ビスポーク(オーダースーツ)

スーツ生地の並行輸入品について考える

投稿日:平成28年(2016) 4月24日

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みなさんはスーツ生地に正規輸入品と並行輸入品があるのをご存知でしょうか。

テーラーの中には、「中間マージンの少ない並行輸入品を活用し、高級ブランド生地のスーツを安く仕立てる」と宣伝しているところがあります。ということは、言い換えると正規輸入品は割高なのでしょうか?

そんな疑問から、並行輸入品を推奨するテーラー、扱わないテーラー等々自分なりに話をきいて回った結果をまとめてみました。皆さんと一緒に、並行輸入品との付き合い方について、考えてみたいと思います。

 

1.並行輸入品とは

初めに、並行輸入品とは何かを整理したいと思います。

スーツの生地に限らず、国内正規代理店または国内直営店経由で輸入された物を「正規輸入品」といい、それ以外の経路で輸入された物を「並行輸入品」と言います。

スーツ生地では、正規代理店で付与されるブランドのタグがついていなかったり、並行輸入品用のタグ(ゼニアの青タグなど)が付けられていたり等で区別できることがあります。

並行輸入品には色々ある

正規輸入品以外は全て並行輸入品と呼ばれるわけですから、並行輸入品の流通経路は多岐に亘ります。

品質を担保しやすい海外の直営店や代理店がある一方、流通経路がわかりにくい倉庫のデッドストックやオークションなど、様々です。

輸入経路に対する評価

あるテーラーで話を訊いた時、並行輸入品は扱いたくないという事でした。

海外の直営店や代理店経由の並行輸入品では、品質が保証できるものの小ロットの仕入れでは価格的なメリットが少なく、安価なルートはどれも製品の仕入れ元や流通経路がしっかりしない(=品質に不安)ため、という理由でした。

一方で、信頼の置ける国内の並行輸入業者とうまく契約することで品質を担保したり、体力のある大規模なテーラーではメーカーに近い海外の流通業者と纏まった取引をすることで安く仕入れたり出来るそうです。

そして、聞き取りをすすめると、メーカー自らが並行輸入品を作り出している側面も見えてきました。

 

2.流通経路

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上の図は、正規輸入品と並行輸入品のなりたちについてまとめた物です。正確性は保証できませんが、複数のテーラーから聞いた内容をもとにしています。

注目すべきは、ひとくちに「並行輸入品」と言っても、様々な種類があることです。

経路B:通常品の流通経路違い

一般的にスーツの並行輸入生地として有名なのはこの経路でしょう。

正規ルートを外し、国内代理店で乗せられる中間マージン分を安くするという方法で、「品質は正規輸入品と変わらないのに価格が安い」という触れ込みです(生地タグがつかなかったり違ったりします)。

経路C:売残り品

本来は正規ルートを通す予定だった物を、型落ちや不良在庫などの売れ残りを理由としてメーカー側が敢えて並行輸入品として流通させる経路です

並行輸入品とすることで差別化し、正規品の値崩れを防ぐわけですね。

ビンテージ生地や掘り出し物の生地も多いため、自分に合う生地であれば(また、流通段階でのダメージに気をつければ)ほとんど問題は無いと思います。

経路D:原毛処分品

生地の出荷元が生地商(マーチャント)ではなく織元(ミル)の場合、生地を製造するために大量の原毛を仕入れます。

選別済の原毛を仕入れる時は良いのですが、契約により牧場で産出された全ての原毛を買い上げる場合などは、当然原毛の品質を選別する必要があります。

選別するものの、メーカー側としては当然、仕入れた原毛を全て消費したいと思うわけてす。

そこで、「オーダー用生地」の高い基準に満たない原毛で織った生地を、ブランド価値や価格水準を低下させづらい並行輸入品として、安価に流通させることがあるそうです。

経路E:既製服用生地の売残り品

既製服用の生地も、売れ残った場合、並行輸入品として出回ることがあります。既製服メーカーの求めに応じてオーダー用生地よりも安く生産されるため、品質は落とさざるを得ないことがあるといいます。

 

3.並行輸入生地のメリット

続いて、並行輸入生地のメリットとデメリットをまとめてみます。まずはメリットから。

価格が安い

これが一番大きいのでは無いでしょうか。テーラー側も「余計な中間マージンが乗っていません」と、並行輸入品であることを敢えて宣伝をしている場合もあります。

店によっては「正規品と品質は全く変わりません」と言い切っているところもあります。流通経路(海外のメーカーに近い流通から大量に買い付ける等)によってはその通りなのでしょう。

珍しい生地が見つかることも

正規の輸入代理店や直営店は、その国の需要に合う生地を選んで本国から仕入れます。

そのため、メーカーで企画された生地全てを仕入れないことがあり、「売れ線」しか出回りません。また、生産終了になった生地もメニューから外れるため、選ぶことが出来ません。

一方、並行輸入品を選択肢に含めることで、選べる生地の種類を広げることが出来ます。

ただし、「価格が安い」で例として上げた海外のメーカーに近い流通から直接買い付けるパターンの場合、大量買い付けが必要なため、よっぽど体力と販売力のある店で無いと逆に種類が少なくなることがあります。

 

4.並行輸入生地のデメリット

続いてデメリットをまとめてみます。

品質を確認出来ないものがある

流通経路によっては、正規輸入品よりも劣る品質になることがあります。

これは、流通の過程で傷んでしまったものもあれば、メーカー側の用途別生産や在庫最適化の一環であえて作られることもあります(第2項でいう経路DとEが該当)。

傷んだものならば判別がつきやすいのですが、後者は目の肥えたテーラーでも、ぱっと見ではその判断がつかないとのこと。仕立てて数年経って初めて、耐久性などで違いが分かる様になるそうです。

単に売れ残りなのか、品質が通常と異なるのか……。品質を保証出来ないことから、積極的に並行輸入品を薦めないテーラーも多いと思います。

タグや耳がつかない/異なる

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写真は、いずれもエルメネジルド・ゼニアの生地タグです。そして、上が「赤タグ」と呼ばれる正規輸入品に付けられる生地タグで、下が「青タグ」と呼ばれる並行輸入品や既製服に用いられる生地タグです。

ブランド側が差別化のために、正規流通品とそれ以外でタグを分ける場合や、そもそもタグをつけない場合もあり、ブランドタグが好きな方にとっては、デメリットになりえます。

ちなみに私は、品質やデザインが良ければタグはどうでも良い派なのであまり気にしません(ブランドにもあまりこだわりが無く……)。

 

5.並行輸入生地との上手な付き合い方

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ひとくちに並行輸入品といっても様々な種類があり、品質の見分け方も難しいことが分かりました。

上図で△になっている経路でも、○な生地が含まれることもあり、また△の経路であっても流通の過程で傷むこともあるため100%そう言い切れないのか難しいところです……。

そのため、オークションなどで出回っている出自が不明な生地には手を出さないようにし、並行輸入生地は信頼できるテーラーで、そのテーラーが信頼できると思った業者から仕入れたもののみを利用するようにしています。

また、付き合いの短い店で並行輸入生地を薦められた場合などは、その生地がどういった理由で並行生地になったのか、確認すると良いと思います。

 

メリット/デメリット、そしてリスクを考慮した上で、お値打ちな並行輸入生地を上手く活用していければ良いなと考えています。

皆さんは、並行輸入生地とどの様につきあっていますか?

 

<お願い>

本記事は複数のテーラーから数年に亘って(迷惑がられない程度に^^;)聞いた内容をもとにしていますが、内容の正確性に保証はありません。また、織元に依っては原毛処分品を一切作らない事も有りますし、そもそも既製服に生地を供給していない所もあります。また、テーラーによっては、独自の並行輸入品確保/品質担保方法があって、今回の分類方法に当てはまらないかも知れません。従って、テーラーと本内容を元に話をするときには、断定した話し方をするのではなく、参考程度にとどめることをお薦めします。また、誤りが有りましたら、ぜひコメントからご指摘ください。

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