ビスポーク(オーダースーツ)

オーダースーツは究極のサステナブルか?

投稿日:令和4年(2022) 4月24日 

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6月の株主総会シーズンに向け、どの企業でも「サステナブルな(持続可能な)活動を」「SDG's」と叫ばれる昨今、皆様の業界や職場はいかがしょう……?

先日、テーラーと会話した際、「オーダースーツって究極のサステナブル衣料ですね」という話になって、なるほどなと思ったので記事にしてみます。

理由① 在庫を持たないため、廃棄が少ない

一番の理由はこちら。在庫を持たないため、廃棄が少ないからです。

既製服は大量の在庫が必要

衣料全般に、価格帯を問わず、大量廃棄――それも作ったのに着用されない、新品の廃棄が大きな社会問題になっています。

一方でオーダースーツの場合、受注生産で在庫の概念が無いため、「完成品の廃棄」はありません。従って、既製服に比べて圧倒的に「着ずに捨てられる」量が小さいのです。(もちろん、生地の不良在庫は出ますが、完成品ではないため、別の用途に転用可能です。)

しかし、そもそも吊し(既製)のスーツは、なぜ大量の在庫が必要なのでしょうか? それは、サイズのシビアさと、色柄にあります。

サイズ展開

スーツ量販店に行くと、スーツのサイズ展開はS、M、Lなどではなく、A・AB・B・Yなどの「体の太さ」に、身長を表す数字を掛け合わせたサイズ表記が使われているのが分かります。例えば、「A5」「AB5」という感じですね。(日本製品の表記)

衣料品は、背の高い人/低い人、体格の太い人/細い人など、着用者の体に合うよう、様々なサイズを在庫として抱える必要があります

なかでもスーツのような伸縮性がなく、サイズ感が見た目を左右しやすいジャンルの場合、かなり細かいサイズ展開が必要になるのです。

これらが全て売り切れるでしょうか?

色柄展開

当然、サイズだけで無く、色や柄のバリエーションも必要になります。

オーダースーツのバンチブック(生地見本帳)と比べると、店頭に並ぶ数は少ないですが、それでも消費者を満足させるために様々な色柄が用意されます。そして、先述のサイズ展開が原因でで売れ残ったものに、色柄が「かけ算」されるわけです。

売れ残り前提、かつ売れ残りは廃棄

もちろん、全てのサイズや色柄が完売すれば問題ありません。しかし、実際には売れ残り前提で生産されています

というのも、既製服のメリットはすぐに着用出来ることで、来店したのに在庫が無く販売機会を遺失するのは(そしてその客はもう二度と来ないかも知れません)、在庫を余らせるよりデメリットが大きいのです。

つまり、既製服の場合、経済合理性の観点から、「廃棄前提の方が儲かる」「ある程度の廃棄は必要経費」という選択を採らざるを得ないのです。

 

理由②永く着られる

もう一つは、オーダースーツは永く着られるので、買った後も捨てるシーンが少なくなるからです。

修理/サイズ調整が容易

なぜ捨てるシーンが少なくなるのかというと、オーダーで作った服は、修理やサイズ調整が容易だからです。

既製服(特に安価なもの)は、コストを下げるために、サイズピッタリに裁断するため、縫い代の余剰が無い事が多いのです。そして、縫い代がないと、後日のサイズ調整が難しくなります。この場合、「少し太ったからサイズを大きくしよう」としても、出来ずに買い直し(廃棄)になります。

一方、オーダースーツの場合、とりわけ高品質のイージーオーダーやフルオーダーの場合は、そのような直しを想定して裁断されていることが多いため、体型が少し変化したからと言って、すぐに買い直しになるわけではありません

作ったテーラーで頼むと安価にサイズ調整が可能なことも

私も、何度もサイズ調整をしてきましたが、やはり作ったところに出すのが一番。ここもオーダースーツの良いところです。

これは、以下の様な理由があります。

  • うまく修理をしてくれる:自分の製品ですから、中身は熟知していますし、修理も上手です。
  • サイズを伝え易い:どこまで出したり、詰めたりといったサイズを、直近で作ったスーツから把握して貰いやすいからです。ここは特に重要です。
  • 安価:自社製品は安価に修理してくれる店が多いです。

2パンツスーツ

また、オーダーであれば、摩耗し易いズボンのみを安価に追加で仕立てることが出来るため、外回りが多い方などは予め作っておくと、スーツ全体を長持ちさせることが可能です。

もちろん、既製服にもツーパンツスーツは出てきましたから、絶対的な優位性ではありませんが……。

 

おわりに

このように、オーダースーツは廃棄ロスも少なく、かつサイズ直しや修理が容易で永く着られることが分かります。

安く簡単にスーツが手に入るツープライススーツ店が主流になって久しく、あくまでオーダースーツは趣味の世界になりがちです。また、既製服には多くのメリットがありますし、過去にはその様な記事も書いています。

しかし、ことサステナビリティを考えると、オーダースーツの魅力は再考されるべきだと思います。

SDG'sバッジをどうせつけるなら、(少なくともお金と時間に余裕のある方は)オーダースーツにつけると、より説得力があるのではないでしょうか……。

 

* * *

私の場合、10年前に作ったオーダースーツを未だに現役で着用しています。

さすがにデザインが今と若干異なりますが、それでも作るときにあまり流行に偏らせなかった(こう言うことができるのもオーダーの魅力です)こともあり、不自然さはありません。

あと、単純に愛着が湧くので、大切に着て、結果として寿命が延びますね。自分で選んだ生地、デザインですから。

 

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