皆さんは帽子を被る機会がありますか?
男女とも、若者向けのカジュアルスタイルに帽子は広く活用されています。しかし、スーツやジャケパンにおいて、多くの国民が帽子を被る文化は、絶えて久しいところです。
しかしここ1~2年、セレクトショップや百貨店などで、スーツスタイルと帽子をセットで提案するようになり、また雑誌でも帽子が多く採り上げられるようになりました。
このムーブメントが続くか分かりませんが、複数の読者からのリクエストもあり、今回は帽子について考えてみたいと思います。
1.読者からの帽子に関するコメント
前回の記事「夏のシャツを考える」を掲載したところ、コメントや質問箱経由で、以下のようなコメントを戴きました。
今年関東はなかなか梅雨が明けませんが、ここ数年の猛暑で帽子(ハット)を着用するようになりました。理髪店より将来のため、頭の地肌が日焼けしないようにと勧められ、かぶってみるとうなじや首もとが涼しく、見た目以上の暑さ対策になりました。昭和初期の男の人は帽子が服装の一部だったと聞いています。一度取り上げてみてはいかがでしょうか。
――投稿者 kamei さん
ところで、本サイトで目次を拝見してましたが、帽子に関しての記事がありませんね。お若い方には必要ないやも知れませんが、日本でも昭和の中頃まではサラリーマンのお父さんは皆スーツにハット被ってましたね。
チャラいサッカー選手や どこゾの政治家のボルサリーノは勘弁ですが、スーツに帽子って本当にカッコ良かったんです。惜しいですが、時代でしょうね~。でも、時代が変っても・・・頭部が気になりだした爺ィ~には圏外?です。
これには、頭部を守る という必然性がありますから 「痛い洒落者」と いう奇異な目では見られない特権?なのです。
で、小生も還暦を迎え そろそろ後姿?が気になりだしてましてね、今日 麻のハットをカミさんとデパートで衝動買いです。鏡で見た自分の姿、慣れなくて何とも サマにならないのを我慢して、ようやく納得の一品。
帽子デビューには良い季節ですが、早くサマになって、冬はチャコールグレーのフラノ・スーツにフエルトのハット? が、決まる様に頑張ってみます。(^_^)v
――投稿者 くろす 謙介 さん
コメントをいただきまして、有り難う御座いました。
かつて、多くの男性がスーツに帽子を合わせていたわけですが、都内の街中で見渡していても、サラリーマンで帽子を被っている人は殆ど見かけないのが現状です。
ただ、皆が被っていないからと言って、本当に帽子は必要ないのでしょうか。まずは、いったん白紙の状態から、帽子のメリットとデメリットを整理してみようと思います。
2.帽子のメリット
① 夏らしい見た目
夏場の帽子と言えば、パナマ帽(上記写真)やカンカン帽が代名詞ですが、見た目上のメリットはなんといってもその強烈な季節感でしょう。
リネンのシャツやジャケット、デッキシューズなどと似た様な効果で、装いに真夏の季節感を出すことが出来、炎天下でも涼しげに見えます。そして目の細かいパナマ帽ならば、ドレスダウンして見えないのも特徴です。
また、顔も日陰になるため直射日光下でも、目をつぶった顔になりません(まぶしさに目をつむって眉間に皺を寄せると、不機嫌な顔に見える)。
② 体感の涼しさ
帽子を被ることにより、髪の毛や頭皮に直射日光が当たらなくなるため、涼しく感じられます――といいたいところですが、これには条件があります。
実体験でもあるのですが、ある程度つば広の帽子で無いと、あまり涼しさを感じることが出来ません。(当然、頭皮を直射日光から守る効果はありますが。)
おそらく、顔や首筋に陰が出来ないと涼しくないのでしょう。また、デメリットでも言及しますが、帽子の中に熱が籠もりやすいことも影響していると思います。
△ 同じパナマ帽でもブリム(つば)の広さが様々あり、見た目の印象もだいぶ異なる
つばの広さは、流行や頭の大きさと相談して決める必要がありますが、もし涼しさを追求するのであれば、つば広の帽子がお薦めです。
3.帽子のデメリット
① 髪型が限られる
もしも、あなたの髪型が前髪を下ろしているタイプの場合、帽子は合わないかも知れません。
帽子は、後頭部の出っ張りと額(おでこ)の部分でホールドされます。従って額に髪の毛がかかる髪型の場合、帽子の圧力と汗で、前髪が茄子のヘタのようにぺったりとしてしまいます(実体験)。
その他、髪の毛を立たせていたりと、イマドキの髪型は帽子とかなり相性が悪いです。
一度、「帽子で髪の毛が乱れるのに対して、何か良い策はありますか?」と、ある若い美容師に質問をしたことがあります。回答は「普通、帽子を被ったら一日中ぬがないものですよ」とズバリ。 無礼にも室内で脱帽しない若者が多い理由が分かった気がしました。 室内では(女性を除いて)帽子を取る。これは鉄則ですので、マナーをわきまえるならば、やはりイマドキの髪型と帽子は相性が悪いのでしょう……。
短髪や、前髪を上げるような髪型の場合は、脱帽した後もセットが維持されます。このように、格好良く帽子を着こなしたい場合は、髪型にも注意する必要があります。
② 蒸れる
パナマハットは、見た目ほど通気性が良くなく、実際にはよく蒸れます。特に、(上質とされる)目の細かい物ならばなおさらです。
一番蒸れるのが帽子を支える内側のバンド部分。額や頭に密着するため、汗っかきの方はかなりベロベロになると思います。酷いときには額から汗が垂れてくることも……。 また、基本的に交換出来ないので不潔になりがちです。
そこで、私の場合は、内側に「汗パッド」を貼り付けています。帽子屋でも似た製品を販売していますが、スポーツ用の汗パッドの方が単価が安く、保水力も上でお薦めです。
△ 汗パッドフレッシュ。10枚入りで1000円台。(Amazon.co.jpの商品ページへのリンク)
③ 置き場所が無い
かつて、帽子が市民権を得ていた頃には、カフェやレストラン、会社のフロアや客先の応接室などにも帽子掛けがあったようですが、いまは殆ど見なくなりました。
帽子を被ったまま客先を訪問し、脱帽して応接室に入ったとします。しかし、帽子の置き場所はどこにもなく……といった感じになるわけです。(一応帽子のルール上は机の上に置く方法もあるようですが、現在では武官が出席する会議などの映像でしか見ませんよね……。)
なお、パナマ帽は、種類によっては丸められるので、いざとなったら、カバンにしまうことが出来ます。
ただ、長持ちさせたい場合、畳むことはあまりお薦めしません。素材が乾燥しているときなど、特に先(頭頂部)が割れやすくなるからです。
④ 仲間が少なく、奇異に映る
これは最大の問題かも知れません。 特に平日の着用は、必ずと言って良いほどツッコミを受けます。
副総理の麻生閣下のように、トレードマークとして用いるならば良いかも知れませんが、周囲からのツッコミが苦と感じられる方には、お薦めしません。
4.買い方
ネットでも販売しているところはありますが、帽子はサイズ合わせが難しいので、初回の購入は実店舗をお薦めします。
かぶり方、かぶる位置、かぶる深さなど、まだ自分の「帽子のベストポジション」を決められていない場合には、特にです。
買う場所は帽子専門店でも百貨店やセレクトショップでも良いと思います。(帽子専門店は種類が豊富な一方、高額になる傾向があります。)
選び方
身長、顔の形、かぶり方などによって、似合う帽子の山の高さや、つばのサイズも変わってきます。 普段帽子をかぶっていない人は、自分一人で選ぶのは大変だとおもうので、出来れば店員のアドバイスを受けるようにした方が良いでしょう。(どの帽子をかぶっても目新しく見え、どれが似合うか客観的な判断が下しにくいからです。)
予算について。パナマ帽は汗をかく季節に使用するため、寿命は(着用頻度にもよりますが)長くて5年位です。これを前提に、予算を組むと良いと思います。
帽子の選び方については奥が深く、機会があったら別に採り上げたいと思います。
もしネットで購入する場合
Amazonの直営店など、試着OKで交換無料の店で選んだ方が良いでしょう。
とくに、サイス表記の数値はあまりあてにならないので、とにかく試着は必須です。(やむを得ない場合は、大きめを選んだ上で、サイズ調整用テープ等を用いるという方法もありますが。。。)
5.着用方法
これも、このネタだけで記事が1本出来ますから、今回はかぶり方と扱い方のコツを要所だけ。
- あまり深くかぶらず、かつ斜め前方へ傾くようにかぶると「子供の帽子」に見えない
- パナマ帽の場合、前方のつばを下に向けると格好かつきやすい(下の写真)
- かぶるときは帽子全体か、つばの根本と後頭部部分をあわせてもつ(帽子前方の凹みは、傷みやすいのでなるべく持たない)
- 室内では脱帽する(屋外でも挨拶や礼をするときには脱ぐ)
- 帰宅したら必ず風通しの良いところで陰干しする(箱にはしまわない)
6.おわりに
今回は初回と言うこともあり、メリット/デメリットを中心に、帽子をかぶる必要性を中心に考えてみました。
帽子はとても奥が深く、その種類、色、サイズなどの選び方、着用方法、保管方法、手入れ、マナー、コーディネート等々、考えるべき点は様々ありますが、また需要があったら採り上げていきたいと思います。
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私自身、現代の服装に帽子が必要か、まだ結論が出せていません。少しずつ使いながら、活用方法を模索してみたいと思います。
みなさんはどう思いますか? 活用している方、活用したい方、あきらめた方、否定派の方、様々いらっしゃることと思いますが、もしご意見がありましたらコメントをお願いします。
(参考までに……)私は真夏かつ日差しの強い休日限定で、生成りの麻ジャケットとパナマ帽を稀に合わせています。かつて通勤経路で屋外が長かった際は、平日もかぶることが有りましたが、やはり悪目立ちし易いこと、いまは通勤で殆ど日差しを受けなくなったこと等から、平日の着用は無くなりました。