考察

夏のシャツを考える

投稿日:平成28年(2016) 7月25日 

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皆さんは「夏用のシャツ」は用意しますか?

スーツに夏用や冬用、オールシーズン用などがあるように、シャツにも季節性を持ったものがあります。

今回は、もうすぐ夏本番ということで、夏のシャツについて考えてみたいと思います。

 

1.夏に適したシャツとは?

夏に着るシャツには、どの様な物が適しているのでしょうか。

素材や織りなど詳細を考える前に、目指すところを整理したいと思います。

(体感)べたつかず通気性の良いシャツ

日本の夏は、気温と湿度の両方が高いのが特徴です。

そのため、生地が薄いだけで無く、汗で生地が張り付かないことが重要です。

また、シャツの内側に籠もった熱や湿気を逃がすため、通気性の高い生地である必要もあります。

(外観)見た目が涼しげなシャツ

ファッションという観点からは、着た本人が涼しいのみではNGではないでしょうか。

つまり、見た目にも「涼しげ」な、夏らしいシャツであることも重要だと考えます。

 

2.素材

上記を踏まえた上で、どの様な素材が適しているか考えていきます。

① 麻

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べたつかす、通気性が良く、見た目が涼しげときいて真っ先に思い浮かぶのが麻ではないでしょうか。

麻は保水力が綿よりも多く、かつ繊維にコシがあるため、汗をよく吸う上に肌に張り付きにくいことが特徴。

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また、繊維が不揃いなため「ザックリ感」が強く、見た目にとても涼しげです。

ただし麻100%は、綿に比べてカジュアル感が出やすく、またシワになりやすいというデメリットもあります。

麻については、過去に下記の記事を書いて居ますので、宜しければご覧下さい。


② 綿麻

そんな麻のデメリットを消してくれるのが綿と麻の混紡生地です。

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上は綿と麻が半々の生地で作ったシャツです。夏用の礼服生地として作ったのですか、このくらいの混紡率なら、麻のシャリ感は残したまま、シワやザックリしすぎをある程度抑えられます。

混紡率、麻の種類、織りによって見た目は異なってきますので、着用するジャケットやタイの生地感に合わせ、選んでみて下さい。

③ 特殊化繊

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クールマックスなど、清涼感を謳った生地を使うという方法もあります。

ただ、実体験から言うと、こういう生地はくてっとしていることが多く、「見た目の涼しさ」が無いことが残念です。

各社とも、織り方を工夫して克服しようとしていますが、鹿の子のポロシャツっぽいものが殆どで、結構だらしなく見えてしまいます。

また、だいたいが綿と化繊の半々くらいなので、そもそも化繊が嫌い、という方にはお薦めできないです。

この分野は、毎年かなりの製品が出ていますので、探せば良い物があるかも知れません。お薦めの生地がありましたら、是非教えて下さい……。

④ 綿

最後に綿を。

別に、麻だけが夏シャツの生地というわけではありません。

綿はシャツの素材として一番ありきたりですが、織り方や使う糸によっては、夏らしいシャツにすることが出来ます。

次項以降で見ていきます。

 

3.織り

続いて、夏用のシャツとしてお薦めの織りや色の出し方を見ていきます。

なお、①と②は見た目に、③と④が見た目と体感の両方に効果があります。(もちろん、①、②とも、素材と織り方の組み合わせで体感の涼しさにも効果が出ます)

① ハケメ

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ハケメは漢字で書くと刷毛目。カタカナだとエンドオンエンドとか、エンドトゥエンドなどとも書きます。

たて・よこに晒し糸(白い糸)と染め糸を交互に配列して平織りしたもので、非常に細かい模様が出るのが特徴です。

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品の良い霜降り感が特徴で、遠目には無地に見えます。

 

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この写真は綿100%の生地ですが、薄手ということもあって清涼感があります。

② シャンブレー

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ハケメと似ているのがシャンブレーです。

たて糸に色糸、よこ糸に晒し糸を使った生地で、霜降りのような、ザックリ感が出るのが特徴です。

両者は似ていますが、ハケメは規則正しい文様なのに対し、シャンブレーはより自然さが出ます。

ジャケパンやドレスダウンしたいときに最適な選択だと思います。

③ オックスフォード

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よりスポーティな清涼感を出すには、オックスフォードが良いと思います。

実は、オックスフォード生地も、色糸と晒し糸を使ったシャンブレーに仕上げることが多いのですが、一般的にシャンブレーと呼ばれる生地は普通の平織りなのに対し、こちらは斜子(ななこ)織りで、太く柔らかい織りが特徴です。

そのため、通気性に優れ、また厚手なので汗をかいても肌に張り付きにくい特徴が有ります。

 

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また、ボタンダウンといえばオックスフォードと呼ばれるくらい、スポーティな衿型と良く合うのも特徴です。

なお、斜子織りをより太くすると「バスケット織り」になります。こちらも通気性に優れる生地ですが、厚手になるほか、ひっかきに弱いなど耐久性に難が出てくるので、私は多用していません。ただ、細番手のバスケット織りでシャツ作ると、かなり艶が出るので、夏場のカジュアルなパーティ用などには良いかも知れませんね。

④ ボイル

※ すみません。適当なシャツが見当たらず、画像は後日アップします。。。

スーツでも、夏場は強く撚(よ)った糸(強撚糸)の三杢(みつもく、3ply;3本の糸を合わせて織った)生地が、風通しが良くかつべたつかないため快適ですが、これのシャツ生地版がボイルです。

ボイルはたてよことも2plyの強撚糸を使った本ボイル、よこ糸に単糸を使った半ボイルなどがあります。

とても夏向きな良い生地なのですが、綿100%でもごわついたり、水を吸うとヨレやすいためか、あまり生地が出回っていない様に思います。(個心的には好きなのですが……)

 

4.色

色に関しては個人の好みや、本人の肌色などもあるため、一概にどれが良いとは言いにくいところがあります。

ただ、個人的にお薦めなのは、薄い水色のシャンブレーです。

 

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遠目には薄い水色のシャツに見えますが、近づくと水色と白が霜降りになっていることが分かり、とても涼しげに見えるからです。

また、色を拾うので、白の綿パンとの相性も良く、土日のカジュアル用のシャツとしても活躍できると思います。

 

 

5.終わりに

冒頭に夏用、冬用と書いてしまいましたが、夏に杉綾織り(ヘリンボーン)のシャツを着、冬に麻のシャツを着てはいけないのかというと、そんなことはありません。

しかし、それでも、シャツに季節感を採り入れることで、普段の装いにプラスの印象を与えることが出来ると考えています。特に、ウェストコートやネクタイが外れる季節となればなおさらです。

個人的には麻のシャンプレー生地が好きで、気がつけばかなりの数になってしまいました。冬場に活躍しづらく、収納に負担がかかっていますが、それでもやめられません……^^;

 

(番外)半袖のシャツについて

長袖原理主義者というわけではないのですが、ジャケットとの相性が悪いため半袖の持ち合わせが無く、今回取り挙げませんでした。

半袖のシャツを着るくらいだったら、ポロシャツを着た方が良いのでは? という意見にもうなずく一方、日本の気候を考えると、長袖に拘泥するのも良くないのかも知れません。

夏場の半袖シャツ利用について、もしご意見をお持ちの方がいらっしゃいましたら、コメントを頂けると幸いです。

 

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