ビスポーク(オーダースーツ)

イージーオーダースーツ実践2 生地選び/採寸/ディテール イージーオーダーでスーツを作るときのコツその6

投稿日:平成24年(2012) 10月7日  更新日:平成30年(2018) 12月18日 

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失敗の無い――できれば満足がいくイージーオーダーをするためにはどの様にすれば良いのか。

イージーオーダー初級者/未経験者の背中を押すエントリー第2弾です。

前回までに、事前準備と店に入ってからまず何をすれば良いのかを考えました。

今回は、実際の生地選び、採寸、ディテール選択をする上でのコツを、実際の流れに沿って考えていきたいと思います。

なお、イージーオーダースーツ実践はこれが第2弾ですが、イージーオーダースーツのエントリーは以下の通りですので、未読の方はぜひご一読ください。より理解が深まると思います。(一番下が前回のエントリーです)

 

生地選びで見た目と金額が決まる

店に入って店員を確保、予算/着用目的/着用季節などを伝えたらまずは生地選びが始まります。

スーツの見た目のうち、生地は大変大きなウェイトを占めます

ですから、生地選びはかなり重要なポイントです。

そして、スーツの値段は生地に左右されます。数千円の中国製ポリエステル生地から、百万円超の高級生地まで存在するからです。

勿論、チェーン店の上限はせいぜい十数万円程度ですが、それでもかなりの開きがあります。

店側としては、利幅のとれる高い生地を売りたいところでしょうが、前回書いたとおり、最初に予算を伝えることで、そういった高すぎる生地を除外します。

高い生地は、ぜひ2回目以降に選択することをお薦めします(理由は後述)。

 

初回はウール100%の安い生地で

「せっかくオーダーするのだから」と、高い生地を選びがちですがちょっと待ってください。

ほとんどの人にとって、初回のビスポーク(オーダー)は満足行くフィッティングにはなりません

というのも、EOは仮縫いや中縫いが基本的にはなく、一発勝負だからです。

仮縫いとは:裁断後の生地を仮止めした状態で試着と調整を行い、フィッティングを高めるスーツ製作工程の一つ。フルオーダーなどでは標準的に行われるが、EOではまれ。仕上がりのイメージを確認しやすいため、ディテール選びにも便利。2回目以降を中縫いと言うが、日本では(よほど難しい体躯で無ければ)仮縫い1回が標準的。

ということで、初回のオーダーはぜひ仮縫いだと思って、安めの生地を選択することをお薦めします。

店側も「キツくて着られない」というリスクを避けるため、かなり余裕を持った採寸をするはずです。

これは、チェーン店で顕著です。

また、安価帯のポリエステル製やポリエステル混紡の生地は粗悪な物があるため、ウール100%を選択すると良いと思います。特に夏場、ポリエステル製の生地は蒸れますから、機能面からもウールをお薦めします。

 

生地選びのコツ

良さそうな生地があったら、店員に伝えます。

3つくらい候補を選び、その中から選ぶと納得がいくと思います。店員も「これは如何でしょう」と選んでくれると思いますので、そういった中から選ぶのも手です。

スーツの生地は以下のような特徴があります。

    • 近くで見るのと遠くで見るのでは、質感色合いが違う
    • 狭い面積で見るのと広い面積で見るのでは、質感色合いが違う
    • 照明の色によっては、質感色合いが違う

ということで、生地を選んだら明るい場所の姿見の前に立って、肩から生地を掛けて貰います。

そうすることで、実際にスーツに仕立てたときの質感や色合いを確かめることが出来ます。特に、光沢に注意。テラテラの生地はビジネスに不向きですので注意してください。

なお、この選び方はバンチ(カットされた生地見本)では出来ませんので、なるべく現物から選ぶようにした方が良いと思います。

 

採寸時のコツ

生地を決めたら、次は採寸です。

上着を脱いで、シャツ(いわゆるワイシャツ)一枚になって採寸を受けるわけですが、いくつかコツがありますので、参考にしてください。

  • トラウザーズ(ズボン)から物を全て出す:尻回りが誤って採寸されるので、注意
  • 肩の力を抜き、普段と同様の姿勢で:EOは反身体/屈曲体などの、体の反り具合を補正するので、変に背筋を伸ばしたりするのは避けた方が良い
  • ベルト位置を確認:普段と同じかどうか。このときのベルト位置が出来上がるスーツのウエストラインになる

とりあえずは、上記に気をつけておけば良いと思います。あとは、フィッター(店員)の指示に従ってください。

 

ディテール選びのコツ

「初回は仮縫いとおなじ」という方針ですので、コスト増に繋がるディテールは避けた方が良いと思います。また、本切羽(本開き;袖のボタン穴をあけること)にしてしまうと、袖丈のサイズ変更がきかなくなってしまいます。お好きな方でも初回の本切羽はよした方が良いと思います。

その他、主要なディテールとしてAMFステッチ(衿などの生地の縁に施す、手縫様ミシンステッチ)、台場仕立て(内ポケット回りに裏地を使わず、表地で処理する方法)等がありますが、お好みでつければ宜しいと思います。ただ、くどいですが初回はなるべく安価に済ませた方が良いです。

ただし、ボタンだけは良い物を使うことをお薦めします。他のオプションは見た目に影響が無いか、オプション料金に比べてパフォーマンスが悪いですが、ボタンだけは見た目にとても影響するからです。

スーツならば本水牛、ジャケットならば本水牛かナット(ベジタブルアイボリー)ボタンが宜しいかと。

 

まとめ

長くなりましたので、まとめたいと思います。

  1. イージーオーダーの初回は仮縫いだと思い、出来るだけ安価にすませる
  2. スーツの値段は生地によって大きく左右される
  3. 初回はウール100%の比較的安い生地を使う
  4. 生地はバンチからでは無く現物から選び、肩から掛けて実際の見え方を比較する
  5. 採寸時はポケットから物を出し、出来るだけ自然体であることと、ベルト位置に気をつける
  6. 初回の本切羽はサイズ調節がきかないので避ける
  7. オプションは好みだが、初回の金額増は極力避ける
  8. ボタンは良い物を使う

好みや主義主張、出来上がるスーツは人それぞれですので、上記のポイントは全てを守る必要は無く、あくまで参考になれば幸いです。

他にもトラウザーズ(ズボン)の裾はシングル/ダブルのどちらが良いか、ボタンは2つボタンか3つボタンがよいか、ネーム(名前)は入れた方が良いか、裏地は何を選べば良いか、ポケットの形は……など、様々な選択肢がありますが、その店での初回は、出来るだけ店に任せた方が良いと思います。

店のオプションは店が知り尽くしていますし、予算を最初に伝えてあるため、極端に盛られる心配もありません。なにより、店員はプロ(生業としているという意味)ですから、まずは信頼して任せてみましょう。そして、2回目から自分の好みをどんどん伝えて、自分好みのスーツにしてゆくのです。

9.大枠だけは自分で決めるが、初回の細かい部分は店に任せてみる

 

それでは。

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