ファッション誌でたまに取り上げられる「○○代にオススメの腕時計」というネタ。その小項目としてよく出てくるのが、「新入社員向けの腕時計」です。
だいたいは、セイコー、シチズン、カシオといった国内ブランドに、低価格帯の海外ブランド(オリス、フレデリックコンスタント、ノモス等々)が、広告宣伝費の高い順に掲載されている感じです。
しかし、イマドキの新入社員は、そういった「どんな腕時計が良いか」というよりも、「そもそも腕時計を付けるべきか」という疑問が先に来ると思います。また、それを考える上で、ビジネスの中で、どういうシーンで腕時計が役に立つのかを知っておく必要あるように思います。
もうすぐ新年度ということもあり、上記のような話題について考えてみました。
1.新入社員に腕時計は必要か
そもそも腕時計を付けるべきかを先に考えます。
業種業界によって条件は異なりますし、異論はあろうかと思いますが、私なりの結論は、このスマートフォン全盛時代にあってもなお、新人のオフィスワーカーにとって腕時計のメリットは大きい、と思います。
時間に厳しいシーンが多い
理由のひとつめは、日本特有の事情もあって、新入社員期は時間に厳しいシーンが多いからです。
実は大切な研修期間
大企業を中心として、新卒社員は入社後数ヶ月の研修があり、その後1~2年のOJT(現場での研修)期間を課すのが一般的です。ジョブ型雇用が広がりつつあるとはいえ、いまだ一般的な光景でしょう。
実は、企業によりますが、この期間中の成績や行動を参考に「幹部候補フラグ」を立てる重要な時期だったりします。
その研修期間中、重視される行動の一つが時間に正確であること。残業時間はルーズなのに、開始時間にはやたら厳しいのが日本企業の伝統です(^^; 研修が人事評価に影響が無い企業でも、「学生気分を払拭する」を旗印に、遅刻者に対してとても風当たりの強い雰囲気を醸し出します。
実用品としての腕時計
そんなときに重要なのが、実用としての腕時計です。
スマートフォンでも時間は確認出来ますが、確認時のもたつきがなく、かつアナログの針が頻繁に視界に入る腕時計の方が、圧倒的に時間に対する感度が上がります。
また、そもそも、研修時間中に私用スマートフォンの取り出しや操作を禁止している企業もあるようです。
古い価値観の人間が一定数いる
また、どんな業種業界にも、一定数古い価値観の人間はいるものです。
彼らは、「腕時計はビジネスマンとして当然の身だしなみで、していないヤツは時間厳守の精神が足りていない」と決めつけてかかります。しかも、往々にしてそういう人種は権力構造の上の方にいることが多いのです。(私も実際に遭遇したことがあります。)
さらに残念なのは、そういった方々は新入社員との「直接対話」や「現地指導」にこだわる傾向にあって、若手や中堅時代よりも会敵するお目にかかる機会は多いという……。
その場では何も言われなくとも、配属先の上長、トレーナー、研修の担当社員に指導が入ることもあり、企業文化によるかもしれませんが、腕時計は身を守るために必要なアイテムと言えます。
その服装でしか付けられない腕時計がある
一方で、ポジティブな面もあります。それは、新入社員時期だからこそ楽しめる腕時計があるかも? ということです。
ビジネスウェアのカジュアル化が進む昨今、スーツを毎日着る入社研修/新入社員期間中だからこそ、楽しめる腕時計も存在します。
例えば、こういったシンプルな3針時計は、カジュアルな服装でも問題はありませんが、ビジネスウェアととても相性が良いです。
その時の、自分の服装に最適な時計を探し着用してみるというのが、腕時計の楽しみ方としてオススメの方法です。
自分で書いておいてアレですが、新入社員の皆さんには前項2つの義務感満載で着用するより、変化を楽しむ観点で腕時計を好きになってほしいと思います。
2.どんなビジネスシーンで腕時計が役に立つか
以上の、時間を知る、古い価値観(偏見)から守る、ファッションを楽しむ、以外に、腕時計はビジネスにどんな役立ち方をするのか……。
主に配属数年後の若手以降の時期向けになるかもしれませんが、腕時計のビジネス上のメリットをご紹介します。
話題を作る
「一般にはあまり知られていないが時計好きが好む時計ブランド」というのがいくつかあります。(ブランパン、ピアジェ、ショパール、グラスヒュッテGUB等々……挙げれば切りが無いですし、「これが挙がっていない!」とお叱りを受けるような難しい世界です。)
そして、往々にしてそういう時計を付けている方は、「その時計素敵ですね」に弱く、さらに「私も○○好きなんですよ!」でかなりの親近感を抱いてくれます。
加えて、自分もそういった“メジャーでは無いが、時計好きが好きなブランド”の腕時計をしていると、先ほどの「私も○○好きなんですよ!」の信憑性が高くなり、強烈なアイスブレイクとラポール(親しみ感情)の形成に繋がるのです。
出身地、出身校、好きな物など、相手との共通項をアピールすることによる信頼感醸成はとても強力な武器ですが、腕時計は特にやりやすいパーツです。
信用力を持たせる
ビジネスでは信用力が重要です。誰しも「本当にこの人と取引をして大丈夫なのか」「自分のお金や時間が無駄にならないか」と、心配になるからです。
初対面において、官公庁や名の知れた大企業に所属している場合は、その所属があなたの信用力の源泉です。
しかし、あまり有名で無い中小企業や個人事業主、マイナーな外資系などでは、身に付けている腕時計が個人の信用力を補強してくれることがあります。特に実力が収入に直結する業界の場合はなおさらです。
ある程度良い腕時計をしている → ある程度の収入がある → この業界で活躍している優秀な人なんだ という連想が働くからです。
やり過ぎ注意
ただし、成金感満載のやり過ぎは「この人カタギじゃないかも……」となるので注意しましょう。
また、私のように捻くれた人間が見ると「普段”これ以上の値引きは赤字なんでー”とか言っておきながら、うちとの取引でそんなに利益を出しているのか……」と思われることもあるので、逆効果にならないか、性格の見極めも重要です。
ビジネスシーン以外でも……
一部の腕時計好きに名の知れた某ブランド(中古の不動品を購入しレストアした実際は安価なもの)を着用して百貨店に行ったところ、担当者から「腕時計がお好きなんですか? よかったら外商カードを作りませんか? 値引きや限定品をご紹介しますよ。」と、外商(富裕層や法人向けのコンシェルジュサービス)の営業を受けたことがあります。 当然、新品を買う資金力は無く、そもそも分不相応なので丁重にお断りしましたが^^;
このように、ビジネスシーン以外でも、相手からの信頼や有利な提案に繋がることもあります。
各種サインを出す
ほかにも、腕時計をしているからこそ、出せるサイン(信号)があります。かなりネタ的ではありますが、サラリーマンには現役で使える重要な作法です。
- 話の長い上司やお客様から脱出するために、腕時計をサッと見て、あかたも今気づいたように「あ、すみません、すっかり話し込んでしまいましたが次の予定がありまして……」という
- 自分が言葉を発することができない環境で、腕時計をチラチラみて時間のオーバーを相手に気づかせる(持ち時間をオーバーしている講演者などへ)
- 飲み会で酔った上司の武勇伝が始まって早く切り上げたいとき、幹事に向けて腕時計を指で軽く叩いて「お開きにしよう」サインをこっそり出す
おわりに
いつもの繰り返しになりますが、究極的には、ファッションは自分の好きな物を着て、自由に表現すべきものだと思います(他人に迷惑をかけない範囲において)。したがって、腕時計の要否や選択肢も自由が基本です。
しかしそれでも、「他人の意見も聞いておきたい」、という方がもしいらっしゃればと思い、記事にしてみました。参考になりましたら幸いです。
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