ビスポーク(オーダースーツ)

3万円と20万円のスーツは何が違う? オーダースーツの価格別のオススメや特徴を考える

投稿日:令和3年(2021) 1月11日  (更新:令和3年1月12日)

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先日、知人から、「オーダースーツっていくら出せばいいの?」という質問を受けました。

一口にオーダースーツといっても、生地や縫製によって価格は全然違います。それこそ、安ければ2~3万円で、高ければ100万円近いわけです。

話を聞いていくと、特に予算や希望は無く、「オーダースーツって良いらしいし、1着作っておきたい」「でも、いくら掛けたら良いかわからない」という漠然としたものでした。

たかしかに、スーツ好きにとっては当たり前の、生地、縫製、デザインの選択は、スーツにあまり興味を持ってこなかった方にとっては想像がつきづらく、調べるハードルも高いのかもしれません。

そこで今回は、オーダースーツの価格はどの様にして決まるのか、高いオーダースーツと安いオーダースーツの違い、価格の目安とオススメのオーダー方法などを、実際にスーツやジャケットをン十着オーダーしてきた実体験を元にご紹介します。



3万円と20万円のオーダースーツは何が違う?

いきなりですが、安いオーダースーツと高いオーダースーツ――ここでは単純化するために3万円と20万円のスーツで、それぞれ何が違うのでしょうか。

まず、3万円のオーダースーツは、「生地の質感や着心地は多少劣るが、そこそこのシルエット」であることが多いでしょう。

そして、20万円のオーダースーツは、「生地の質感は普通で、着心地は恐らく良く、シルエットは良いか悪いかのどちらかに寄る」といった感じです。

この表現、違和感を覚えますか?

なぜ3万円のオーダースーツはシルエットがそこそこなのに、20万円のオーダースーツは良いか悪いかに振れがちなのか。なぜ、20万円も出したのに、「高級感漂う生地の質感」ではなく「普通」なのか。

次に解説していきたいと思います。

 

オーダースーツの価格の決まり方

始めに断っておくと、「高ければ良いスーツ」というわけではありません。

たとえば、本当は250万円のファミリーカーが必要なのに、「高ければ良い車だろう」と2,500万円のスポーツカーを買うと後で後悔しますよね?(多分。)

スーツも似た様なもので、自分に合った要素や、適切な価格を選んでいく必要があるのです。

とはいえ、オーダースーツはどの様に価格が決まるのでしょうか。

もちろん、店によって決定方法は異なりますが、概ね以下の3点を考えればOKです。

  1. 生地代
  2. 縫製工賃
  3. オプション

それぞれ見ていきましょう。

(今回は初心者向け記事ということで、簡単な説明にとどめたいと思います。生地や縫製のピンキリでの特徴、オプションの詳細、副資材が云々といった説明は、少々話がマニアックになるため、また別途とりあげたいと思います。)

1.生地代

一つ目は、私たちが選ぶ生地による違いです。

スーツは生地から作られます。当然、ボタンや裏地などもありますが、ほとんどの面積を生地が占めます。誤解を恐れずに言うと、スーツの印象の7割は生地で決まります。

無地のシブイ色を使えばシックに、薄めの色や目立つ柄を使えば派手なスーツが出来上がります。

そして、この生地の価格がピンキリなのです。

制服や激安スーツ向けに大量に生産される化繊の安価なものもあれば、海外の有名ブランドや稀少な(または稀少という触れ込みの)マテリアルを使った高価な生地もあります。

例えば安価なイージーオーダーの場合、だいたい2~3万円程度だと、化繊(ポリエステル)か、化繊とウール混紡の生地しか選べないことが多いです。

2.縫製工賃

二つ目は、縫製による価格の違いです。

原材料である生地を加工することでスーツが生み出されますが、その加工方法、つまり縫製のやりかたによって価格が変わります。

縫製は、大雑把に次の3段階に分かれます。

  • 採寸
  • 型紙作成/裁断
  • 縫製

そして、それぞれの工程でどのくらいの時間と費用が掛かるかで、価格が変わります。

イージーオーダーとフルオーダーの違い

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ここで、イージーオーダーとフルオーダーの違いを、縫製の観点から比較します。

イージーオーダーとは、型紙の作成や生地の裁断を自動化(CADによる自動製図と、CAMによる自動裁断)してサイズやデザインを簡単に調整出来るようにし、縫製も機械で大量生産することにより価格を下げたものです(上図の青色部分)。

多くの場合作業は標準化され、熟練の職人でなくとも、見た目/品質共に一定水準を満たしたスーツが出来上がるというメリットがあります。

一方で、型紙もゼロから人が作り、手縫いを多用したものを「フルオーダー」といいますが(上図オレンジ色部分)、全工程が機械縫製の自称「フルオーダー」も存在したり、差別化のために一部手縫いを取り入れたものもあるなど、表現は企業によってバラバラで本当に分かりづらく、統一基準はありません。(なお、本サイトでのフルオーダーとは、手縫いを主体としたものをいいます。)

なお、フルオーダーは、着心地やデザインの自由度は高いものの、多くの労力が必要となるため価格はかなり高くなり、またデザインや完成度は店や職人に依存することになります。

3.オプション

そして最後に、オプションによる追加費用です。

ここで「オプション」とは、店が用意した標準の仕様から外れることによる、追加の原材料費や手間賃を指します。

例えば、裏地にキュプラを使いたい→「追加原材料費に該当し、プラス3,000円」というそれくらいタダにしてよ……というものから、ベストやスペアパンツの追加といった追加費用が納得できるものまで様々です。

低価格イージーオーダーの場合、コストカットが進んでいることもあるためオプションとなる部分が多くなる傾向にあります。

ポジティブに捉えると、「こだわりの強い人には追加料金を支払って貰うことで、その他大勢の価格を下げている」と言えますが、実際には店側の(正確には、多くの場合製造工場の)貴重な利益改善要素になっています。某ハンバーガーチェーンの「ご一緒にポテトもいかがですか?」みたいなものです。

2~3万円の安いイージーオーダーでも、良いボタン、良い裏地、こだわりのステッチ、本切羽、お台場仕立て……等々、気をつけないと簡単に5万円を超えるでしょう。

 



価格の目安とオススメのオーダー方法

それでは、オーダースーツの価格感を理解するために、生地、縫製、オプションの3つの観点から価格帯別の状況やオススメのオーダー方法を見ていきます。

なお、地域や店によって当然価格は異なります。また、統計的なデータではなく、あくまで私の個人的な独断と偏見に基づくもので、その点はご容赦下さい。

2~3万円台

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イージーオーダーがギリギリ射程圏内。縫製も恐らく海外。個人店では難しく、チェーン店を狙った方が良いでしょう。

ほとんどが工賃なので、生地は多くの場合ポリエステルかポリエステル・ウール混紡の一番安価なものを選ぶことに。ポリは丈夫ですが、蒸れるのが嫌な方や生地の質感にこだわる方には向きません。

ただし、イージーオーダーの場合、最初から完成度の高いスーツを作る事はかなり難しいため、1着目はあえてこの価格帯を選び、雨や職場で作業をする日用のスーツにする、という手もあります。

5万円前後

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イージーオーダーで国産優良生地か、安価な海外生地が射程圏内。スリーピース(三つ揃い)にする場合はまだ足が出そう。少額のオプション(キュプラ裏地など)ならなんとかなるかも。

おそらくイージーオーダーのボリュームゾーンで、最も平均的な価格でしょう。最近はデパートでもこの価格で注文できるようになりました。

~10万円

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イージーオーダーで海外高級ブランドの生地(それでも中価格帯以下)か、そこそこの生地で複数のオプション(ベストやスペアパンツ、高めの裏地やボタンなど)が射程圏内。とはいえ、フルオーダーはまだ無理。

イージーオーダーが好きな方や、カスタムを楽しむ方は、この価格帯がボリュームゾーンになると思います。というのも、これ以上高くなると生地の価格に比べて縫製の価格が釣り合いが取れなくなるからです。イメージとしては、「高級寿司店のネタを使ったコンビニのパック寿司」でしょうか。

15万円前後

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イージーオーダーで生地を我慢せずに、三つ揃い(スリーピース)のベスト(ウェストコート)が楽に作れる価格帯です。

または、そこそこの海外生地で、国内高級縫製工場の利用(店によって異なりますが、「ラグジュアリーライン」とか「機械手縫い」とか、そんな感じの表現が多いです。)という手もあります。

10年位前は、20万円弱でかろうじて手縫いメインのフルオーダーをやっている店もありましたが、原価高騰と高齢職人の引退で、今では難しくなったように感じます。

25万円前後

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工賃15~20万円、生地5~7万円として、一般的なフルオーダーが視野に入ります。ただし、高級店やラグジュアリー生地だと足が出ると思います。三つ揃いでこの価格帯の良い店があったら、個人的にはリピート確定です。

スーツにこんな値段を……と思うかも知れませんが、縫製とデザイン、両方の腕が良いテーラーの作品で、かつ自分に激しい体型変化がなければ、10年は着られます(実話)。

50万円前後

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以上は、私の実体験を元に記載してきましたが、このランクは未知の領域です。

この価格の場合、フルオーダー工賃が15万円~高級店で25万円としても、残り25万円~35万円が生地やオプション代ということになります。

で、実際そんな生地が実在するのが怖いのですが、まずサラリーマンが仕事用に選ぶ生地ではありません^^;
(多くがビキューナやカシミアといった高級な獣毛ですが、超細番手のウールや、貴金属や宝石を混織した生地――バブル期に多かったようですが、最近でもチャイナや産油国の成金富豪をターゲットとして新しいものが作られている――もあります)

 

まとめ

個人的には、イージーオーダーの場合、その店で満足のいくフィッティング感になるまでは5万円以下を、慣れてきたらブランド服地やオプションを楽しみつつ、10万円以下が目安では無いかと思います。ビジネスユースの限界で、それ以上は趣味のレベルでしょう。

一方、フルオーダーの場合は25~30万円がボリュームゾーン。しかしこの値段はイージーオーダー2~3着分です。オーダースーツに不慣れな方は、イージーオーダーである程度慣れてからフルオーダーに手を出しても遅くは無いと思います。(あと、良い靴をお持ちで無い方は、フルオーダーの前にその半分のお金で革靴を買った方が良いです。)

みなさんはスーツをオーダーしていますか? またオーダーするときはどんな価格帯ですか? 皆様の参考にもなると思いますので、よろしければコメントをお寄せください。

(ちなみに、私は三つ揃いメインのため少し割高で、イージーオーダーだと10万円前後、フルオーダーだと20万円中盤が多いです。)

 



おまけ(解説|冒頭のネタバレ)

  • 3万円のオーダースーツ……「生地の質感や着心地は多少劣るが、そこそこのシルエット」
  • 20万円のオーダースーツ……「生地の質感は普通で、着心地は恐らく良く、シルエットは良いか悪いかのどちらかに寄る」

記事本文を読んだ方はおわかりかと思いますが、3万円のオーダースーツは、恐らくポリ混の格安生地で仕立てたもの。

そして20万円のオーダースーツは、フルオーダー工賃15~20万円とすると生地代はほぼ残らず、国産のお値打ちの生地を使ってギリギリに仕立てたものです。シルエット~のくだりは、テーラーの力量次第というフルオーダーのメリットとデメリットを表しています。

あーでも、20万円を使った贅沢イージーオーダー(3万円のイージーオーダー工賃+17万円のどえらい生地という「高級ネタを使ったコンビニパック寿司」パターンや、10万円の国内高級工場工賃+10万円の高級服地)というパターンもあるかも知れませんね^^;

 

 

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