6月に入り、学生服も冬服から夏服へ変わり、一気に夏らしくなってきました。こんな季節に活躍するのが「麻」ですよね。
皆さんも、麻素材を日常のファッションに取り入れていますか? クールビズを採り入れる企業が多くなった今、麻素材は夏に最適な素材だと思います。今回は、そんな麻素材の特徴と、活用方法について考えてみたいと思います。
1.「麻」ってなに?
本題に入る前に、そもそも麻とは何かを整理しておきます。ご存知の方は読み飛ばして下さい。
植物繊維の総称としての「麻」
以外と知られていませんが、麻は主に綿以外の植物繊維の総称で、厳密には単一の植物を指すわけではありません。その総数は60以上あると言われています。紳士服の世界では、大半が亜麻(リネン)で、日本製に苧麻(ラミー)が、ヨーロッパ製に大麻(ヘンプ)が多少含まれる印象です。
一方で、品質表示法には、ラミーとリネンのみを麻と表示することが義務づけられており、大麻や黄麻などは指定外繊維と表記されます。つまり、「麻100%」とタグ記載されて居る場合は、ラミーかリネンのどちらか、と言う事になります。(任意表記も認められているので、なかには「指定外繊維(ヘンプ) 100%」という例もあります)
ラミーとリネンの違い
日本では古代より大衆向けにヘンプが、上流階級向けにラミーが使われた歴史があります。ラミーの方が細く繊細な繊維で布を織れるからです。
一方リネンは日本に自生しておらず、江戸末期~明治期に西洋から持ち込まれた植物です。肌触りはリネンの方が柔らかいのですが、ラミーの方が繊維が長いため、薄くて丈夫な布を織ることが出来ます。つまり一般的には……
丈夫さ: ラミー > リネン
肌触り: リネン > ラミー
薄さ: ラミー > リネン
という不等式になります。
紳士服、とりわけシャツの殆どはリネンです。リネンは肌触りが良く、綿素材に慣れた方にも、そこまで違和感なく着用出来ると思います。しかし、個人的にはラミーもお薦めです。薄くコシがあり丈夫で、通気性にとても優れるからです。シャツ素材としてのラミーは数が少ないため、見つけたら即買いしています。(特に、ラミーリネンの混紡がおすすめ)
麻素材の特徴
- 吸湿性に優れる → 汗を吸収する
- コシが強い → 汗でべたつかない
- ザラザラする → 綿ほど肌触りは軟らかくない
- 強度が高い
- 染色しにくい → 紫外線や洗濯でどんどん色落ちする
- ウールに比べ値段が安い
2.麻のシャツ
麻素材を活用する上で、まず候補に挙がるのが麻のシャツでしょう。麻は吸水性に優れ、繊維にコシが強いため肌に張り付くことがなく、汗をかいてもべたつかずに快適に過ごせます。
上の写真はカミチャニスタの麻100%シャツです。カジュアル用として、アイロンをかけずに羽織っています。カジュアル用途にはこのヨレ感は良いのですが、ビジネス向きでは無いかも知れません。ビジネス用途には、麻100%ではなく、しわになりにくい綿との混紡素材がお薦めです。
こちらは別のシャツで、アイロンをかけたものですが、それでも少し着ると目立つ皺が寄ってしまいます。麻のシワは、あくまで「味」としてファッションの中に採り入れていく必要があります。
3.麻のジャケット
シャツだけだとちょっと……という場合は、ジャケットも麻にしてしまいましょう。写真は生成り(きなり;染色していない素材のこと)の麻ジャケットです。
麻素材を使うときは、色使いはもちろんですが、素材感を揃えることが大事だと考えています。麻のシャツにツルツルのジャケットはどうにもちぐはぐです。麻素材のシャツには、ザックリとした素材のジャケットを持ってくるとしっくりすると思います。
一方、ザックリしすぎるとビジネス感が薄れてしまいます。そういった場合には、シャツ同様、写真のような麻の混紡(この場合は麻/ウール混紡)生地のジャケットがお薦めです。最近では、麻/ウール/シルクの三者混紡が人気のようです。
4.麻のネクタイ
ジャケットだけじゃ無くてネクタイも……という場合には、植物素材のタイを合わせてみましょう。
水色のシャツなので、茶色と青色をもってきてみました。
一番左がラルフローレンの麻100%
真ん中かがカミチャニスタの麻/ウール/シルクの三者混。
右が綿/ウール/シルクの三者混。
こんな感じです。シャツ、ジャケット、タイと全ての素材がザックリしているので、涼しげです。(といっても、初夏が限界でしょうが)
5.麻のポケットチーフ
ノータイで着る際や、すこしドレスアップしたい時にお薦めなのがポケットチーフです。
麻のポケットチーフを差してみました。タイと合わせるのでは無く、シャツと同系色にすることで清涼感を出しています。
より清涼感を出したいときは、無造作に差してみます。
ジャケット、タイ、チーフと茶色のグラデーションにしても良いかも知れません。このチーフも麻100%です。
テーラーによっては、シャツを作る際、同じ布でポケットチーフも作ってくれることがあります。以前は納品時に貰う余り切れを使い自分で作っていたのですが、最近は工賃を支払って作って貰っています。ノータイの時に、シャツと同素材のポケットチーフはよく映えます。
ネット通販のシャツ屋も、こういったサービスがあると良いのですが……
寒い時期には出番が無いため、そうそう割合を増やせない麻素材ですが、暑い時期には本当に助かります。(着ている本人も涼しいのはもちろんですが、なにより見た目が涼しげですよね!)
みなさんも、麻素材をつかって、夏のファッションを楽しんでみて下さい。