前回、新入社員向けのスーツスタイルについて取り上げたところ、メッセージや記事コメント等を通じて、かなりの反響を戴きました。
4月を目前に控えたこの時期、やはり気になる方が多いのだと思います。
そういったメッセージの中に複数、靴についてもっと取り上げるべきだというものがありました。確かに仰る通りです^^;
実は、前回の記事は、当初靴についてもっと言及していました。しかし、字数の関係でだいぶ削ったのですが、靴好きとしてもやはり納得がいかないので、記事として独立させようと思います。
ということで、連続して新入社員向けネタで恐縮ですが、靴について、取り上げたいと思います
1.なぜ靴が重要?
靴はスーツスタイルの要(かなめ)
スタイリング、とりわけスーツスタイルにおいて、靴は単に歩くための道具ではありません。
スーツが絵画だとすると、靴は額縁の様なものです。
そこそこの絵を、良い額縁に入れると名画に見えることもあれば、汚れた額縁ではみすぼらしく見えます。これと同様に、良い靴を履くだけで、安物のスーツをとても立派に見せることが出来ます。(さらに言うと、美しい靴を履く人に対して、良い評価を下すビジネスマンが居ることも事実です。)
しかし残念ながら、多くの衣料品店では、靴は未だにベルトや鞄と一緒くたにされています。また、そもそもスーツスタイルはスーツのみを中心に語られる風潮もあります。しかし、靴のスーツスタイルに対する影響を考えると、もう少し注目しても良いパーツだと思います。
2.ビジネスにふさわしい靴を履く
革靴を選ぶ上では、靴そのものの善し悪しはありますが、それに加えてビジネスに相応しいかどうか、も考えなくてはいけません。
続いて次項から、ビジネスに相応しい靴について考えていきます。
なお、以降に書く条件や選び方は、あくまで一つの意見であり、当然違う見方もあると思います。本やネットでの情報収集に加え、ぜひ靴屋に足を運んで、様々な話を聞いてみて下さい。
3.靴のスタイル
運動靴ライクなものはやめる
単純に黒い革を使った靴が、スーツスタイルに相応しい革靴ではありません。
上の写真は酷い例ですが、似た様な靴を履いているサラリーマンをよく見かけます。
また、街の靴屋でもビジネス用途と称して、この様な靴が販売されているところを見かけます。しかし、もしスーツスタイルに格好良さを求めるのであれば、運動靴の様な革靴はオススメしません。
まずはストレートチップを
まだ本格的な革靴を持っていない場合、一足目にはストレートチップ(キャップトゥ)をオススメします。ストレートチップとは、写真のような、つま先部分に一文字の切り返しがある靴を言います。
ビジネスから冠婚葬祭まで幅広く使える上に、スーツスタイルにとても合います。
また、デザインが安定しているので、多少安い靴であっても、高そうに見えてしまうというメリットもあります^^;
正直、初めのうちはストレートチップばかりでも良いように思いますが、物足りなければ(品質の善し悪しが出やすいですが)プレーントゥも良いとと思います。また、穴飾りがストレートチップの一文字部分についたパンチドキャップトゥや、さらに羽根回りにもついたクオーターブローグくらいまでなら、どんな職場でも大丈夫だと思います。
内羽根と外羽根
覚えておいて損は無いのが、内羽根と外羽根という言葉。
内羽根は、ヒモを止める部分(羽根)が靴の表と同じ階層なのに対し、外羽根は靴の上に張り付いているイメージです。傾向としては、内羽根の方がフォーマルに見える一方、外羽根はカジュアル寄りに見えやすいです。
履きやすさは外羽根の方が良い傾向にはありますが、ビジネス用途としては、迷ったら内羽根で良いと思います(私の場合、スーツ用はほぼ内羽根です)。
4.靴のサイズ
前回の記事にも書きましたが、革靴は運動靴とは根本的にサイズ感が異なります。また、靴の木型によって、合う合わないも異なります(履き慣らすことによって合うようになるきつさと、永遠に合わないきつさがあるなど、最初は判断しづらい部分が多いです)。
そこで、初めての本格靴は、必ずシューフィッティングの知識を持つ店員がいる店で購入することをお勧めします。百貨店でも知識のある店員はいますが、万全を期すのであれば、リーガルやスコッチグレインといった国内シューメーカーの直営店がオススメです。
このとき、ビジネスシューズ用の靴下を履いていくことを忘れずに。少し高く感じるかも知れませんが、個人的にはハリソンがオススメです。
5.靴の色
黒がベスト
迷ったら黒が良いでしょう。
業種、業界によっては焦げ茶でも大丈夫ですが、明るい茶靴は(ITや広告など)業界が限られます。
ただ、ジャケパンの場合は黒靴よりも茶靴の方が合わせやすいと思うので、先輩社員の状況を見た上で、取り入れて行くと良いと思います。
ベルトや鞄と合わせる
もう一つ重要なのは「革製品の色合わせ」です。基本は、ズボンのベルト、鞄、時計のベルト、手袋等の革製品の色を靴に合わせます。
特に、最低限ズボンのベルトだけは、靴の色とあわせることをオススメします。これをやるとやらないとでは、スーツスタイルの全体的な統一感が全く違ってきます。
6.靴の価格
ターゲットは3万円~5万円
何かと物入りな新入社員にこの価格はキツいかも知れませんが、3万円~5万円出せば、コストパフォーマンスに優れかつ本格的な革靴を手に入れられると思います。
この価格ならスーツが買えてしまうという意見もあるでしょう。しかし、個人的にはスーツの値段より靴の値段の方が高いくらいで丁度良いと思います。
流行による変化が少ない、修理が出来るなど、靴の方がスーツより長持ちするというのも理由の一つです。しかし一番は、スーツよりも、価格が如実に品質と見た目に影響するからです。
7.靴の底
革底とゴム底
革靴の靴底には、大きく分けて革底とゴム底の2種類があります。
なお、革底のことを木製だと勘違いしている人がたまに居ますが、実際は硬い革が使われています。
ゴム底も悪くない
靴が好きな方にとって、見た目や通気性に優れる革の靴底は、やはり人気があります(私も、殆ど革底です)。しかし、革靴の扱いが慣れておらず、所持本数も少ない場合は、ゴム底をオススメします。
ゴム底はメンテナンスがし易く、耐久性も優れ、スリップしにくいなど、革靴がとても扱いやすくなります。
もちろん、見た目重視や本格的なものに手を出したいという方も居るでしょう。それでも、雨の日に備えて最低1足はゴム底の革靴を持っておくと良いです。
8.靴の数
最低3足以上
靴は一日履いたら、休ませる必要があります。足から出た水分を抜き、形を綺麗に保って長く使えるようにするためです。
それでも、雨が降って靴がびしょびしょになることもあるでしょう。また、単なる順番では無く、コーディネートに合わせて靴を選ぶ方が楽しいので、お金に余裕が出来たら5足以上の体制まで拡充させると良いです。
9.靴の扱い方
以下を守るようにします。
- 履くときは必ず靴べらを使う
- 靴ひもは痛くない程度にきっちりしめる
- 歩行中は硬い物を蹴らないように注意する
- 水たまりは避けて歩く
- 靴底が水に濡れたら走らない(盛大に滑る)
- 靴を脱ぐときは必ずヒモを緩める
- 帰宅後は疲れていても軽くブラッシングをする(土埃が傷む原因)
- 家では靴にシューツリーを入れて通気性の良いところで保管する(買ったときの箱には入れない)
関連記事タグ:シューツリー
10.靴のメンテナンス
本格的な革靴は、よく手入れすることで輝きを増し、かつ長持ちします。
購入後、初めて履く前に1回、以降は1~2ヶ月に1回程度、乳化性クリームを使って靴を磨きます。
慣れないと面倒に感じるかも知れませんが、そのうちだんだんと磨くことが楽しくなってくると思います。
簡単な靴磨きの方法は下記をご覧下さい
- 関連記事「時短! 3分で靴を磨く方法」
革靴の楽しさは靴磨きにあり
もちろん、履いて外に出かける事も楽しみの一つです。しかし、革靴の最大の楽しさは、靴磨きにあると感じています。
経年で変化する革の表情、磨くたびに深まる艶、磨き方によって異なる仕上がり、これらは靴磨きを通して得られる、革靴の面白さです。
わたしも、最初は(今からは考えられませんが)靴磨きを億劫に感じていました。しかし、半年も経つと毎週末玄関で靴磨きをするようになっていました。靴磨きは中毒性か高いと思います^^;
おわりに
最初は革靴が嫌いでした
子供の頃、制服の革靴で何度も靴擦れを起こした経験があり、それ以来革靴は大嫌いで、なるべく履かないようにしてきました。
そして迎えた就職活動。スーツスタイルのキモは、大嫌いな革靴であることが判明し、当時はかなりショックでした。
そこで、もはや逃げられないと決心し、根本的な解決を目指して訪れたのが銀座四丁目のスコッチグレイン直営店でした。
革靴との付き合いには知識が必要
じつはこれが大正解でした。フィッティング、靴の種類、革の知識、手入れの方法まで、店員が懇切丁寧に教えてくれ、あれよあれよといううちに、革靴の世界にのめり込んでいきました。そして気づくと、入社前には革靴が趣味の一つになっていました……。
その後、革靴好きから徐々にスーツ、シャツ、時計、鞄とスーツスタイルの領域が拡張されていきます。まさに、私にとってのスーツスタイルの原点が靴でした。
革靴が嫌い。似た様な悩みを持った新入社員の方も多いと思います。しかし、きちんとしたフィッティングと、革靴に対する正しい知識を持ち合わせることで、靴が大好きになる可能性があります。是非一度、トライしてみて下さい。