ビスポーク(オーダースーツ)

オーダースーツ、初めての店で失敗しない方法を考える

投稿日:平成25年(2013) 11月3日  更新日:平成27年(2015) 10月12日 

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オーダースーツ(ビスポークスーツ)のよくある事として、
「1回目のスーツは大抵思い通りにならない」
という、経験者の皆さんなら納得の(?)傾向があります。

そして、その多くは仮縫いを行わない、
つまり、一発勝負のパターンオーダーやイージーオーダーに顕著です。

オーダースーツは何度も作ってきたのに、新しい店で作ると、どうも上手くいかない。
本サイトでも、「初回の服は仮縫いと思って安い生地で」などと書いたことがありますが、
果たして本当にそうなのか、なにか対策は無いのか、考えてみようと思います。

 

 

上手くいかない原因を考える

まずは原因分析から。
「初めてのオーダーで失敗する」の<失敗>とは何か、考えてみます。
(以下、基本的に私の失敗をもとにしていますので、網羅性についてはご容赦下さい^^;)

  1. サイズが合わない
    要因1:店が大きめにサイジングする傾向にある(小さいと着られないが、大きければ着られる)
    要因2:自分と店のサイズ感がズレている(タイト目が良いのか、たっぷりめが良いのか)
  2. 生地が合わない
    要因1:光沢が出すぎ、あるいは地味すぎ
    要因2:他のズボンやシャツと会わせづらい生地を選んだ
  3. シルエットが合わない
    要因:
    店のパターンが自分の想定と異なる(あるいは、補正を掛けたら異なってしまった)
  4. 変なシワが出る
    要因:サイジングや補正選択の誤り、補正の限界
  5. 価格が合わない
    要因:オプションの付けすぎ、店自体の選定ミス

だいたいこんな所でしょうか。
(自分の、今までの失敗を振り返った形になるので、かなり萎えてきますね……)

 

 

上手くいかない原因の、対策を考える

さて、原因が分かったところで、それぞれの対策を考えてみます。

1.サイズが合わない には……

対策1:フルオーダーでなくても、仮縫いをする
「パンが無ければケーキを食べれば良いじゃ無い」のごとく、荒唐無稽に聞こえますが……いいえ、そんなことはありません。仮縫いが、イージーオーダーやパターンオーダーの場合であっても、またメニュー表記が無くても、実は相場8,000円前後で付けられることが結構あります。1着目をムダにすることを考えれば、高くない保険料です。

仮縫い:服を完全に縫い上げる(本縫い)前に、各パーツを仮で縫い上げることを言いますが、ここではその状態で本人に着せ、フィッティングを行うことを指しています。フルオーダーでは一般的な工程で、難しい体型の場合には仮縫いを複数回行う場合もあります。

対策2:サンプル服、ゲージ服を活用する
店にある見本用の服(サンプル服、ゲージ服)で自分の体に近いものを着用し、それを起点に補正を行う方法があります。あたかも「失敗した1着目」を仮想で作ってしまおうというわけです。(この方法を初めから採り入れている店もありますが、自分から言わないとやってくれない場合が多いです)

対策3:ジャストサイズの服を持ち込み、確認して貰う
一般的にはボディサイズ(体の寸法)を計測するのですが、出来上がったスーツの寸法から逆算することも可能です。一通りボディサイズを採寸して貰った後に、ジャストサイズのスーツを平置きで測って貰いましょう。両者に大きな違いがあれば、サイズが合わない原因になるので要チェックです。

以上全てが、要因1と2に対する対策でした。

2.生地が合わない には……

対策1:現物(着分)の生地から選ぶ
原因の殆どが、バンチブック(見本生地集)から選んだことに因ると思います。色も光沢も、バンチの小さな布切れから完成品を想像することが難しいです。現物(そのまま仕立てるサイズの生地)ならば、肩からたすき掛けし、完成時の雰囲気を想像しやすいです。おしゃれな雰囲気の店の場合、生地が暗く(黒く)感じがちなので、出来れば、屋外で吟味したいですね。

対策2:手持ちの服を着ていき、色と質感を合わせる
探してきた生地の質感や鮮やかさだけで選ぶと起こりがちなミスです。対策2-1と併せ、作る服に合わせようとしている衣服を着て行き、実際にあうか試します。このとき、色よりも生地の質感をあわせるようにすると(私の場合は)上手くいくことが多いです。

以上、対策1が要因1、対策2が要因2にそれぞれ対応しています。

 

3.シルエットが合わない には……

対策1:サンプル服、ゲージ服を活用する
対策1-2と全く同じです。店のショーウィンドウを見るのも大事ですが、サイズの近い服を実際に着用して、どの様に見えるかを確認することが大事です。多くの場合、いくつかのパターンがありますから、着やすさとシルエットの両方から見て、どれが自分に合うかを吟味します。

4.変なシワが出る には……

対策1:仮縫いをする
これも対策1-1と同じです。サンプル服にピンを打ちながら調整する方法も良いのですが、調整したことにより別の箇所に引きつりが発生することもあります。こればかりは採寸者の腕になってしまうため、完全に防ぐことは難しいです。従って、仮縫いがよりよい対策と言えます。

5.価格が合わない には……

対策1:予算を決める
予算とディテールを決めて、生地を選ぶ前に店側に伝えます。マトモな店であれば、その予算内で選べる生地を提案してくれるはずです。

対策2:本当に必要なオプションかを考える
本切羽(本開き)はボタンホールが綺麗にみえる効能はありますが起毛素材ではあまり効果が有りません。台場仕立てやD管留めなども見栄えにあまり関係がありません。特に、生地ブランドの裏地やボタンは、ノーブランド品に比べてコストパフォーマンスが著しく劣るので注意が必要です。

 

 

初回が失敗するのは仕方が無い? or テーラーの怠慢?

テーラーに「初回が失敗するのは仕方が無いのか」の話をすると、だいたい2つの返答が帰ってくることが多いです。一つは、「やはり、初回は難しいですよね」という答え。もうひとつは「それはテーラーの怠慢だと思っています」という答えです。

どちらが良くて、どちらが悪いというわけでは無いのですが、
これらの回答から、テーラーは努力はするが初回は難しいのが現実、という答えが浮かび上がります。
従って、客の側も初回から気に入る服を作ろうとする努力が必要なのだと考えています。

初回をお願いする際、そのテーラーの味や得意な方法を知るためにも、(予算制約を除いて)仕様やディテールなどは全てお任せした方が良いと考えています。しかし、ことサイジングや生地選びなどについては、客側の好みやこれまでの成功例を提示して、テーラーの努力を支えるべきだと思いました。

オーダーはビスポーク――客とテーラーが会話しながら作り上げていく物です。
しかしチェーン店などは「会話」が最大公約数化されたマニュアルに基づくことが多いのが現状です。
客側が情報の出し方を工夫することで、初回からかなり良い物が出来上がるのではないでしょうか。

 


先月のアンケートで7割の方がオーダースーツ利用者ということが判明したので、
今回はオーダースーツネタにしてみました。
新しい店を開拓した際などにご活用頂ければ幸いです。

イージーオーダーやパターンオーダーで仮縫いは反則でしょ? と思うかも知れませんが、
私は何度か利用したことがあり、いずれも満足行く結果になっています。
店側も余り宣伝していないことが多いのですが、可能な場合はぜひ試してみて下さい。

 

それでは。

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