先日、2つのデニム生地のシャツを購入しました。
当初の目的は、オーソドックスに、初秋以降の週末カジュアル用でした。しかしネットやファッション誌を見ると、最近はビジネス向けにスーツでのタイドアップもちらほら見かけます(賛否あろうかと思いますが)。
そこで今回は、デニムシャツについて、ジャケットやネクタイとのコーディネートやビジネスでの利用是非について考えたいと思います。
1.デニム生地で仕立てたシャツ
先日デニム生地のシャツを仕立てました。
目的は、晩夏~初秋の「ジャケットが暑くて着られない時、普通のドレスシャツだとアウター的要素が無くて嫌……」というシーンのためです。
とはいえ、ドレスシャツのラインで発注したこともあって、出来上がってみると結構きれい。そして、ジャケットと合わせても良いのでは……? という欲張り心が生まれたのが、本記事の切っ掛けです。
そもそもデニム生地とは ~ジーンズとは違うの?~
※ ご存知の方は読み飛ばして下さい
以前、職場で夏季服装規程が出た時に話題になったのが「デニムとジーンズって違うのか」という話です。
「イマドキはジーンズではなくデニムって言うんですよ」と若手が言えば、「じゃぁ、”但しジーンズは禁止”ではなく、”但しデニムは禁止”と書いた方が良いか……」というやりとりがあったりして、オイオイマテマテ^^; となった記憶があります。
一般的には、デニム(経糸が色糸、緯糸が晒し<白糸>の木綿の綾織物)で作ったパンツがジーンズなわけで、デニムにジーンズは含まれますが、デニム=ジーンズではないわけです。
シャンブレーとも違う
サックスブルーの麻シャツか好きな方にとっておなじみなのがシャンブレー。
これも色糸と晒し糸で似た様な雰囲気ですが、こちらはデニムの綾織りと違って平織りで薄く風通しが良く、かつデニムとは逆の配置です(経糸が晒し、緯糸が色糸)。
そのため、デニムよりも白さが目立ち、よりザックリとした印象になります。
デニムは労働着として多用された歴史があり粗野な印象がありますが、極細番手の生地の場合は光沢も出て、ザックリとしたシャンブレーよりもドレス的な雰囲気があります。
ドレス要素のあるデニムシャツ
そんな細番手のデニム生地を用い、かつドレスシャツと同一の仕立てで作ったシャツが、今回のデニムシャツです。
既製品だとイタリア系のインポートブランドに多く、近年はファッション誌でドレス系のコーディネートに取り入れられることが増えてきた印象です。
最初に購入したのが、上の濃い色のデニムシャツです。
単品として使うのには良いのですが、ある時からジャケットとも合わせたくなったこともあって、薄い色のデニムシャツを追加しました(そのため、後者の仕様は裏前立て※にポケット無しとしています)。
※ 前立て(フロントのボタンホールが並ぶ部分)が裏側に折り返され、プレーンな印象になる仕立て
また、両者共に同じブランドかつ4.5オンスで生地の厚さは殆ど※同じですが、前者は綿100%で後者はテンセル(再生繊維)混のため、しなやかでより光沢があります。
※ 実測では、前者が0.40mm、後者が0.38mm
2.デニムシャツをジャケットに合わせる
前項で紹介したシャツは、いずれも単品として優秀でした。
両方とも密度の高いデニム生地かつ長袖のため、盛夏用というよりは春と秋の夏よりな時期にピッタリです。
しかし、この時期の夕方以降は結構冷えることが多く、また夕食時など、同時にジャケットもあわせたいという衝動にも駆られます。
そこで、どんなジャケットが合うのか、検討してみました。
アイボリージャケット
アイボリーの麻を用いた夏用ジャケットです。悪くはありませんが、少しコントラストが大きいかもしれません。
このジャケットならば、薄色デニムの方が合います。
ポケットチーフを挿してみました。ジャケットから夏の雰囲気がかなり漂うため、使えるのはせいぜい9月前半くらい迄ですかね……。
水色のジャケット
続いて、水色のジャケットを着せてみました。
ズボン次第というところもありますが、このくらいのコントラストだったらありですかね。
逆に、薄色デニムはボケてしまう感じがします。
ただ、こういうときは濃い色のポケットチーフを挿せば、ボケが軽減されます。
紺色のジャケット
ジャケットを、水色から濃くしてみます。
濃い色のデニムシャツに、ジャケットの色が近くなったため、すこしボケてきた印象です。
またポケットチーフ頼みでボケを回避してみました。多少マシになりましたが、効果は限定的かもしれません。
薄色デニムに交換。やはり、ある程度コントラストはつけた方が美しく見えます。
グレイのジャケット
手持ちのグレイジャケットが構築的なシルエットの物しか無かったので、雰囲気に違和感が出てしまっていますが、その点はご了承下さい……^^;
濃い色の方が落ち着いて見えます。
色も一因ですが、質感が影響しているかも知れません。
今回の生地はいずれも4.5オンスの薄い素材ですが、濃い色のデニムは綿100%に対し、薄い色のデニムは35%のテンセルが含まれています。
テンセルは木材を原料とする再生繊維で吸湿性や質感はとても良いのですが、独特の光沢感があります。
こちらは綿100%の濃い色のデニムですが、ザックリ感が強く出ています。
ジャケットも麻混のザックリとした生地のため、質感という点でこちらの方が合ったのだろうと思います。
3.デニムシャツとネクタイタイは合うか
購入時にはまったく想定していませんでしたか、この際なのでタイドアップできるか試してみます。
シャツやジャケットの質感や色を拾ったり合わせたりすることで、まぁなんとかなる感じはします。
ただ、本当にネクタイと合わせるのであれば、よりカジュアルさが出てしまうボタンダウンにしない方が良さそうですね。(今回は、シャツ単体での利用を当初想定していたため、襟が立ちやすいボタンダウン仕様にしていました。)
4.デニムシャツはビジネスに使えるか
最後に、これらのデニムシャツがビジネス用途として使えるかを考えてみます。
チノパンが許される環境ならば良さそう?
ジャケパンがビジネスの世界に浸透した現在も、デニムシャツについては、少し立ち止まって考える必要がありそうです。
ビジネスではNGという先入観(デニム生地が労働着やカジュアル着のデザインとして多用されてきたため)をもたれていること、さらに先入観が無い人であってもその濃い色や質感から、どうしてもラフな印象が拭えないからです。
従って利用は、ノータイジャケパン許容に加え、チノパンが許されている環境に絞ると、今のところは安全なのではないでしょうか(会社の文化により異なりますが、概ねIT、マスコミ、広告の内勤等はこれに該当する感じですよね)。
また、チノパンが許されることで、デニムシャツとのコーディネートにも幅が広がると思います。
ドレス度は、色の濃さ、生地の厚さ、デザインに左右される
そして、ビジネスでも使いやすいデニムシャツの条件としては、
- ドレスシャツに準じたデザインであること
- 色が薄いこと
- 生地が薄いこと
この3点が重要だと感じました。
ドレスシャツに準じたデザインであること
これは大前提です。単純にデニムシャツと言った場合、目立つステッチやフタ付きポケットなどがついたワークシャツやウェスタンシャツまで含まれます。
ビジネス用途とするのであれば、最低限ドレスシャツに準じたデザインである方が良いでしょう。
色が薄いこと
単体で利用する場合は濃い色の方が使いやすいと思いますが、ビジネス用途としては、またジャケットと併用する場合も色は薄い方が良いでしょう。
生地が薄いこと
厚手の生地は、単体での(アウターとしての)利用価値を高める一方、カジュアル度を上げてしまいます。
5.まとめ
デニムシャツとは、経糸に色糸、緯糸に晒し糸を使った綾織のデニム生地を用いたシャツの事ですが、最近では軽いウエイトの生地を用い、ドレスシャツに近いものが増えてきました。
週末のカジュアル用途として、ジャケットを羽織らず単体で活躍することが多い一方、色や質感を上手く合わせることで、ジャケットのインナーとして用いることが出来ると分かりました。
ビジネス用途としては、ノージャケットかつチノパンが許される環境であれば活用出来そうです。その際、ドレスシャツ的なデザインであること、色が薄く、生地も薄ければ、使いやすいと思います。
汎用性を求めると失敗する?
ここまで書いてアレですが、ファッションアイテムは汎用性を求めすぎると失敗することが多いですよね……。
AにもBにも使える物を……を目指すと、AにもBにも使いにくい(使えなくは無いけどしっくりこない)というものが出来上がったりします。
週末のカジュアルも、平日のドレスも……とやると、難易度が高くなりどちらにも適さない物が出てくる恐れがあるため、欲張らないことが大切なのでは、と、過去の反省から思っています。
デニムシャツについても、「きれいめなカジュアル着としてジャケパンに活用する」ならまだしも、「スーツのインナー等、完全なドレスシャツとして運用する」のはハードルが高いな、と感じました。
みなさんはデニムシャツをどの様に活用/コーディネートしていますか?