ビスポーク(オーダースーツ)

オーダースーツが最良の選択肢では無い、5つの理由

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近年のオーダースーツブームによって、「オーダースーツなら体にピッタリ合うので格好良い」とか「自分が理想とする一着を手に入れられる」といった、意見が散見されるようになりました。果たして本当なのでしょうか?

普段このサイトをご覧の方からすると意外かも知れませんが、私はオーダーメイドが、必ずしもスーツやジャケパンにおける最良の選択肢ではないと考えています。

先日会社の同僚が、既製服しか着たことの無い後輩を半ばマウンティングする形で、オーダースーツ万能論を語っていました。直接指摘する勇気は無かったので、当サイトのネタとして消化することにします^^;

1.スタイリッシュとは限らない

まず念頭に置くべきは、スーツをオーダーしたとして、必ず格好の良い服になる、というわけではないと言う事です。

オーダースーツの大きなメリットとして「自身の体型にフィットした一着を手に入れられる」と言われることがあります。これには異論がある(後述します)のですが、仮にそうだとしても、言い換えると「完成されたデザインを、自身のフォルムに寄せる」ことでもあります。

誰しも、自分の体に何らかのコンプレックスを持っていると思いますが、体にフィットさせすぎたオーダースーツは、そのコンプレックスが強調される結果になります。

もちろん、腕の良い店であれば、体の欠点を隠しつつデザインも良いオーダースーツを仕立てることも可能です(本当にこれが出来る店はかなり少ないですが)。

しかし、そこには次の大きな欠点か立ちはだかります。

 

2.価格が高い

それは、高価である、ということです。

もちろん、近年の企業努力によって、パターンオーダーやイージーオーダーを中心に、オーダースーツの価格はかなり下がってきました。

一時は1着2万円を切るタイミングもありましたが、記事初出時点ではインフレで2万円台が最安水準だと思います。それでも、かなり安いですよね。

しかし、前項の、「体の欠点を隠しつつ、デザインも良いオーダースーツ」を追求していくと、この価格ではかなり困難※で、結果的にデザインや縫製面から既製服に比べて高くなりがちです。

(※:安価な店であっても、自店のパターンをカスタマイズしたときのデザイン上の変化や、それを踏まえ顧客の体型的欠点を補うための縫製工場への指示方法を熟知した、超絶優秀フィッターが在籍していれば別です。私も1~2人お目にかかったことがありますが、極めて稀な存在です。しかも、だいたいそういう方は、給料の安い激安店を辞めて、価格も給料も高い店に転職してしまいます……orz)

 

3.最初の1~2着は失敗を覚悟すべき

また、如何(いか)に優秀なフィッターがいたとしても、最初の1~2着は失敗を覚悟すべきなのが、オーダースーツの課題です。

これだけでも1つの記事が書ける大きなテーマですが、理由を簡単に大別すると以下の2つです。

  1. イージーオーダー/パターンオーダーの場合、仮縫い(完全に出来上がる前、実物でフィッティングする作業)がないので、一発勝負になりやすい
  2. もし仮縫いがあったとしても、初注文の店側は着用者本人の好みや普段の着用シーンを完全に把握するのは不可能なので、不具合が残る(例えば、着心地を優先するのか見た目を優先するのかの塩梅は、1着作ってフィードバックを得ないと把握は難しい。)

オーダースーツのことを、英語では「Bespoke Suit」と書きます。語源はBe-spoken、つまりはテーラーと顧客との会話で成り立つのがオーダースーツです。

私は、ここでいう「会話」は、最初の注文時や仮縫い時だけでなく、前回作った服の感想はもちろん、3年前に作った服が経年でどう変わったか、別の店で買った服をどう考えるかなど、長期でのテーラーと顧客のとのコミュニケーションであると考えます。

その長期のコミュニケーションは、手っ取り早く格好の良いスーツが欲しい、と考える方に取っては、最良の選択肢とはならないでしょう。

 

4.納期が遅い

「安い、早い、旨い」が優秀な製品/サービスの指標であると言います。

この中で確実に言えるのは、「オーダースーツは早くない」ということです。

もちろん、既製服も袖丈や裾直しがありますから、すぐに着て帰ることは難しいでしょう。しかし、その程度の直しであれば、早ければ当日中、遅くとも数日以内に受取が可能です。

一方、オーダースーツは、パターンオーダーやイージーオーダーであっても、平均的に3週間はかかりますフルオーダーの場合は、さらに仮縫いを挟んで2ヶ月は覚悟する必要があります(人気の繁忙店では、1年がかりは当たり前だったり……)。

つまり、「寒くなったから冬物でも買おうか」だと、受け取る頃には「そろそろ温かくなってきたなぁ」、なんてこともあるわけです。

オーダースーツを楽しむには、春夏物は冬に、秋冬物は夏に注文するといった、季節外れを注文する気力、計画性及び先払いの資金力を持たなければなりません。それを持たない多くの方にとっては、適時、適切な商品を受け取れないことになり、最良の選択肢とは言えないでしょう。

 

5.思い通りにはならない

オーダーであれば、カスタマイズし放題。生地も選び放題。従って、自身の思い描く最高の服が手に入ります――と、店側はアピールするはずです。

また、当サイトのような、オーダースーツに関する誘惑を発信するけしからんサイト/メディアも、そんな甘言を垂れまくっています。しかし、実際にはそんなことはあるはずも無く……。

この項目もこれだけで1つの記事が書ける大きなテーマですので、主な事例をご紹介します。

  • バンチブック(小さな生地見本)から素敵な生地を選んだが、実際に作ると印象がかなり違った。(柄や、光沢感の印象違いが多いです。)
  • 出来上がりを試着し、その時はOKを出したが、何回か着るうちに不満ポイントが続出した。(初めての店で、緊張したり舞い上がっているとやりがちです。)
  • 「他人との違い」「オーダーらしさ」を表現しようとして、目立つ糸色変更やステッチを入れたが、やり過ぎだったor全く目立たなかった。

挙げるとキリが無いのですが、これらはオーダースーツあるあるな現象といって良いでしょう。

つまり、カスタマイズできるからといって、出来上がりまで思い通りにはならないのです。少なくとも、完成品をその場で試着し購入できる既製服と異なり、オーダースーツは「完成するまでのお楽しみ」的な要素の強いサービスです。

 

おわりに

ここまで散々オーダースーツをdisって(貶して)きましたが、他の記事をご覧の方はご存知の通り、私自身はオーダースーツが好きで、そして当サイトを通じて布教普及活動に努めています。

ただ言いたいことは、タイトル通りで、オーダースーツは必ずしも最良の選択ではなく、決して万能では無いということ。そして重要なのは、オーダースーツが既製服の上位存在ではない、ということです。

たしかに、オーダースーツの方が高価で自由度が高いため、より上位で「アガリ」の選択肢に見えます。しかし、本日説明したような欠点がある上、実際にはブランド物を含めると既製服の方が高いケースもあり、金額面でも絶対的な優劣がつけられるものでも無かったりします。

みなさんは、それでもオーダースーツを選びますか?

よろしければ、コメント欄からお考えをお聞かせください。

(おまけ)フォロー

今回は自戒の念も込めて、あえてこの様な記事を書きました。

じゃあ、課題に対する解決法は無いの? という疑問もあろうかと思いますので、本当はオーダースーツの勝手普及活動をする立場として、フォローをしてみたいとおもいます。

  1. スタイリッシュとは限らない
    → 残念ながら、良い店やフィッターを見つけることしか解決策はないと思います。繋がりは大切にして下さい。
  2. 価格が高い
    → 慣れてくると、安い店でもそこそこのスーツを仕立てることが出来るようになります。また、チェーン店は店舗ブログがあることが多く、センスの良い仕上がりが多ければ、安くても突撃する価値はあります。なお、フルオーダーにせよ、イージーオーダーにせよ、生産工程には大量の職人さんがいます。安く買いたたくことは後継者の育成を不可能にし、オーダースーツ文化を潰すことになりかねないので注意です。
  3. 最初の1~2着は失敗を覚悟すべき
    → ぐぬぬ。。。これも回避は難しいですよね。最初の1着は、できるだけ安い生地かつオプション無しで作るのがオススメです。特に、イージーオーダーの1着目は仮縫いの感覚でどうぞ^^;
  4. 納期が遅い
    → ビッグヴィジョンが7日間で完成するイージーオーダーをやっていますね。国内の自社工場が無いと難しいかも知れませんが、他社も追従するのでしょうか……。
  5. 思い通りにはならない
    → むしろこれが面白い……という服飾的M気質がないと、オーダースーツは楽しめないのかも知れません。そう、オーダースーツは実用品としてだけでなく、趣味として楽しめなければその価値を100%享受できないのでしょう。

うーぬ、フォローになってないですね……。

 

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