腕時計

スプリングドライブ腕時計のメリットとデメリット

投稿日:平成31年(2019) 2月17日

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皆さんは「スプリングドライブ」をご存知でしょうか。

機械式とクオーツ式のいいとこ取りをした、セイコーが独自開発する腕時計のしくみで、個人的に気に入っているムーブメントです。

しかし先日、職場の同僚とこのスプリングドライブについて話をした際、「いいとこ取り」といってもやはりデメリットもあるよねと、いくつか気づきがあったので今回記事にしてみました。

スプリングドライブに興味のある方、購入を検討している方の参考になれば幸いです。

1.簡単なスプリングドライブの解説

本題に入る前に、「スプリングドライブって何?」という方向けに、概要を整理します。

機械式とクオーツ式

腕時計は、ゼンマイの力で動き、回転する振り子で時を刻む「機械式」と、電池の力で動き、水晶の発振によって時を刻む「クオーツ式」の2つに大きく分かれます。

そして今回取り上げるスプリングドライブは、機械式と同じくゼンマイを原動力とし、クオーツ式と同じく水晶で時を刻む仕組みです。

ハイブリッドでいいとこ取り

スプリングドライブは、ゼンマイを原動力としているため電池は不要ですし、太い針もスムーズに動かすことができます。

また、水晶で時を刻むため、月差15秒程度と機械式では難しい高精度を実現します。

このように、機械式とクオーツ式のハイブリッドとして、いいとこ取りをしているわけです。

※さらに詳しい仕組みは、メーカー(セイコー)の公式サイトをご覧下さい。

スプリングドライブ30周年

スプリングドライブが誕生したのは、セイコーによると平成11年(1999年)のこと。今年でちょうど30周年に当たるわけですね。

今では「嫌味の無いビジネス向け高級時計」「通好みの本格時計」として一部で熱狂的なファンが存在する(?)グランドセイコーを中心に、セイコーの各ブランドに少しずつ展開されています。

 

2.スプリングドライブ、5つのメリット

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それでは次に、スプリングドライブのメリットについて見ていきます。

メリット1:完璧なスイープ運針

一つ目のメリットは、流れるように動く、滑らかすぎる完璧な運針です。

スイープ運針とステップ運針

スイープ運針とは、機械式時計の様に、秒針が滑らかに動くことをいいます。

一方でクオーツ時計は、カチッカチッと1秒おきに動き、これをステップ運針と言います。

機械式時計が好まれる理由の一つに、この滑らかに動くスイープ運針があるのですが(少なくとも私は大好きです)、スプリングドライブはこの機械式時計をも超える滑らかな運針を実現しています。

機械式のスイープ運針は、細かいステップ

スイープ運針といわれる機械式時計。遠目にはスーッと動いているように見えますが、実はよく見ると秒針がチチチチチ……と細かくステップを刻んでいます。(セイコーでは「ビート運針」と表現しています。)

これは、細かく刻むステップの早さで、時計の進みや遅れを調節しているためで、仕組み上やむを得ません。

一方でスプリングドライブは、回転に直接ブレーキを掛けることで針の速度を調節しているため、完璧なスイープ運針を実現しています。

エレガントな秒針

運針がステップか、ビートか、スイープのどれが良いかというのは好みの話ですが、個人的にはこのスムーズなスイープ運針はエレガントで大好きです。

メリット2:正確に刻まれる時刻

二つ目のメリットは、クオーツ時計並の精度が出ることです。

日差か月差か

機械式時計の精度を表す際に「日差○秒」という言い方をします。つまり、毎日数秒~数十秒ズレるのです。

一方でクオーツ式は、通常「月差○秒」と記載されることからも分かるとおり、その差は歴然です。

さすがに年差クオーツレベルには達しませんが、スプリングドライブは一般的なクオーツ時計に匹敵する精度が出ます。

ビジネスに必要な正確さ?

ただ、「この正確さは本当に必要か」ということは、一度考えておくべきでしょう。

毎日時計を合わせる習慣がある方や、業務上も数分の狂いは気にしないという場合は、オーバースペックになるからです。

とはいえ、(私を含む)「几帳面なくせに面倒くさがり」という方には大変有難い性能です。

メリット3:美しい針

三つ目は、立体的で太く美しい針を動かせるという点です。

ゼンマイの力で太い針を動かす

クオーツ時計には、機械式に比べて太い針を動かしづらいという欠点があります。

各社ともトルクが出るように改良を進めおり、その差は縮まっているとはいえ、比較するとやはり機械式の方が立派な針を採用していることが多いです。

スプリングドライブも動力は機械式と同じゼンマイであるため、デザイン性に優れた太い針を動かすことが可能です。

メリット4:独自機構としての満足感

四つ目は――自己満足です^^;

オリジナル性、稀少性が好きな方に

(一社)日本時計協会によると、わが国の腕時計総出荷数の96%がクオーツ式(H30年の値)とのこと(魚拓)。雑誌やWEBの記事を読むと当たり前のように機械式時計が登場しますが、一般的には大半の腕時計がクオーツ式ということが分かります。

その稀少な機械式の中でもさらに特殊なのが、スプリングドライブというわけです。

日本の(というかセイコーの)独自技術で作られ、オリジナル性満点。こういう感覚が好きな方には、まさに魅力的な選択肢です。

メリット5:無音

五つ目は、神経質な人にお勧めな、動作に音がしないという点です。

人により気になる動作音

機械式時計のチチチチチ……という動作音が気になる、という方がいます。

私はむしろ好きなほうですが「誰もいない部屋で集中しているときにとても気になる。一度気にしはじめると大変」という知人がいます。

スプリングドライブは、こういった音が全く出ないため、時計の音が気になる方にはメリットになると思います。

 

3.スプリングドライブ、5つのデメリット

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メリットがあればデメリットもあります。

デメリット1:高コスト

一つ目はコストの観点です。

高い初期費用

機械式という父とクオーツ式という母から生まれたスプリングドライブは、高コストという父方のデメリットを受け継ぐことになりました。

これは、部品点数やギミックの多さ、生産数の少なさ等々から、仕方が無いことでしょう。(一方でこの高コストがメリットに挙げた「稀少性」を産んでいるという皮肉もあります^^;)

なお、グランドセイコーの場合価格は機械式と同じくらいですが、機械式におけるプレサージュのように安価なラインナップは用意されていません。

ランニングも高い

見逃しがちなのがランニングコストです。

腕時計におけるランニングコストとは、主にオーバーホール(メンテナンス)と故障時の修理費用です。

そのうち、オーバーホールはいくら丁寧に扱っていても絶対に必要になるものですが、セイコー公式の料金を比較すると機械式が4万7千円に対し、スプリングドライブは5万2千円と1割以上も高い値付けになっています(記事初出時)。

また、基本的にスプリングドライブは街の安価な時計店ではオーバーホールができない(後ほど詳述します)ため、その点もランニングコストに大きく跳ねます。

デメリット2:種類が少ない

二つ目は、時計の選択肢が少ないという点です。

数自体が少ない

まず、セイコーの商品検索サイト(SEIKOブランドの製品が検索できます。グランドセイコーやクレドール等は対象外。)で確認してみます。その結果、全492アイテムのうち、機械式は94アイテム、スプリングドライブは僅か3アイテムしかありませんでした。

次に、スプリングドライブ推しのグランドセイコーの検索サイトでも確認してみます。

その結果、それでもクオーツ式が108アイテム、機械式は59アイテムに対し、スプリングドライブは47アイテムでした。

また、前述したとおり安価なラインナップが無いこともデメリットの一つでしょう。

デメリット3:比較的厚みがある

三つ目は製品の厚みです。

標準的な自動巻きは分厚い

現行のグランドセイコーのスプリングドライブモデルは、そのほとんどが自動巻きなのですが、かなりゴツイです。

大きめの時計は近年の流行(といっても揺り戻しが既に来てはいますが)とはいえ、クラシカル好きからするとビジネスモデルではなくスポーツモデルに見えてしまうほどです。

若干薄い手巻きのモデルがあるものの、グランドセイコーでは超高価格(定価4百万円超え)の物しか無く、クレドール等セイコーの別ブランドから選ぶ必要があります。

分厚いと何が悪い?

もちろん、ON/OFF兼用としては使い勝手の良い厚めの腕時計ですが、例えば小柄な方や腕が細い方、シャツの袖をしっかりジャケットの袖から見せたい方、クラシカルな雰囲気がお好きな方にとってはデメリットでしかありません。

デメリット4:保守はメーカー頼り

四つ目は保守ルートの問題です。

電子部品は職人には作れない

機械式時計のメリットの一つに、半永久的に修理しつつ動作可能という点があります。

壊れたり劣化したとしても、さらにメーカーから部品供給が無くなったとしても、(場所を選び値は張りますが)優秀な時計職人がいれば部品を自作しつつ修理できてしまう、ということです。

しかし、クオーツ式に代表される電子部品は、時計職人には作ることができないため、どうしても保守はメーカー頼りになります。

部品摩耗も激しくメーカー修理推奨

電子部品が故障していない場合でも、複数の時計職人に訊いたところ「メーカー純正修理がオススメ」という回答が返ってきました。

これは、強力なモーターにより部品の摩耗が大きく、かつ傷む箇所も多いため、部品交換が多数必要になるからだそうです。

電子部品の劣化や故障等も考慮すると、スプリングドライブの保守は高価なメーカー純正を選ばざるを得ないようですね……。

(つまり、メーカーが部品供給を止めたり、最悪倒産した場合、修理ができなくなるというクオーツ式と同じ運命を背負っているとも言えます。)

デメリット5:無音

五つ目は、メリットでもあった「無音」です。

「鼓動」が無い

機械式時計のチチチチチ……という音は、時計の象徴であって、時計が「生きている」証拠だという考えもあります。

つまり、駆動音を時計の「味」だと考える人にとって、スプリングドライブの「無音」はデメリットでしかないでしょう。

いわば、ガソリンエンジンの振動が好きな方にとって、電気自動車が味気ないと感じるのと同じですね。

 

4.まとめ

長くなったのでメリデメをまとめておきます。

メリット

  1. 完璧なスイープ運針
  2. 正確に刻まれる時刻
  3. 美しい針
  4. 独自機構としての満足感
  5. 無音

デメリット

  1. 高コスト
  2. 種類が少ない
  3. 比較的厚みがある
  4. 保守はメーカー頼り
  5. 無音

 

5.スプリングドライブとの付き合い

最後に、私個人のスプリングドライブに対する感想を書きます。

冒頭に述べたとおり、個人的にはスプリングドライブは好きです。厚手のグランドセイコーと薄手のクレドール2本を使い分けています。

気に入った点はメリットで挙げた通りなのですが、一番のポイントを要約すると「スイープ運針なのに毎日時計合わせをしなくて良い」ということです。

つまり、機械式時計の特権であるスイープ運針を実現しているのにもかかわらず、手間がかからないという点で、以前は「スプリングドライブ最強」と考えていたことも^^;

そのメリットは本当に必要なのか

ただ、最近感じるようになったのは、本当に秒単位の正確さが日々の生活や業務で必要なのかという疑問です。

もちろん、時間的正確さが要求される仕事もありますが、一般的なサラリーマンにとって、それが毎日発生するイベントなのかとも思います。

また、やはり自分は機械式時計のチチチチチ……という音が好き、ということも最近自覚してきました。

そうした中、冒頭の同僚との議論もあり、メリットもあればデメリットもあるという、スプリングドライブを少し客観的な視点から見るようになりました。

適材適所

現在は、正確な時間が要求される場合には電波時計か年差クオーツを、普段やファッション重視の場合は機械式をと使い分けつつ、その中間的な存在としてスプリングドライブを位置づけるようになりました。

出番の頻度は以前と変わりませんが、これ以上買い足すかといえば、プライオリティは下がっています。

つまり、何日間も時刻合わせをせずぶっ通しで使え重宝するが、デザインも限られるし1~2本あれば十分かなぁ……という存在です。

靴に例えると「ガラス靴」(パテントレザー)に近いですかね。メンテナンスが楽で、機能性も高く、着用シーンの汎用性もあるが、寿命はそんなに長くなくて、デザインも少なく、それで全部揃えようとは思わない(1~2足あれば十分)、という感じでしょうか^^;

それでも、今もし1本もスプリングドライブの時計を持っていなかったとしたら、多分欲しくなると思います。スプリングドライブとは、そんな不思議な魅力がある時計です。

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