スーツやジャケット、コートの手入れに欠かせない洋服ブラシ。
先日、友人と「ブラシの平野」の展示即売会に出かけたのですが、運良く販売員の方と洋服ブラシの手入れについてディスカッションする機会がありました。
そこで今回は、洋服ブラシの手入れは必要か、手入れをすると何がどう良くなるのか、どのなやり方/頻度でやれば良いか……等々について、考えてみたいと思います。
0.洋服ブラシの役割
※ はじめに、洋服ブラシの役割について整理します。ご存知の方は読み飛ばして下さい。
洋服ブラシには、概ね2つの役割があります。
① 服のホコリや花粉を落とし、生地を綺麗に保つ
外から帰ってきた際、着ていたスーツ、ジャケット、コートなどは、綺麗に見えてもホコリや(時季によっては)花粉がついています。
ホコリや花粉を家に持ち込まないようにすることはもちろんですが、土ボコリなどPhによってはスーツ生地を傷めることもあります。さらに、カビや虫喰いの原因になることも。
ブラッシングによってそれら取り除き、生地を綺麗に保つことが役割の1つめです。
② 生地の毛並みを整え、毛玉を防止し、綺麗に見せる
2つめは、生地の毛並みを整え、毛玉を防止し、綺麗に見せることです。
道が舗装されていない時代では、前項①がブラッシングの主目的でした。しかし、現代ではこちらの役割が大きいかも知れません(とはいえ、花粉症の方は今でも①が重要ですね^^;)。
冬用に多い、毛足の長い生地の服や、マフラーなどは、使っているうち毛並みが乱れていきます。
毛並みが乱れると見た目が悪くなるばかりか、放置すると繊維が絡まって毛玉の原因にもなります。
ブラッシングによって、毛並みを整え、延いては毛玉を防止することができます。良いブラシを使って実際にやってみると、本当に綺麗になります。
なお、毛玉取り器を使うと生地がどんどん痩せていくので、出来れば使わない方がいいです。
カシミアやマフラーには、カシミア用ブラシを
生地の弱いカシミアなどの獣毛は、「カシミア用」「カシミア対応」の表記があるブラシが必要です。
また、ウール素材であっても、マフラーやセーターのように柔らかく織られている素材は、同じくカシミア用ブラシがオススメです。
1.洋服ブラシの掃除をしないとどうなる?
ブラシにホコリなどが溜まり、別の服につく
ブラシは「①生地の表面や中に入り込んだホコリなどを払い」、「②生地の表面を整えて綺麗に見せる道具」であることは、前項で述べたとおりです。
①のホコリを払う際、その多くは下に落ちるのですが、実はブラシにも相当溜まっていきます。
ある程度はブラシに蓄積できるのですが、溜まりすぎると別の洋服をブラッシングした際に、少しずつ出てきて服についてしまうそう。
これでは、なんのためにブラッシングしているのか分かりませんよね……。
服の繊維が別の服につく
また、生地をブラッシングすることで、服の繊維も同時にブラシに蓄積されていきます。
細かい繊維ですが、溜まると別の服をブラッシングした際に出てきて、服についてしまいます。
私も掃除を怠った際、実際に遭遇したことがあり、難儀しました^^;(礼装コートの黒いカシミア生地をブラッシングしていたら、なぜか目立つ淡色の繊維屑が……。あれ、取れにくいんですよね。)
また、生地の繊維が溜まることで、その繊維の間にホコリも溜まりやすくなるという相乗効果も生まれるようです。
ブラシの寿命が縮まる
ホコリや繊維がブラシに溜まっていくと、当然カビや雑菌の繁殖原因にもなります。
天然毛を使っているブラシの場合、寿命が縮まる原因にもなるそうで、高いブラシをお使いの方は注意したいところです。
2.洋服ブラシの手入れを実際にやってみる
用意する物
基本的に、用意するのは金クシのみです。
今回は、家にあったこちらの金クシを使います。
ただ、もし今から買うのであれば、クシの密度が2種類(両目)になっているものを買うと良いです(理由は後述)。
あると良い物
絶対に必要、というわけではありませんが、掃除中にホコリや繊維屑がけっこう飛び散るため、以下も用意すると快適に作業出来ます。
- 下に敷く物(新聞紙や包装紙)
- 空気清浄機
- マスク
- 掃除機
生け贄
なお、今回用意したのは、7年前に購入した「ブラシの平野 手植え水雷型」です。
一見、あまり汚れているようには見えませんが……。
作業の流れ/実際にやってみる
では、早速やっていきます。作業は簡単で、次の通りです。
- 金クシを使い外側からブラシの毛をほぐす(少しずつ、優しくブラシをかける)
- ブラシ表面にホコリや繊維屑を浮かせる(深めにブラシをかける)
- 表面の繊維屑を取る
- ブラシ全体を払う
それでは、実際にやってみます。
i. 金クシを使い外側からブラシの毛をほぐす
まずは、ブラシの外周部からクシを入れ、毛並みを整えながら優しくほぐしていきます。
ブラシが傷むため、決して強くしてはいけません。
コツは、最初は外側から浅くクシを入れ、優しく動かすこと。
しばらく手入れしていないブラシや、毛並みが長く密度の高い高級品は、ほぐすのに少し時間がかかると思いますが根気よくやります。
なお、粗い目と細い目の両方がついている両目の金クシを使っている場合、粗い目を使うと良いです。
ii. ブラシ表面にホコリや繊維屑を浮かせる
クシ通りが良くなったら深めにクシをいれ、ブラシの表面(ブラッシングする面)にホコリや繊維屑を浮かせていきます。
このとき金クシをみると、この段階でも結構引っかかっています。
汚れがブラシの中に入ってしまわないよう、クシを通している最中も、溜まったら次の工程を待たずに、手で拭うと良いです(簡単に取れます)。
なお、両目の金クシを使っている場合は、最初のうちは太い目で、次に細い目でやります。
iii. 表面の繊維屑を取る
続いて、表面に出てきた繊維屑をブラシですくっていきます。(両目の場合は細い方でやります。)
沢山とれました……。
写真では見えませんが、敷いた包装紙にはザラザラとしたホコリも沢山出ていました。
これが別の服についていたらと思うと……やはり手入れは重要ですね。
iv. ブラシ全体を払う
最後に、屋外でブラシ全体を払って完成です。
もう1本やってみる
以前使っていたKENTのブラシも手入れしてみます。
カシミアには対応していませんが、5千円以下で購入できるので、スーツ用としてブラシ初心者の方にはオススメです。
あまり汚れているようには見えませんが……。
こんなにとれました^^;
3.洋服ブラシを手入れする頻度
それでは、洋服ブラシを手入れする頻度はどのくらいが良いのでしょうか?
理想は2週間に1回だが……
「ブラシの平野」のスタッフによると、手入れを簡単にかつ短時間で済ませるためにも、2週間に1回の高頻度で掃除した方がよいとのことでした。(長期間掃除しないと、ホコリや繊維屑が溜まることに加え、ブラシの毛をほぐすのに時間がかかるとのこと。)
ただ、個人的にはその頻度だと多すぎて最終的にやらなくなってしまうこと、金クシを通すことでもブラシは傷むため、2ヶ月に1回でも十分ではと思いました。(私はそれくらいの頻度でやっています。)
そう申し上げると、2週間に1回はあくまで理想で、その程度でも問題無いが、定期的にやることが重要だと仰っていました。
花粉症が酷い場合
ただし、花粉症が酷い場合は、ブラシに花粉を溜めないよう、季節によって2週間に1回くらいの頻度が良さそうです。
その際の手入れは、軒先やベランダなど屋外で行ったり、屋内の場合は空気清浄機を掛けつつやったりと、花粉が家の中で散らばらない工夫をすると良いでしょう。
4.まとめ
長くなったのでまとめます。
- 洋服ブラシは、服地の表面や中に入り込んだホコリ/花粉などを払い、毛並みを整え服の生地を綺麗に見せるために重要な道具
- 洋服ブラシを長期間掃除しないと、ホコリや繊維くずがブラシに溜まり、他の服についたり、ブラシの寿命を縮める
- 洋服ブラシの手入れは、金クシを用いて簡単にできる
- 手入れの理想は2週間に1回だが、生活スタイルに合わせ出来る頻度で定期的に清掃することが重要
私が持っている「ブラシの平野・手植え水雷型」は、今から7年前に購入したものです。2万円以上しますが、使いやすく、(毛足が長く面が広いため)効率的で、しかもヘビーユースしているのにいっこうにヘタりません。
ブラシはそうそう買い換えるものではありませんし、毎日使う物です。多少高くても自分の気に入った、使いやすいものを買うのが良く、そして手入れして長く使い続けることが重要だと思いました。