先日、新しくおろした靴下を履いたら、どうも様子がおかしいのです。歩くと、どんどんずり下がってきて、まるで一時流行したルーズソックスの様な状況になるのです。
原因は、買いだめとそれに伴う長期保管でした。全ての靴下が長期保管NGというわけではありません。しかし、そういうのもあるよ、という自戒と注意喚起を込めて、記事にします。綿100%表記の靴下も要注意です。
また、なるべく寿命を延ばす方法もご紹介します。
1.ポリウレタン入りの靴下に注意
結論から言うと、今回の事象は、靴下に折り込まれたポリウレタン繊維の劣化が原因でした。
ポリウレタンとは、布地に伸縮性を持たせる化学繊維です。(スパンデックス、ライクラ、PUなどの表記もあります。)
靴下はもちろん、シャツやズボンなどの伸縮性を持たせるために数パーセント混織されるほか、傘や雨合羽などの雨衣の防水加工、スニーカーのクッションや接着剤としても用いられます。
この靴下(Tabioのロングホーズ)には、歩いても簡単にずりおちない様、履き口部分の伸縮性を強化するため、ポリウレタンが混織されていました。(僅か3%ですが。)
劣化しやすいポリウレタン
しかし、ポリウレタンは数年で加水分解してしまいます。空気中の水分と反応してポリウレタンが劣化してしまうのです。
劣化は、ポリウレタンが化合されたその瞬間から始まります。つまり、材料(糸や布地)として貯蔵されている間、縫製工程、流通や店で在庫として保管されている間も、そして自宅のタンスで眠っている間も進行します。
人によって意見は分かれますが、複数のテーラーや衣料品店の店員に訊くと、(新作を店頭で購入してから)3年経つと劣化が分かるようになるとのこと。
あくまで、劣化が分かるようになるというだけで、全く使えなくなるわけではありませんが、半年前のセール品なら2年半、1年前の在庫処分品なら2年ということです。
今回は5年半もの
今回の靴下は、5年半前に新品で購入したものです。レビューも兼ねて、いっきに5足購入しました。
あの頃はロングホーズを狂ったようにレビューしていたので、未使用の在庫も沢山あり、5足のうち3足は使用せず仕舞っておいたのです。
そして、ご覧の有様でした。
2.「見えやすい劣化」と「見えにくい劣化」
ポリウレタンは、わずか数パーセント混織するだけで布地に伸縮性を持たせることができます。
そのため、今回の様に劣化で使い物にならなくなるパターンと、見た目に影響が出ない(機能が若干落ちる)という見えにくい劣化を起こすパターンがあります。
見えやすい劣化
今回の場合は、履き口付近に集中していたポリウレタン糸が劣化で完全に断裂し、靴下の機能性を大きく損なう結果になっています。見えやすい劣化のパターンですね。
他にも、ポリウレタン入りのズボンは、膝の部分にアタリが出て「直立しているときも膝小僧が何故か出ている」と、格好が悪くなることがあります。
見えにくい劣化
一方、見えにくい劣化もあります。
たとえば、アンダーシャツにもポリウレタンは利用されていますが、こちらは見た目に影響が出にくく、「少し緩くなったかな?」程度のことも。
ジャケット素材にも使われることがありますが、ズボンに比べると影響は少ないです。
3.なるべく劣化させない方法
それでは、なるべく劣化させないためにはどうすれば良いのでしょうか。
ポイントは、熱、湿度、紫外線です。
高温の場所に置かない
車の中、屋根裏、乾燥機の近くなど、高温になる場所に置くと劣化が早まります。
今回の靴下は、洗濯乾燥機の隣の棚に置いてありました。はい、熱で劣化が早まったわけですね^^;
湿度の高い場所に置かない
水回りや風呂場の近く、床に近い湿気やすい場所に置くと劣化が早まります。
今回の靴下も、脱衣所という湿気の溜まりやすい場所に置いてありました。はい、湿気で劣化が……(以下略
紫外線に曝(さら)さない
今回の靴下は関係ないのですが、紫外線でもポリウレタンは劣化/変色します。
また、紫外線は太陽光だけで無く、蛍光灯からも出ているので注意します。(LED照明は、多くの場合紫外線は出ていません。)
4.綿100%も要注意
「私は化繊入りの靴下なんて履かないから大丈夫!」という方、実は注意が必要です。
法令(家庭用品品質表示法及び繊維製品品質表示法)上は、伸縮や補強のために用いられるなど、製品の合計重量5%以内であれば、表示を省略できる特例があるからです。
つまり、綿100%と書いてあったとしても、履き口にポリウレタンが使われている可能性があるのです。
参考
5.教訓と再発防止
今回の教訓は、無用な買いだめはしない、と言う事です。
また、ポリウレタンが悪というわけではありませんが、組成には注意し、常に先入れ先出しでどんどん使うことが重要です。
私も良くやりますが、どうせ使う物だから……とか、まとめて買うと安くなるから……とか、向こう数年分をまとめ買いしてしまうのはやめましょう。買う前に、本当に全部使い切れるか、いつ使い切れるのかを自問自答しましょう。
――といっても、買ってしまいそうですね。得した気分になるんですよね。難しい……。(着道楽であった私の祖父も、遺品から沢山のシーアイランドコットンの靴下(未使用)が出てきました。血は争えないのでしょうか^^;)
あとがき
今回、Tabioの靴下が劣化した旨書きましたが、必要な分のみ買い足すのであれば、かなり優秀な靴下です。
そもそも同時大量にローテーションしなければ、靴下なんぞ1~2年で履きつぶす消耗品ですので、品質上の問題はあまりないことを書き添えておきます。
あくまで、買いだめはダメよ、ということです。
とはいえ、同時期に購入している福助の靴下は全く劣化が見られません。ポリウレタンの表記は品質表示になく、本当に使っていないのかも知れませんね。(読者の方からコメントで教えて頂いた製品で、少し厚手ですが丈夫で見た目/履き心地供に良く、オススメです。)
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