6月も後半になると気温はグングン上がり、クールビズという言葉が現実味を帯びてきますね……
この「クールビズ」というbuzzword、キモは「如何(いか)に涼しく」というより、「如何に格好良く」
という事なのではと思っています。
つまり、「半袖のナイロンシャツで量販店のうちわをパタパタやる」なんてことは全力で回避したい。
そう思うわけです。
そこで、昨年より流行しているビズポロシャツを買い足すことにしました。
このビズポロシャツ、ブームの仕掛けはラコステのようですが(間違っていたら指摘して下さい)、
近年は色々なシャツメーカーから発表されるに至っています。
ただ、それを単に紹介するだけでは芸が無いので、今回はオーダー(ビスポーク)してみました。
今回のターゲットは「ビッグヴィジョン」です。
鳥取エフワンよりは小さいですが、職人の居ないテーラーのOEM工場なんかもつとめる、業界の大手。
おじさん向けスーツの印象が強いのですが、昨年買収され、急速に方向転換を図っています。
その方向転換の一環として、おしゃれなビズポロシャツを発売したようです。
ということで、早速近場のビッグヴィジョンで、ビズポロシャツを作って貰うことにしました。
今回は店に行き、生地を選び、採寸をして会計を済ませるところまでをレビューしてみたいと思います。
※ 同社は関東一円、名古屋、大阪で展開しています。それ以外の地域の方、ごめんなさい。
本記事を御覧の皆様へ:
私はフェアなレビューのために、感じたことを全て書く事にしています。同社は残念ながら、買収前の旧態依然とした雰囲気がまだ残っており、そこを「気になったこと」としてまとめてみました。したがって、そこだけを読むと、ネガティブ要素が多いように見えてしまいます。
しかし、新商品開発への取り組みと、コストパフォーマンスの高さから、実際に作ってみた感想は「お薦め」です。ここでいう「気になったこと」は、「すこし高いレベルの要求をした上での気になったこと」であると、読み取って戴ければ幸いです。
■ 生地選び 素材はクールマックス
さて、ビッグビジョンの某店に入り、早速シャツ姿の店長に話しかけます。
ビズポロシャツのことを言うと、展示品のコーナーに案内されました。
生地は3種類。白、水色、青色で、いずれもcoolmax(クールマックス)を使用しているようです。
coolmaxとは、デュポン社系の会社が製造販売している、いわゆる機能性生地です。
汗を素早く発散させることで清涼感をもたらす、とのことで、以前は男性用下着で流行しました。
ということで、必然的にポリ混(ポリエステル×綿が半々くらい)の素材になります。
今回は白と水色を選んでみました。
・気になったこと1 ~「ジャケットはハンガーへ」は鉄則のハズ~
店長に案内され採寸エリアへ。当日はジャケットを着ていたので、脱ぐように促されます。
脱いだ私が、ジャケットを持ったまま「これはどこに掛けて戴けますか?」と言うと、なんと
「そこら辺に置いておいて下さい」と店長……。
いや、ちょっと待て待て。客のジャケットを作業台の上に置けと仰るか。
いやしくもテーラーなのに、ふさわしいハンガーが一つも無いのかと。
仕方ないのでこれ見よがしに裏側にしてたたみ、作業台の上に置きましたが、何の反応もなし。
ちょうど同社のウェブサイトでアンケートを実施していたので、後日このことを書いたところ、すぐさま、なんと経営者から直接、お詫びと感謝のメールが来ました。しかし残念なことに、1ヶ月後、新商品「一枚仕立てのジャケット」を同店に作りに行ったのですが、その時も同じく、机の上でした。
■ 採寸~ディテール決定
他のシャツやと同様、胸囲や胴回り尻周り、肩幅、袖丈、手首周りなどを採寸。
シャツ屋によっては、手首周りの指定が出来ない、左右で袖丈を変更できないなんていう所もあるのですが、そこは問題なく調整が出来ました。
このあたりは自社工場を持っている同社の強みで、かなり融通が利く印象です。
その後、衿型、ポケットやカフ(袖口)の種類等、ディテールを決め、あとは会計へと進みました。
・気になったこと2 ~流れ作業? 安価なおじさん向けオーダー量販店からの脱却~
新しい経営者のブログにも書いてあったのですが、旧来のビッグヴィジョンの方針は薄利多売にあったようです。脱却を図ろうとしているようですが、今でも「生地選び→採寸→ディテール決定→会計」という流れ作業を如何に早くこなすかに重点が置かれているように、今回のビズポロシャツをビスポークする中で思いました。
今回利用した某店は、かなり広い売り場面積で、場所も一等地です。にもかかわらず、通常は店長と事務員(採寸は出来ない)の2名。繁忙時間帯でも店長と補助フィッター、事務員の3人しか居ません。似たような店舗を展開するエフワンもそういう傾向にあると思います。これでは、一人一人に時間を割けないのではないでしょうか。
従来の客層は「体型が合わないから」「インポートの高級生地を激安で仕立てる」という目的の、中年層が多かったように思います。しかし、テーラーフクオカが「ゼルビーノ」を、銀座山形屋が「サルトリアプロメッサ」を立ち上げたように、ビスポーク(bespoke:フィッターと話しながら服を作る)をする20~30代のファッション意識が高い人が、イージーオーダーの顧客になりつつあります。
勿論、何もしていないのでは無く、そういった人を取り込もうと、従来のビッグビジョンでは考えられない、Men'sEXを意識したディスプレイを置くなど、新経営者の元、従来の販売手法からの脱却を図っており、今後に期待したいと思います。
■ 会計
1着7,500円。ビスポークシャツにしては安価です。
勿論、コルテーゼなどの専門店では2着10,000などがありますが、クールマックス生地で、流行のビズポロシャツで、この値段は破格であると思います。
※ 現在セールが開催されている模様で、H24.7.16 までは一着6,500円のようです。
もちろん、本当にコスパが高いかどうかは、次回の出来上がったシャツのレビューを見て戴いた方が良いと思いますが、個人的にはお薦めです。
完成は3週間後とのこと。
ということで、いよいよ次回は実際にどんなシャツが出来てきたのかをご紹介しようと思います。
お楽しみに。
・気になったこと3 ~店員もディスプレイの一つ~
個人のファッションを否定するのは大嫌いなのですが、これだけは敢えて書いておきたいです。
この業界、「客よりも良いスーツを着やがって」なんて思う人は一人も居ません。
むしろ、客の見本、客のニーズを引き出すような服を着なければだめ、というか着て欲しいです。
今回私が行ったビッグビジョンの某店では、それが全く欠落していました。
そもそも、涼しい時期に行ったのに、シャツ一枚にスニーカーでウェストコートすら着ていない。
そのシャツも、新製品のビズポロシャツでも何でも無い、ふつうのもの。
オフィス街の店に行ったので、「客と同じ格好をする」という、営業方針なのかも知れません。
しかし、目的は客におしゃれな服を作らせ、満足させることにあるのではないでしょうか。
だったら、身を以てディスプレイとなり、客にファッションを提案してゆくべきです。
おまけ:ビッグビジョンについて
ビッグヴィジョンは、きちんとした採寸をして貰い、かつ、こちらからディテールをしっかりと指定すれば、とても良いスーツを作ってくれる、イージーオーダーの店です。
事実、私はそのコストパフォーマンスに満足し、5年ほど利用しています。
ですが、イージーオーダーの失敗例にありがちな、いわゆる「おじさん向けの甘め(ゆるめ)の採寸」に、しゃれっ気の無い「作業着としての日本式スーツのディテール」を店から薦められることが多く、当サイトが対象とする初級者が、知識無しに利用したら良い結果を生まないと思い紹介を控えていました。
「半袖のナイロンシャツで量販店のうちわをパタパタやる」雰囲気の、スーツが出来かねないからです。
しかし、昨年の買収と、意識の高い経営者への交代があり、当サイトで紹介することにしました。
事実、ファッション性の高い提案やセールが、次々と繰り出されてきています。
旧態依然のところも多いですが、今後同社は(良い方向に)かなり化けるのではないかと考えています。
同社のサイトから送るアンケートは、全て経営者が見ているようなので、ぜひ利用した上で送ってみて下さい。私も、今回のエントリーで書いた「気になったこと」は全てアンケートフォームから送信しました。こういった地道なフィードバックが、きっと、お互いに良い結果を生むと思っています。