土井縫工所と双璧を成すカミチャニスタ(CAMICIANISTA)。
ネット通販限定、低価格(コスパ重視)で高級シャツのディテールという、シャツ業界の新業態的存在でしたが、いまではすっかり定着したように思います。
当サイトでも、以前カミチャニスタと、それに続いて土井縫工所のシャツをレビューしました。
結果は、後発の土井縫工所の圧勝。
コンセプトとしては良かったのですが、当時のカミチャニスタはあまりにもお粗末でした。
あれから2年。いかに当時の投稿とは言え「カミチャニスタはお粗末です」というレビューを垂れ流し続けるのも問題があろうということで、再購入&再レビューしてみることにしました。
当時のレビューで使用した写真も交えて、ビフォアアフターを比較したいと思います。
なお、カミチャニスタの基本的な説明、当時の経緯や関連レビュー記事は以下を御覧下さい。
■ まずは購入してみました
カミチャニスタは通販型のシャツ屋なので、当然宅配便で届きます。
段ボールは相変わらず安っぽいのですが、そこらへんはご愛敬。
中身を出来るだけ良くしようという考えの裏返しでもあると思っています。
一般的なビニール袋に入ったシャツ。
土井縫工所は布袋ですが、カミチャニスタにそういう面での主張はあまりないように思います。
とりあえず開封。
続いて、前回との比較に移ります。
■ 驚き――前回のマイナス点が完全に改善されていた
まず、カミチャニスタの欠点として指摘したのは以下の通りでした。
以下、前回の引用――
■悪いところ
先に書きますが、このシャツは「買い」だと思います。しかし、このシャツのみを着ようとは思いません。今まで化学繊維が入っているシャツしか着ていなかった人にはステップアップ用として3~4着、そうでない人はワードローブの1~2割程度で十分というレベルです。この理由を以下に述べたいと思います。
※あくまで「現状」です。カミチャニスタの中の人がこのサイトを御覧になっていた場合は、改善の参考にして頂ければ幸いです。
1.縫製が甘い
2.種類が少ない
3.管理体制が甘い
――引用ここまで
では、具体的にどうなったのかを見ていきましょう。
1.縫製が甘い → 完全に改善
とても同じメーカーとは思えないほど、縫製が良くなっています。
この部分はカフ(袖)の部分で、前回はこの様に述べていました。
クリックし拡大して見て頂けると分かるのですが、縫製の末端部分がぐちゃぐちゃになっています。一般的な高級シャツの場合はこういった端の処理が非常に綺麗です。
これが、見事に改善しました。
発売当初から雑誌で広告(タイアップ記事)を乱発したため、生産が追いつかない事態が発生していましたが、当時の縫製の甘さは、そういった部分に起因していたのかも知れません。
ガゼットの部分。こちらも綺麗ですね。
これは、脇腹の部分(裏側)です。
巻き縫いになっており、こちらも縫製が向上したように思います。
ボタンホール。
こちらも綺麗です。
2.種類が少ない → 改善
ここで言う種類とは2つの意味があります。
一つは生地の種類、一つはサイズの選択肢です。
前者――生地の種類は、2年前はほぼ白と水色のみでしたが、
現在はクレリックやカジュアル系の生地も増え、とても良くなったように思いました。
後者のサイズですが、前回は流行のピチピチサイズしかありませんでした。しかし、「レギュラーフィッティング」と呼ばれる、普通のドレスシャツと同じゆとりを持ったサイズのシャツが登場、選択の幅が広がりました。また、今回はこちらを購入してみました。
サイズ感で言うと、土井縫工所のシャツよりも、同じネックサイズならばこちらの方がゆとりがあります。不等号で表すと以下の通りです。
← きつめ | ゆとり →
カミチャのスリム < 土井のダーツ < 土井のクラシック < カミチャのレギュラー
土井縫工所のレビューをした際にまとめたサイズ比較表がありましたので、再掲します。
ただし、土井縫工所には袖丈の調整(有料ですが)があり、その点は土井縫工所に軍配が上がります。シャツの袖丈はカフのボタンつけかえである程度カバー可能ですが、ノータイの場合は袖の”生地あまり感”が結構気になるものです。
3.管理体制が甘い → ボタンについては改善
実は、2年前、以下のようなことがありました。
- 発売開始後3ヶ月に亘り、高価な白蝶貝と謳ったボタンが安価な高瀬貝を使用し続けたことが判明
- H22.3 公式WEBにお詫び文が掲載、事の次第と既存発送分を全てつけ替える旨を発表
- H22.5 お詫び文がなぜか削除
そして、当時私は以下のように書きました。
要は、「白蝶貝と言いつつ、販売していたのは安い高瀬貝ボタンのシャツでした」「3ヶ月も気づきませんでした」ということです。これは故意にしろ過失にしろ、気持ちの良い問題ではありません。
勿論、シャツは着いているボタンで選ぶ物ではありません。プラスチックボタンにはプラスチックボタンの、高瀬貝には高瀬貝の良さがあります。しかし、問題はそういうことではありません。(中略)キツい言い方をします。
「カミチャニスタの中の人※は、自分のところで作った自慢のシャツを一切着ていなかった」もしくは、着ていたとして「カミチャニスタの中の人は、白蝶貝と高瀬貝のボタンの区別が付かない」と言うことです。
※中の人:関係者全員。特に経営者。これまでに販売したシャツの全ボタンを付け替えると発表しているとはいえ、非常に重いことだと思います。
上記のような残念な出来事がありましたが、実は、今回、このボタン部分が画期的なくらい改善しているのです。もう、別のシャツといった感じです。
しっかりと縫い付けられているのが分かります。
それだけじゃ無いのが分かりますか? そう、ボタンの高級感が全然違うのです……
奥が前回の、手前が今回のボタンです。
厚いボタンが良い! とは一概には言えませんが、一般的には厚いボタンの方が高級とされ、今回は前回比1.5倍くらいの厚みになっています。
左から、今回のボタン、前回のボタン、土井縫工所のボタンです。
(こうして並べると土井縫工所のボタンが薄く見えますが、逆にサイズは大きめです)
参考までに、白蝶貝ボタンのメーカー別比較です。
左から今回のボタン、土井縫工所、前回のボタン、フライ、ルイジボレッリのボタンです。
やはり、機械縫製の王フライ、手縫縫製の王ボレッリのボタンはすごく厚いですね。
ただ、厚すぎるとクリーニングに出したときに割れる確率が高まりますので注意。
(土井縫工所の2重たらいは衝撃を分散するみたいで、今まで割れたことがありませんが)
■ その他所感
今回、カミチャニスタが土井縫工所にクオリティの面で追いついた感があります。
見事に欠点を克服したと言っても過言ではありません。一方で、土井縫工所が負けているか、というと、それは間違いです。土井縫工所の優っている点として、
- 衿の綺麗さ:これは土井縫工所に軍配が上がります。ただ、衿が若干大きめなので、好みは分かれそうです。
- サイズ感:人により好みが分かれるところですが、カミチャニスタはタイトフィットとレギュラーフィットの差が激しく、私にとっては土井縫工所のフィット感が合っていました(特に、カミチャニスタはレギュラーの肩幅が広い)。それ以外では、袖丈の調整を受け入れて居る点が、高ポイントです。
- こだわり:ビニール類を極力使わない、国産での丁寧な気遣いと縫製を大事にする、と言った点です。単なる自己満足の「拘り」ではなく、利用者に利益が出るこだわりになっているところが良いです。ただ、そのかわり値段が高めですけどね^^;
カミチャニスタは海外の安い縫製でもここまで改善できる、よいシャツを作れるという証明になった良い例だと思います。前回も伸びしろがあると書きましたが、これからもまだまだ良くなると思っています。
勿論、チャイナの経済成長とインフレでここ数年、工賃が急激に騰がっていることは事実で、今後、カミチャニスタが同じ価格でシャツを提供できるかが勝負所だと思います。ベトナムやビルマに工場を移すか、クオリティを下げる(非熟練工を雇う)か、価格を上げるか――。
これからも目が離せないブランドであることは間違いないようです。
如何でしたでしょうか。
前回のレビューで、「これからも応援したいと思います」などと書きながら、2年も放置してしまいました。申し訳ないです。
でも、今回のレビューから分かったことは、カミチャニスタ側が大変な企業努力で、クオリティを向上させたと言うことでしょう。1着7千円未満で、これだけのシャツが手に入るようになったことを感謝します。土井縫工所を恐らくライバル視していることでしょう、これからも切磋琢磨して欲しいものです。
あと、どうでも良いことですが、中華人民共和国のことを中国と書くと縫製工場が多い中国地方と混同しそうですし、古風に支那と書くと(理由は不明ですが)各方面から非難が来そうですし、あとは昔の朝日新聞みたいに中共とかもアレですし……ということでチャイナと表現してみましたが、なんかしっくりこないなぁ……