みなさんは「鎌倉シャツ」をご存知でしょうか。
このサイトをご覧の方には、ヘビーユーザーがいらっしゃるかも知れません。というのも、シャツ関連の記事でコメントを戴く際、頻繁に出てくる名前だからです。
東京のターミナル駅にもお店があり、私も通りかかることが良くあります。しかし、だいたいその後オフィスに戻るケースが多く、実際に購入したことはありませんでした。
ところが先日、「鎌倉シャツ良いですよ」「ぜひレビューして下さい」というお便りを戴いた上に、さらに、その週会社でも同僚から似た様な発言が……。
これはやらねばまずいということで、シャツ(と、おまけでネクタイ)を調達しましたので、早速レビューしてみようと思います。
1.今回買った物
① 水色のワイドカラーシャツ
- 製品名:スリムフィット ワイド
- ブランド:メーカーズシャツ鎌倉
- 素材:綿100%(100番2ply、新疆綿ロイヤルオックスフォード)
- 色柄:水色無地
- 金額:\5,400(税込)
- 原産国:日本
- リンク:公式通販サイト
② ネイビーの小紋タイ
- 製品名:ネクタイ(ネイビー)
- ブランド:メーカーズシャツ鎌倉
- 素材:シルク100%
- 色柄:紺色小紋柄
- 金額:\5,400(税込)
- サイズ:大剣幅8.5cm、全長145cm
- 原産国:日本
- リンク:公式通販サイト
2.フォトレビュー
せっかく実店舗があるブランドのため、本来は試着して購入することが望ましいのですが、今回は横着して通販で購入してしまいました。
鎌倉シャツは、全国20店舗以上あり、その多くに試着室が備わっています。シャツで試着するの? と思うかもしれませんが、実際に袖を通してみる事をオススメします。(公式サイトの店舗一覧ページ)
オリジナルの白い箱に入って到着。
8日以内であれば交換できるとのメッセージが。 問い合わせが多くならないように連絡先をわかりにくくする業者が多い中、あえて大きく表記していることに好感が持てます。
商品、明細の他に、冊子が入っていました。
シャツのイロハからアイロンのかけ方までかなり丁寧に書かれています。そこらの雑誌やサイト(当サイトを含む)より、よっぽど分かりやすい表現で「シャツとはどうあるべきか」について書かれていました。
本格シャツに初めて触れる方には是非読んで欲しい内容です。
① シャツ
こちらが今回購入したシャツ。 かなりオーソドックスな水色のワイドカラーシャツです。\5,400という、本格シャツにしてはかなり安い部類です。
フロントは表前立てです。公式通販のラインナップを見ると、基本的な仕様は表前立てのようです(サイト上では、裏前立ての場合は敢えて「裏前立て」と表記)。米国向けと在庫を共通化している影響でしょうか……?
表前立て:前立て(ボタンホールが並ぶ部分)が、表側に折り返してあるスタイル。英米圏に多い仕様。
裏前立て:前立てが、裏側に折り返してあるスタイル。ヨーロッパの旧大陸側に多い仕様。
ボタンは高瀬貝、生地はロイヤルオックスフォード100番双糸(2ply)です。
高瀬貝のボタン:天然の巻き貝から作ったボタンで、中~高級シャツに使われる。さらに高価な白蝶貝であれば白蝶貝と明記するので、シャツ関連で「貝ボタン」とあれば多くがこれ。ただし、写真のボタンよりも薄い(=安い)高瀬貝ボタンもあり、またボタンの裏側もまだら模様ではなく、よく研磨されているようなので、高瀬貝ボタンの中では高級な部類だと思われる。
厚みは2mm程度。
襟ボタンも根巻き無し(ボタンの足を作って取れにくくする)の一般的なもの。この価格なら仕方が無いかも……。
襟羽根は少し柔らかめです。
個人的には、三つ揃いを多用するので、もう少しピタッと胸に張り付くタイプの襟が好きです。好みの問題ですが……。
上から見たところ。形は結構綺麗です。
カラーステイは取り外し式で、透明なプラスチック製のものが予め入っています。 ただ、良くあるタイプより少し細く、厚さも薄めです。襟の柔らかさを重視しているのかも知れません。
ガゼット(補強布)はありません。個人的には、手縫いでなければそこまで強度に影響はなく、不要だと思っているので特に問題なしです。
スリムタイプということもあり、背ダーツでウェスト部分が絞られています。
袖の部分。ごく普通のプリーツですが、縫製は綺麗です。
② タイ
以前戴いたコメントに「鎌倉シャツのネクタイが良い」というものがありました。と言う事で、ネクタイもついで買いしましたのでレビューします。
こちらが購入したタイ。かなりオーソドックスな紺色の小紋タイです。
柄はプリントではないため、生地表面のツイル(綾畝)と相まって立体感があります。
ブランドタグとは別に、ループもあります。
しっかりとした芯地や裏地を使っている印象です。
日本製。「SMR INC.」とは鎌倉シャツの商品企画部門なので、実質的に自社製品です。
プレーンノットで結んでみました。
けっこう厚手なので、しっかりと結べます。
ジャケットを着せてみました。
タイバーやタイピンを使わなくても、ノットを浮かせる事が出来ました。
この価格でこの品質ならば買いだと思います。(表地だけよくて、縫製や副資材がでたらめなタイが多い中、かなり結びやすい部類に感じます。)
3.着心地
続いて、実際に着用して出社し、着心地を確かめてみました。(シャツは何度か洗濯しつつ複数回着用してみました。)
① シャツ
- 襟や袖の芯は軟らかく、ジャケパンとの相性も良い
- 襟が少し高い(実測4.5センチ)ため、ネックサイズをどちらか迷う人は大きい方が良さそう
- カフ回りが大きいので、手首が細い人はボタンを縫い直すと快適になる(袖丈は、既製サイズでも2種類選べるのが○)
- 「攻めすぎ」のスリムフィットシャツに良くある窮屈さは無く、体は動かしやすい
② タイ
- 表地、芯地ともしっかりとしてとてもしめやすい
- 一日装着していても緩みにくい
4.カミチャニスタとの比較
正直、このレベルのシャツを1枚\5,400で、しかも経費がかさむ実店舗販売が主流のブランドは、あまり見当たりません……。
低価格化しやすいネット販売だと、本サイトでも過去にレビューしたカミチャニスタがまさに同額で販売しているため、今回はここと比較してみようと思います。
その他、ネット販売メインだとAZABU THE CUSTOM SHIRTも同額ですが、過去に1度しか購入した事がないため、今回は割愛します。(鎌倉シャツと一緒に愛用している方がいらっしゃいましたら、ぜひコメントをお願いいたします。)
試着の可否
カミチャニスタは通販専門ですが、鎌倉シャツは店舗がメインです。鎌倉シャツであれば、購入前に知識を持った店員の前で試着が出来るため、初めての方でも安心できると思います。
デザイン
カミチャニスタはイタリア風、鎌倉シャツは英米風と目指すところが異なるように感じます。
また、カミチャニスタの方が少し細身だと感じました。(サイズ表を比べてみても、細めでした。)
ボタン
カミチャニスタはこの値段としては珍しく高価な白蝶貝を使っています。鎌倉シャツも値段の高いラインでは白蝶貝ですが、\5,400のラインでは高瀬貝です。
高瀬貝でも十分綺麗なのですが、白蝶貝と比べるとどうしても見劣りします。
縫製・製造
カミチャニスタは外国(チャイナ)での製造なのに対し、鎌倉は国内製造です。この価格で国内縫製は驚異的だと思います。縫製の丁寧さは鎌倉シャツの方が上だと感じました。
サイズ
カミチャニスタはスリムフィットとレギュラーフィットの体型が2種類と、それぞれで1センチ刻みのネックサイズという展開です。一方鎌倉シャツは、同様の体型・ネックサイズ展開に加えて、袖丈のサイズを複数用意しています。腕の長さが合いにくい方には、鎌倉シャツがオススメです。
また、両社ともに裄丈の修理(袖つめ)を行っていますが、カミチャニスタは\1,500、鎌倉シャツは\900(いずれも税抜)と、鎌倉シャツの方が安価です。
総評(あくまで個人の好み)
南イタリア風に、ジャケパンですこしピッタリとシャツを着たいという場合は、カミチャニスタをオススメします。
それ以外の用途だと、個人的には鎌倉シャツに軍配です。縫製の綺麗さ、生地や芯地の質感などは、鎌倉シャツの方が好みでした。
なお、今回比較したカミチャニスタのシャツは、約1年前に購入したものです。今年4月にカミチャニスタの運営会社が2度目の(しかも1回目とほぼ同じ原因で)クレジットカード情報を流出させました。そのため、暫く利用を控えており、今年は一度も利用していないためです。 参考:インプレス「セキュリティコード含むカード情報744件流出、リデアの「カミチャニスタ」に不正攻撃」(魚拓)
5.鎌倉シャツ、こんな方におすすめ
本格シャツの世界に初めて触れる人(新入社員や大学生)
全国に(さらに台湾やニューヨークにも!)実店舗を展開していて、試着が可能で、ここまで低価格なシャツ専門店は他に見当たりません。
また、今回同封されていた冊子の内容、公式サイトの記載、以前実際に店舗でお話を伺ったときの対応をみるに、鎌倉シャツの、本格シャツに対するこだわり・啓発への、並々ならぬ熱意が感じられます。きっと、貴重なアドバイスを受けることが出来るでしょう。
コスパ重視の人
鎌倉シャツを取材した本で読んだのですが、同社製シャツの原価率は6割なのだとか(ネクタイも5割だそうで……)。原価率2割未満が常識なアパレル業界では異常な数字です。
おそらく、通販専業にして店舗の運営費用を削っている他店と比べても遜色ありません。(むしろ上に感じることもあります。)
高番手シャツが好きな人
今回はレビューしていませんが、200番手や300番手といった超高番手生地のシャツまで扱っています。
実用域とされる140番手を優に超えており、不思議に思って早速追加で購入してみました。結果、艶やかな見た目と、触ったときのしっかりとした感覚とが共存する不思議なシャツで、耐久性もそこそこ有るようでした。折を見て、記事にしたいと思います。
おそらく、糸を四ツ杢(4ply)にしているためだと思います。細い糸も撚れば薄すぎないということですね。したがって、スベスベ感、ヌメり、薄さなどを求めるのであれば、イタリアの生地にある、単糸140番手のほうが良いでしょう。もっとも、個人的には4plyの方が好きですが……。
また、高番手で4plyにすると、スーツなどでは織り目(ズボンのクリース)から傷みが出てくるのですが、シャツだとどうなるか……。暫く使って、様子を見てみようと思います。
上記のように、個人的評価は結構高めです。既製(非オーダー)のシャツとしてはかなりオススメで、本格シャツが初めての人に「どこが良い?」ときかれたら、とりあえず薦めておいて間違いが無いブランドだと感じました。
当サイトのコメント欄を含め、その人気ぶりに、「すでに人気だしレビューは必要ないだろう」とか「人の行く 裏に道あり 花の山」とか色々理由を付けて先延ばしにしてしまった事が悔やまれます(^^;
シャツ以外にも、様々な製品があるようです。こちらも折を見てレビューをしてみたくなりました。