、お尻の部分などの傷みが激しくなります。

対策

  • ビジネス用途に高番手生地は使わない
  • 特に、高番手かつ打ち込みの弱い生地(=少量の細い糸で織られた生地)は弱いので注意

 

5.流行の自己主張ディテールに手を出して後悔する

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「自己主張ディテール」とは、自身のスーツがオーダーであることや、こだわりをアピールするために、袖口の切羽の糸色を一つだけ変えたり、目立つ色でステッチを入れたりすることです。

一昔前はオーダースーツでしか実現せず、一部のスーツ愛好家だけが自己満足で(私を含め)入れていたものですが、最近は吊しのスーツでも散見するようになるなど、完全に一般化しています。今では、「耐久性があって長めに着る物にはやらなければ良かった」と、少々後悔しています。

対策

  • 長く着ることになりそうな服への自己主張ディテールを入れる際には、後先を考える

 

6.シャツ選択を誤り、採寸に失敗する

採寸時に着ていくシャツは非常に重要です。特に、袖丈は要注意。袖丈が短めのシャツを着たままジャケットの採寸をすると、それに合わせたジャケットが出来上がることが多いです。(もちろん、テーラーも実際の手の長さを測りますが、顧客のシャツ袖丈の好みに合わせようとします)

対策

  • 採寸時は適正寸法のシャツ(普段スーツに着ているシャツ)を着てゆく
  • 自信が無い場合には、テーラーに「シャツが適正サイズか不安」である旨を伝える

 

7.派手な裏地でウェストコートも派手に

三つ揃い(スリーピース)のスーツを作る際に注意したいのが裏地です。オーダースーツの場合、ジャケットの裏地は派手な物を選びがちですが、ウェストコート(ベスト)の背中の表側は、通常上着の裏地をそのままに使ってしまうからです。

従って、気にせずそのままオーダーすると、ウェストコート一枚になったとき、オフィスで背中がかなり目立つことになります。

対策

  • 派手な裏地を使う場合は、ウェストコートの背中も同じ色で良いか考える
  • 場合によっては、ウェストコートの背中の生地を、上着の裏地と別の物を指定する

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写真の下側がウェストコート、上側がジャケットの裏側です。ジャケットの裏地はグレーの市松模様、ウェストコートの背中は、紺色の無地にしています。

 

8.雨が降って、上着の接着芯の部分が剥離する

ジャケットは見た目上、スーツ生地と裏地で出来ていますが、それだけでは構築的なフォルムを保つことが出来ないので、毛芯(けじん)と呼ばれる芯材が入っています。

そして、毛芯とスーツ生地をつなぎ止める方法が接着剤を使っている場合(接着芯)、雨によって接着芯とスーツ生地が剥離し、スーツ生地に水ぶくれのような醜い模様が浮かび上がってしまうことがあります。

対策

  • オーダーする前に、接着芯のみになっていないか確認する(特に安価なイージーオーダーでは要注意)

最近では、接着芯で仮どめした上で、上から機械で縫い上げるタイプの物が多くなってきているようですが、一部の格安イージーオーダーでは、工程を大幅に省略できる「接着芯のみ」というパターンがまだ有るようです。

 

9.納品時によく確認せず、ミスを見逃す

自分の選んだ生地、自分の選んだディテールで服が出来上がってくるととても嬉しいものです。受け取り時に試着しても、うかれてしまい、縫製時のサイズミス、店舗から工場へのディテール指定ミスなどを見逃してしまうことが多いです……。

もちろん、受け取り後であっても修正に応じてくれる店もありますが、受け取る前に指摘/修正を入れた方がスマートなのは言うまでもありません。

対策

  • 自分が指定したディテールになっているか確認する
  • サイズが丁度良いか確認する(違和感がある場合は、店員に告げる)

ディテールが異なっている場合は分かりやすくて良いのですが、問題はサイズですよね。まずは、店側が工場へ指定したサイズ通りに仕上がっているか、店員に確認して貰います。これが縫製誤差の許容範囲内だとすると、今度は店員が採寸したサイズが間違っていなかったか確認して貰います。この辺は、店側の顧客サポート能力が問われるところですよね……。

 

10.特に目的も無く服を造りに行き、クローゼットが服で一杯になる

「セール/フェアのお知らせ」がくると、無性にオーダーしに行きたくなりますよね。私を含め、オーダースーツが好きな人にとっては、「良いスーツを着る」という目的が、手段であった「スーツを作る」にいつのまにか置き換わっていることがあります。(ただ、趣味の話なので、そこまで目くじらを立てることでは無いと思います)

しかし、あとのことを考えてみると、「スーツを作る幸せ」よりも、「気に入ったスーツを着る幸せ」の方が、(個人的には)幸福度が大きいと考えています。従って、出来れば目先のスーツを作る欲望を何とか抑え、長期的に着る楽しみを享受したいところですよね。

対策

  • 作りたいスーツの具体的イメージも無く、店に行こうとしていないか考える
  • 今自分にどんなスーツが必要かもう一度考える
  • そして、そのスーツは、今のワードローブに似たものが存在しないか考える

店に行ってみて、掘り出し物のビンテージ生地を見つけ、これは今すぐ作らなくては! という衝動に何度も駆られたことがありますし、実際に作ってしまうことも多く、オーダー後の満足感はとても高いです。ただ、ビジネススーツに限って言うと、そうやって作ったスーツは登場回数が少ないんですよね……(私に見る目が無いだけかも)。逆に、カジュアルなジャケットなどは、かなり使い回すケースが多いのが不思議なところです。

 


改めて書き出してみると、結構恥ずかしいものがあります。

今回挙げた失敗談ですが、既に克服した物もあれば、今でも繰り返してしまうものもあります。まぁ、こういったことも、スーツスタイルの楽しみのうちだと考えています。皆さんはオーダースーツでどんな失敗をしましたか?

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