たびたび採り上げている電気カミソリの話題。今回は珍しい「ロータリーシェーバー」についてレビューしてみます。
昨年掲載した記事、「電気シェーバー? カミソリ? 自分に最適なヒゲソリを考える」で、電気シェーバーには「往復式」「回転式」「ロータリー式」の3種類を紹介しましたが、ロータリー式はそのマイナーさ故、殆ど触れませんでした。
私自身、いままで往復式と回転式しか使ってこなかったため、今回初ロータリーです。古いシェーバーが壊れたわけでもありませんが(むしろ昨年ラムダッシュを買ったばかり)、以前の記事でロータリー式についてネット上の評判しか書けなかった悔しさと、日立から新製品が出た事も有り、人柱として購入してみました^^;
1.おさらい 電気シェーバーの3方式
まず、電気シェーバーの3方式についておさらいです。ご存知の方は読み飛ばして下さい。
1.往復式
ブーンという音と振動で、日本では電気シェーバーの代表格といっていい方式。パナソニック、ブラウンといった主要メーカーの主力品が、全てこれです。日本で発売されているシェーバーの種類のうち、約8割弱がこの方式です。
○: 種類が多く選びやすい、短時間で剃れる
×: 音がうるさい、髭のカスが飛び散る、ヘッドが大型の物が多い
2.回転式
シャリシャリという音と少ない振動で、海外ではメジャーなのに日本ではマイナーな方式。
主力品ではフィリップスのみ。携帯用としてはその他のメーカーも発売しています。日本で発売されているシェーバーの種類のうち、約2割がこの方式です。
○: 静か、肌に優しい、刃が長持ち(往復式の倍以上)
×: 往復式より時間がかかる、剃るのに慣れが必要
3.ロータリー(輪転)式
今回レビューするRM-LX2Dがこれ。購入前のネットの評判を見る限り、良い評価と悪い評価に二分されています。悪評には、慣れないと出血するという文章も……。
○: 短時間で剃れる、静か
×: 種類が少ない、替え刃が高い、メンテナンスが面倒(注油など)
→ 今回の製品で違うことが分かりました。使用感レビューをご覧ください……。
2.製品データ
- メーカー:日立
- 製品名:ロータリージーソード(ロータリー式電気シェーバー)
- 型番:RM-LX2D
- リンク:メーカー公式、Amazon
- 発売日:H27.05.21
- 実勢価格:2万円台前半(私が購入した時は2万円台後半でしたが、かなり値下がりしてきました)
RM-LX1との違い
同時にRM-LX1も発売されていますが、製品本体の機能は同一のようです。違いは、LED光乾燥機(充電兼殺菌乾燥用のスタンド)が同梱されているかと、本体の色(RM-LX2Dの方が濃い色)です。
詳細は、メーカーの比較表が分かりやすいです。
3.外観レビュー
開封
外箱は黒いデザインです。刃が光っているデザインなのは、内部に紫外線を出すLEDが内蔵されており、殺菌/消臭をする仕組みだからです。
機能一覧が外箱に書かれていました。
本体は安心の日本製。特に刃の部分は、日立金属の「YSSヤスキハガネ」で、これは日本刀と同じ砂鉄を原料とした「たたら製鉄」で精錬されているとのこと。刃を作る技術も日立マクセルとのコラボだそうです。充電器やアダプタはチャイナ製です。
左がシェーバーを入れるポシェット、右上がシェーバー一式、右下が取扱説明書です。
シェーバー一式を取り出してみました。左から、LED光乾燥機、シェーバー本体、掃除用の刷毛、メンテ用の機械油、ACアダプタです。
シェーバー本体
デザインは最近の流行をよく踏襲していると思います。ただ、ミラー状のプラスチックを一部に採用しており、これのせいで、少しおもちゃっぽい感じがします。
ヘッドの部分。プラスチックの保護キャップがついています。
刃は一段のみです。(ラムダッシュのように、3段~5段状になっているわけではありません)
横から見たところ。
この部分に親指をあてながらそります。
バッテリー表示部分です。
運転中や、運転終了後数秒間、現在の充電状況を確認することが出来ます。
キワ剃り用の刃です。ポップアップ式(ラムダッシュと同じ方式)です。
ACアダプタを直結するコネクタ。充電しながら使うことも出来ます。
替え刃の交換目安は1年半(毎日使った場合)とのこと。
内蔵LED+光コート
運転中や、運転終了後20分間、ヘッドに内蔵されたLEDが発光します。説明書によると、光触媒の様な機能で、消臭の効果が有るとのこと。
外刃を取り外したところ。
LED光乾燥機
洗浄機能はついてません。充電と、LEDと温風による乾燥/除菌/消臭機能がついています。ただし、乾燥/除菌/消臭機能と、充電が同時に出来ないというなんとも残念な仕様です。
スイッチはここのON/OFFボタンだけ。
除菌消臭用のLEDランプです。
充電時の装着方法。LED光乾燥機が小さく、トップヘビーで結構不安定です。
充電後の装着方法。重心は下がるので多少安定しますがすが、今度はしっかりハマらないため、本体がぐらつきます。
乾燥/除菌/消臭時の装着方法。この状態だとカッチリはまって安定するのですが、充電が出来ないという……。
ケース
かなり素朴な、スポンジ状のケースです。
製品の保護としては良いのでしょうが、デザイン面は改善の余地有りです。
4.使用感レビュー
良いところ3つ
- 髭が引っ張られない
一般的な電気髭剃りによくある、髭が引っ張られる感覚が殆どありません。相当鋭利な刃物で、髭がなで切りされている感覚です。髭が濃い部分にあてても、「バリバリ」というあの独特な音がしないのにはビックリしました。 - 肌に優しい
私は肌が弱い方なのですが、往復式(ラムダッシュ)にありがちな振動が殆ど無く、回転式(フィリップス)のように何度もこすりつけることが無いため、使用後にひりひりしません。前評判にあった、出血するというのも、私には見られませんでした。 - 深ぞりできる
私の感覚では、ラムダッシュよりも深ぞりできました。ただし、デメリットにも書きますが、あごの裏側など深ぞりが苦手な箇所もあります。
悪いところ3つ
- 剃るのが難しい部位がある
ヘッドの形状上仕方が無いのですが、あごの裏側など、立体的なところを剃るのが苦手です。他の電気カミソリは複数の刃やクッション機構が「面」で肌を捉えるのに対し、RM-LX2Dは1本のロータリー刃しか無く「線」でしか捉えられないからです。慣れの問題かも知れませんが……。 - 剃るのに時間がかかる
1番とも関連があるのですが、苦手な部位があるため、一般的な往復式に比べて時間がかかると思います。時間は回転式(フィリップスなど)と同じか、少しかかる位でしょうか。 - 周辺部分の完成度が低い
LED光乾燥機や、収納用ケースの完成度が低いです。特にLED光乾燥機は、充電しながら乾燥できない、設置時にぐらつくなどのポイントがマイナスです。(「周辺」ではありませんが、本体が安っぽく見えるのも良くないです。製品機能が良いだけにもったいない。)
ロータリーシェーバーならではの特徴
電気カミソリで「逆ぞり」が出来ると聞くと驚くかも知れませんが、ロータリーシェーバーは回転方向が一定なので、それが可能です。
写真は説明書の抜粋ですが、上が順ぞり、下が逆ぞりを示しています(説明書上はそれぞれ「粗ぞり」と「仕上げぞり」という表記)。これが深ぞりが出来る理由と言うわけです。
電気シェーバーに慣れた人からすると操作が難しいと感じるかも知れませんが、感覚はT字カミソリと似ています。逆に、T字カミソリを使っていた人が、電気シェーバーに乗り換えるとき、ロータリーシェーバーは良いかも知れません。
5.ラムダッシュ、フィリップスとの比較
外観の比較
真ん中がRM-LX2Dです。左がフィリップスセンソタッチ3D、右がパナソニック ラムダッシュES-LV74です。
個人的な好みでは、フィリップスがデザイン/質感共に最優秀です。次点でラムダッシュ、RM-LX2Dは残念ながら最下位です。
ヘッドの比較
ヘッド部分の比較です。上からRM-LX2D、パナソニック ラムダッシュES-LV74、フィリップスセンソタッチ3Dです。
使用感レビューでも書きましたが、ほか2製品が「面」で肌を捉えるのに対し、RM-LX2Dは「線」で捉える形状をしています。ただし、「そり味」はRM-LX2Dが圧倒的に良いです。
充電器の比較
ラムダッシュ、センソタッチ(上の写真)ともに、洗浄/充電/乾燥を同時にこなしますが、RM-LX2Dは乾燥と充電が同時に出来ません。また、RM-Lx2Dはそもそも洗浄液が無いので、ハンドソープで洗浄したあと、所定の機械油を注す必要があります。
動作音の比較
日立:RM-LX2D(ロータリー式)
パナソニック:ラムダッシュES-LV74(往復式)
フィリップス:センソタッチ3D(回転式)
やはり回転式が圧倒的に静かです。ロータリー式も仕組み上は静かなのですが、RM-LX2Dは切れ味を向上させるための超音波振動が組み合わさっているためか、往復式に比べれば静か、といった程度です。
6.まとめと、買いかどうか
長くなったので、強引に3行でまとめてみます。
- 現状日立のみが製品を出しているロータリー式の最新式シェーバーが登場しました
- 外観は多少安っぽく見え、周辺機器(充電台)等の完成度も低いです
- 一方、製品本体の性能は高く、肌に優しくかつ深ぞりが出来ます(但し、スピードは劣る)
また、この製品はこんな人に買いだと思います。
- 肌が弱いのに髭が濃い人
- あご裏の癖毛が少ない人
- 多少であれば、髭剃りに時間がかかっても良い人
- シェーバーにデザイン性を求めない人
- T字カミソリから電気シェーバーに乗り換えようと思っている人
金額的にも、当初の3万円から発売後1ヶ月経たない段階で2万円台前半になっており、買いやすくなっています。電気シェーバーのフラッグシップ機だということを考えれば、お買い得だと思います。
ちなみに私は、急いでいるときは仕上がりの早いラムダッシュを、早く家に帰れるときは肌に優しいフィリップスを、遅くまで予定があるときは深ぞりが出来るロータリーシェーバーと言うふうに使い分けています。