このサイトは、読者にファッション上級者の方も多く、私もコメントから様々な学びがあります。
先週、「オーダースーツ、おすすめのオプション5選」という記事を投稿したところ、そんな読者の皆さんから、自身のオススメオプションについて、有益なコメントを沢山いただきました。
そこで今回は続編として、読者の皆さんが選んでいるオプションを5つピックアップし、私なりの解説を加えつつご紹介しようと思います。
1.派手な裏地
それから裏地ですが、「オリジナル裏地」として、いろいろな裏地を提案しているテーラーもあります。既製服でいえば、ETROのスーツの裏地のような派手なものも付けることが可能になります。これも、気分としてのオシャレかもしれません。
――Andantino さん
派手な裏地はオーダーの証し?
△ この例はまだおとなしい方。リバティ柄や、アメコミ柄などを使う人もいる。
多数の消費者に受け入れられるよう、大量生産する既製品のスーツやジャケットは、基本的にはグレイや水色など、無難な裏地が選ばれることが多いです。
しかし、オーダーであれば、様々な色や柄を選びたい放題になります。
ビジネスに際して、表地で遊ぶのは難しい業種/職種が多いかと思いますが、裏地は常時見えるものではありませんから、「遊び」として、サラリーマンにもやりやすいですよね。
表は(規制やしがらみで)地味でも、裏を派手にするという、江戸っ子的な美学に繋がるものがあります。
スリーピースに注意
ただし、スリーピースにするときは、派手な裏地に注意して下さい。
なぜなら、ベスト(ウェストコート)の背の表地は、原則、ジャケットの裏地が適用されるためです。
つまり、チラ見せ目的で面白い裏地を選んだら、「ベストの背中が派手派手で、職場でジャケットを脱げなくなった」という事態も……^^;
ただ、この問題は、ウェストコートだけ別の裏地を使うことで回避出来ます。(私も、ウェストコートの背中については、ジャケット裏地から同一シリーズで1~2トーン落とした色を選ぶことがあります。ただし、店によっては別途料金を取られることもあります。)
実例
△ ジャケット裏地からワントーン彩度を落とした例。全く別の色を使うよりも、類似の色を使った方がまとまりが出やすい。
△ 同色で柄の幅を変えた例。ストライプは太いと目立つが、細いとシックになる。
個人店の方が豊富
私見ですが、チェーンのオーダースーツ店よりも、個人店の方に面白い裏地が多いように思います。
最初のうちは、チェーン店の見本帳でも「こんなにあるの!?」と思うかも知れませんが、そのうち「いつも同じのばかりだなぁ……」と思うようになります^^;
2.チケットポケット
個人的にはテケポケットが便利で好きなオプションです。
――T.K.さん
前回の記事では、たばこポケットをご紹介しましたが、チケットポケットも環境によっては便利なポケットです。
チケットポケットとは
チケットポケット、別名テケポケットとは、ジャケットの左襟の見返し部分に設けられたポケットのことで、チケットのような小さいものを入れる事からこの名前があります。(なお、大きなポケットの中に設けられた小型の袋についても、チケットポケットと称することがあります。)
回数券や、チケットの半券入れとして
イマドキ、電車には電子マネーで乗る方が多数ですが、なかには、職場の交通費精算環境や、高い割引率を求めて回数券を使う方も多いでしょう。
そんなときに、チケットポケットはとても活躍します。
私も以前の職場で回数券による移動が多かったのですが、一々財布を出し入れする必要が無く、奥行きが浅く奥まで手を突っ込んで回数券を探さなくても良いので、とても便利でした。
新幹線移動が多い方は座席指定の半券入れとしても活躍しそうです。
3.ボタン(水牛、ナット)
また、安価な生地を高価そうに見せるには本水牛・ナットボタンが効果的だと思っています。ボタンの質感がジャケットやスーツ、コートに与える影響は大きいですね。
――南高梅さん
私としては本切羽は物によるといった感じで必ずしも必要ではないのですが、有料であろうとキュプラ裏地と水牛ボタンは付けていて良かったと感じます。
――shiroさん
ボタンがスーツ/ジャケットの見た目を変える
安い生地や仕立てであっても、高級なボタンを使うことで高そうなスーツに見える事があります。
スーツやジャケットのボタンには、主に
- カゼイン
- 水牛
- ナット
- 貝(シェル)
- 金属
などの種類があります。そのなかで、安価なスーツにはプラスチックに見た目が似ている「カゼインボタン」か使われる事が多いのですが、これを水牛ボタンに変えることで一気に高級感が増します。
私の知人も、安い既製のスーツを買ってきて、それを自分で水牛ボタンに変えているそうです。
ジャケットを一気にオシャレにする
また、ビジネススーツと合わせるのは工夫が要りますが、ナットボタンや貝ボタンには、ジャケットをオシャレにする魅力があります。
ナットボタンとは
ナットボタンとは、椰子の一種から作られるボタンです。水牛のような豪華さではなく、素朴な印象が特徴です。
しかし、様々な形、色、加工が施され、種類が豊富なので、ジャケット用ボタンとして重宝します。
貝ボタンとは
貝ボタン(シェルボタン)とは、その名の通り貝(白蝶貝、高瀬貝、黒蝶貝等色々な種類があります。)から作られたボタンです。
貝ボタンは、シャツのイメージが強いかも知れませんが、夏場のスーツやジャケットを涼しげにする効果があります。
また、ビジネススーツに白蝶貝は難しいかも知れませんが、意外と黒蝶貝はいけると(個人的には)思っています。
貝ボタンについて詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧下さい。
オススメは個人店
それでは、どういった店でオシャレなボタンと出会えるのでしょうか。
実は、チェーンのオーダースーツ店は、種類を増やした分だけ、工場に在庫を抱えざるを得なくなるため、ベーシックなものが多くなる傾向にあります。
一方、個人店は、店主の好みで沢山の種類が集めることが出来、面白いボタンに出会える確率が高いように思います。
ボタンにこだわりたい方は、ボタンにこだわりのある店主の個人店を使ってみるのもオススメです。(これは、裏地にも言えることですね。)
4.ピンループ
個人的におすすめのオプションは、「ピンループ」です。ベルトの穴って、たいてい2.5㎝刻みですよね。誰でも経験あるでしょう、「一つ上だときつくて一つ下だとゆるい」という状況が。
そんな時は、「ベルトの穴は一つ下にしてピンループを使おう!」です。ベルトって、オーダージャストサイズで作ったパンツには、ほぼ「飾り」で、「アジャスター」としての機能性は決して高くありません。何しろ5㎜刻みの採寸に対して2.5㎝と5倍間隔の「アジャスト」ですから。
その間を埋めるオプションとして、1000円の投資でストレス軽減。お試しあれ。
――basicmanさん
これは私も盲点でした……。
ピンループのメリット
ピンループとは、ベルトのバックルをズボンに固定するためのループです。
主なメリットはbasicmanさんがコメントしている通り、ベルトの0.5段大きい方の穴で止めてもアジャストしてくれる点ですが、加えて、ベルトやズボンを長持ちさせる効果もあります。
というのも、ベルトははキツくしめると穴がすぐにダメになり、そしてズボンも摩耗し易くなるからです。
かといって、緩くするとだらしなく見えてしまうのですが、そんなときにピンループを活用すると良いでしょう。
標準装備のズボンも
なお、オーダースーツの場合、少し高いグレードの縫製を選ぶと、デフォルトでついてくるパターンが多いと思います。
したがって、お持ちのズボンには既についているかも知れないので、ぜひ確認してみて下さい。
5.オプションの芯地
私の場合、ウエストコート、キュプラ裏地、水牛ボタン、ハーフキャンバス(稀にフルキャンバス)、台場は鉄板です。
――ナタク954さん
芯地も前回の記事から漏れていました。
ジャケットの命である胸を綺麗に保つ
芯地は、ジャケットの主に胸や襟部分に入っている副資材です。胸を構築的に見せ、襟や肩を美しく保ちます。
芯地には、フル毛芯(フルけじん;フルキャンバスのこと)、ハーフ毛芯、接着芯などの種類がありますが、あえてオプションを選ばないと接着芯になる店もあります。
接着芯も軽やかな雰囲気になるというメリットはありますが、長期的に見ると型崩れしやすく、特に雨に弱いので個人的には避けています。
フル毛芯が一番いいわけでも無い
一時期、「フル毛芯」=「高級スーツの証」的なマーケティングによって、フル芯至上主義的な流行がありましたが、必ずしもフル毛芯が一番ではありません。
ナタク954さんもおそらく使い分けられているのかと思いますが、夏場のジャケットにはハーフ毛芯の方がデザイン的には適合するなど、用途によって使い分けられるべきものだと思います。
おわりに
改めて思うのは、スーツのオプションは奥が深いということです。
もちろん、生地、縫製、デザイン、サイズの4つが優先であることは言うまでもありませんが、オプションは、オーダースーツをオーダースーツたらしめる重要な要素でもあると感じます。
「選べる、自分なりのこだわり」こそが、オーダースーツの面白いところなのでしょう。
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最後に、コメントを戴いた皆様に、深く御礼申し上げます。