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イージーオーダーでスーツを作る時のコツ その2:店選びの5ヶ条

投稿日:平成24年(2012) 7月22日  更新日:平成27年(2015) 10月12日 

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前回で作りたい服は決まりました。
しかし、どの店に行って良いのかがまだ漠然としていることでしょう。
そこで、今回はイージーオーダーの、店を選ぶ際のTipsをご紹介します。

イージーオーダー(EO)といっても、様々な店があります。
個人経営の小さな店から、上場企業のチェーン店まで。
それぞれの店を吟味し選ぶ上で、皆さんの手助けになればと思います。

 

 

 

イージーオーダー(EO)の店選びとして、いくつかポイントがあります。

1.デザイン
2.縫製
3.店員の
能力
4.生地の豊富さ
5.価格

上記5つから見ていくことで、客観的に店を判断することが出来ます。
続いて、中身を見ていきましょう。

 

 

■ 1.デザイン ~スーツのパターンを見る~

イージーオーダー(EO)には店ごとに作成済みのスーツの型(パターン)があります。このパターンを各個人の体型に合わせて、主にコンピュータによって寸法を調節する仕組みになっています。
従って、店舗に用意されているパターンが格好が悪いと、格好が悪いスーツしか出来ません。

大抵は「イギリス型」「アメリカ型」「イタリア型」の3種類のパターンが用意されています。
それぞれ、角張った肩に厚い胸、ボックス型のゆったりとしたシルエット、女性的な柔らかいくびれたシルエットが特徴です。

【見分け方】 店頭のディスプレイを見てください。複数のパターンがある場合、その店の主力パターンで作られたスーツが展示されているはずです。自分が格好良いと思うディスプレイがある店を候補に入れます。

 

■2.縫製 ~悪い縫製が良い生地を破壊する~

EOは基本的に工場縫製です。しかし、工場にも色々な種類があるばかりか、同じ工場でもラインによって出来映えが全く違います。
生地は銘柄がありますから、どの店で選んでも大抵は同じです。しかし、縫製はずいぶんと差が出ます。

一番悪いのはやはり海外の、それも他社に委託している場合の縫製。EOで生地代込2万円代という通常じゃ考えられない価格のモノはだいたいこれです。量販店の同価格帯の吊しの方が、良いスーツに見えてきます。だいたい、3万~4万円台から海外の自社製工場か、国内の安価な工場ラインが担当します。

【見分け方】
ボタンホール: ほつれていたり、荒かったりしたら×
腕: ハンガーで吊したときに、ふわっと腕が前側に回ってくるものは○、潰れて気をつけになるのは×
肩: 指で襟首のタックを持ったとき、肩の部分が綺麗なアーチを描けば○、潰れていれば×
ラペル(下襟)の返し(ボタンの上)部分: 綺麗にロールしていれば○、潰れていれば×
トラウザーズ(ズボン): クリース(折り目)が地面と垂直になっていれば○、曲がっていたら×

 

■3.店員の能力 ~店員のセンスとフィッティング能力~

<店員のセンス>EOは、吊し(既製)の服と違って、様々なディテールを自分で選ぶ必要があります。たとえばボタンの種類、ポケットの形、ラペル(下襟)の幅、裏地の種類等々……。
初心者は店員の助言が必要ですし、上級者も優秀な店員の提案が良い服を作る上で不可欠です。

【見分け方】 店員を見てください。店員が野暮ったい格好をしている場合、その店を避けるべきです。また、自分と同世代の店員が居るかどうかもポイントです。できれば、同い年か、若干上の店員に見て貰った方が、経験上良い服を作ることが出来ます。

<フィッティング能力>EOは、フルオーダーと違い、採寸者が直接服を作ることはありません。そのほとんどが工場に出されるので、店員(採寸者)が工場への指示方法を熟知しておく必要があります。店員が「この寸法で依頼すると、こういう仕上がりになる」というのを理解しているか、と言う事です。

しかしながら、クレームを避けるために大きめに作ってしまうフィッターが後を絶ちません。小さければ着られませんが、大きければ着られますし、そもそも日本社会は、ツンツルテンよりダボダボの方が許容されるからです。

【見分け方】 初回で見分けるのはかなり難しいですが、2着目以降は次第に分かってくると思います。極端にフィッティングが悪くなければ、店の傾向、店員の傾向(細めに作る、太めに作るなど)を把握した上で、店員に感想を伝えつつ、調整をするのが良いと思います。

【もう一つの見分け方】 人間の体は骨格(手の長さ、肩の高さ)は左右対称で無いことが多いです(対象に近くとも、利き手の方が筋肉が太いなどがあります)。それらの非対称性を吸収するのがEOの役目でもあるのです。その非対称性をしっかり把握できたのかを問うのもアリだと思います。(ただ、あまり上手で無くても体に合わせてきたり、その逆があったりと、やっぱり複数回つきあって様子を見ないと判断しにくいです……)

 

■4.生地の豊富さ

EOの魅力に「大量の生地から自分のお気に入りを見つけ、それを服に出来る」があります。
従って、生地を、それも良い生地を豊富に選択することが出来る店を選ぶべきです。

生地を選ぶ際に、いくつか方法が有ります。まずは生地見本。これはバンチといって、小さく切った生地がメモ帳のようにまとめられているものから、好きな生地を選びます。沢山の種類から選ぶことが出来ますが、サイズが小さいので実際服が出来上がると色味や質感が思っていたのと異なることがあります。

次に現物。おもに1着分にカットされたものと、数着分とれる反物で仕入れられているものの2種類があります。肩から生地を掛けた自分を、鏡で見ることで、実際の仕上がりを良くイメージできます。また、バンチに比べ割安に提供されることが多く、バンチに多い欠品もありません。

【見分け方】初めのうちは、できあがりが想像しやすい現物が豊富にある店を、選ぶと良いでしょう。「こういう生地を探している」と言ったときに、次々と候補を出してきてくれる店がお薦め。店によって仕入れの傾向が異なる事も有り、自分の趣味と合うかどうかもポイントです。

 

■ 5.価格

最後に価格です。
良いデザイン、高い店員の提案力、優れた縫製、良質の生地を、どれだけコストパフォーマンス良く提供してくれるかを基準に見ます。

価格は、生地代+縫製代+オプション料金から成り立ちます。EOの場合、多く縫製代は固定で、生地代とオプション料金によって金額が上下します。一番大きなファクターは生地代で、一般的に国産品は安く、輸入品の高番手生地は高くなります。オプション料金とは水牛ボタンや本切羽などの料金です。

【見分け方】良コスパゾーンは上下(ジャケットとトラウザーズ)3万円台中盤~9万円です。それ以下は縫製がおざなりですし、それ以上は高級な生地を使っているか、コスパが悪いかです。(また、高級な生地は、それに見合った良い縫製<良質な機械縫製かフルオーダー>で仕立てると良いでしょう)

オプションが細微に分かれ、料金が高額なのも避けるべきです。裏地キュプラ、本切羽、水牛ボタンにしただけで、オプション料金が1万円を突破する例もあるようです。この3つなら6~7千円が適正価格でしょう。

参考までに:生地別に見ると、縫製代込みで国産品なら3-4万円前後、名前が売れている葛利などは7万円前後。Cerruti(チェルッティ)のTropicalが5万円前後、プレステージが7万円前後でしょう。高級生地になると、Zegna(ゼニア)ならTravellerが8万円前後、Tropicalが9万円前後という感じですね。

 

■まとめ

イージーオーダー(EO)の店は、以下の5つから評価するとやりやすいです。

1.デザイン: 自分の好みのシルエットでしょうか?
2.縫製: 雑では無いですか? 上着は立体的ですか?
3.店員能力: センスが良く、的確なアドバイスをしてくれますか?
4.生地の豊富さ: 現物は豊富にありますか? 自分の趣味と合いますか?
5.価格: まともな価格ですか? オプション料金が異常に高くないですか?

 

「その1」でも書きましたが、EOは2着目から勝負です。勿論、天才的な店員が居れば、1着目から良いモノが出来上がってくるかも知れませんが、サイズ、パーツ、自分の好み等々、1回目から全てがばっちりあう事はまず無いです。

ですから、初回は安い生地を使ってください。初回は、店の傾向を判断するためにも、ある程度の指針を示した上で、店員のアドバイスやお薦めを出来るだけ取り入れる形で作ってみてください(前回何度も書きましたが、予算上限を最初に伝えておけば、店員のノルマの餌食になることはありません)。

まずは大まかに上にあげた5項目を中心(全て当てはまらなくても良いです)に店を絞り、1着作ってみましょう。話はそこからで、2着目まで作りつつ、色々な店を回ってみることをお薦めします。そこから、お気に入りの1店を見つけ、店/店員と一緒に、格好の良いスーツを作り上げていってください。

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