スーツの数が増えてくると、1シーズンに1回のクリーニングでも、結構な量になってきます。
特に、夏場などオフィスでジャケットを羽織る機会が減ってくると、ジャケットを傷めないためにも、
トラウザーズ(ズボン)だけをクリーニングしたいという欲求に駆られるのですが……
原則論からすると、スーツは上下同時にクリーニングすべきです。
というのは、クリーニングによってスーツの色は思ったより脱色されるからです。
別々にクリーニングをすると、上下の色が違う! なんて、オチになります。
ただ、やっぱり回数は減らしたい、という声がありましょうから、
今回はちょっと工夫を加えたスーツのクリーニングについて考えてみようと思います。
結論から言うと、あまり着る機会の無いジャケットのクリーニングを、効率的かつ無理なく減らす方法は、以下の2つに限定されてくるでしょう。
1.「2パンツスーツ」にする
2.「ブロークンスーツ」にする
それぞれ、見ていきましょう。
■「2パンツスーツ」でクリーニング回数を減らす
本サイトでも、コストパフォーマンスが高い方式として、スペアトラウザーズを用意する通称「2パンツスーツ」をお薦めしてきました。スーツは多くの場合、酷使されやすいトラウザーズ(パンツ)からだめになってくるからです。(2パンツにすることで、負荷を分散できます。)
それでは、2パンツスーツを着ている場合、
どの様なクリーニング方法にすると回数を減らせるのでしょうか。
これは、前回ご紹介した衣替えパターンのうち、
「4.混合(合い服を年2回の衣替えに分けてクリーニングする方式)」の絵を改造した物です。
ですから、真冬と真夏は着用しない絵になっています。
文章で説明すると分かりづらいので、箇条書きで手順を示します。
※ スタートは「秋」の▼部分です。
1.まず、2本のトラウザーズに、それぞれ印をつけます。トラウザーズの尻ポケットにあるタグに、それぞれ「A」と「B」とPROCKEYなどの安全なペンでしるしをつけて下さい。
2.秋から春にかけては、ジャケット+トラウザーズAを着ます。
3.春の衣替えの時期になったら、トラウザーズAだけをクリーニングに出します。
4.春から秋にかけては、ジャケット+トラウザーズBを着ます。
5.秋の衣替えの時期になったら、ジャケットとトラウザーズB両方をクリーニングに出します。
6.→2番へ
非常に簡単な方法ですが、これでクリーニングの回数を大幅に減らすことが出来ます。
ここで、ジャケットのクリーニング回数を減らしても大丈夫か、という声が聞こえそうです。
実は、デスクワークが中心の方にとっては、そんなにクリーニングは必要有りません。
以下を理由として、大丈夫と判断します。
・トラウザーズは直接肌に触れるが、ジャケットはシャツを挟むので、肌には触れない。
・ジャケットの表地のホコリ等は着用後のブラッシングである程度綺麗に保つことが可能。
・食事やタバコの臭いがついた場合は、シワがついた場合はハンディスチーマー※記事で対処可能。
→ 従って、トラウザーズは12回に1回、ジャケットは24回に1回のクリーニングは妥当。(週1回の着用で月4回、夏と冬の計6ヶ月は着用しないとする)
■「ブロークンスーツ」でクリーニング回数を減らす
ブロークンスーツとは、スーツをスーツでなくすこと。
スーツとは「揃いの」などという意味ですから、要は上下を別々に用いてしまうと言うことです。
先の項目でも述べたとおり、ジャケットの汚れはトラウザーズに比べ軽いのですが、
だったらそのスーツの上着を、ジャケットパンツのジャケットにしてしまえ、と言う発想です。
そこで、ジャケット単品でも使える上着とはどの様な物か考えてみましょう。
以下、それぞれ要件レベルを A:必須 B:のぞましい C:あればよい としました。
・【A】着丈が短め:着丈が短いと、スーツの上着然としてしまいます
・【B】ナットボタンを使う:あからさまな水牛ボタンは上着臭がします
・【B】あまり細番手の生地を使わない:光沢がある生地は、単品使いで浮いてしまいます
・【C】ボタンを明るい色にする:明るい色は、ジャケットと認識されやすくなります
・【C】裏地を明るい色にする:上と同じです
そして、一番重要なのは、合わせるトラウザーズをよく見定めることです。
生地はなるべく同じ織り方のもの、質感の物を合わせ、色にも気を遣って下さい。
そこで、おすすめのブロークンスーツを考えてみました。
この要件のスーツを吊し(既製服)で探すことは難しいですから、
パターンオーダーかイージーオーダーあたりで安く仕立てると良いと思います。
・2つボタンで茶色のナットボタン
・生地は紺のシャリ感が強い、ざらざらとしたもの
・裏地(ライニング)は水色か銀色
・着丈はスーツの時より1cm程度短く
・背はベント(シングルベント)に
・パッドや毛芯は少なめ(柔らかく)で、フロントカットは広めに
・トラウザーズはワンタックもしくはノータック、そして細身のハーフクッション
これで、上着を活動的なジャケットとして使うことが出来、スーツとしても違和感なく利用できます。
トラウザーズについても、上にグレー無地のジャケットなどを持ってくれば、
こちらもジャケットパンツとしておしゃれに着こなすことが出来ると思います。
はやくクリーニング本番のレビューを書かなくてはと思いつつ、前回の続きを書いてしまいました。
ちなみに、クリーニングで一番色落ちが激しいのが「麻」です。
麻の染色は非常に難しく、かつ色落ちが激しいのです。
とくに、紺麻のスーツ。
非常に美しい光沢と色合いがあるのですが、
1回クリーニングしただけで……。 でも生成りなら味が出て……。
はっ! 麻のスーツの話題を書きたくなってきました(マテ
それではまた。