イージーオーダー(EO)の店にはどの様な店があるのかをご紹介するエントリーの第2弾です。
前回までに、上記5つに店の種類を分類した上で、Bまでご紹介しました。
今回は、引き続いてCの百貨店からご紹介したいと思います。
C. 百貨店
百貨店の多くが元々呉服屋でした。つまり、服屋だったわけです。
ですから、百貨店に入っている特定のブランド以外にも、百貨店そのものがイージーオーダー(あるいはパターンオーダー)を展開していることが多いです。
百貨店でスーツをオーダーするメリット
接客は上手です。
Aの大規模チェーン店などでは、未だに接客が「?」な店も多いのですが、百貨店だけは、そういった教育はしっかりしています。
また、セール限定ですが、意外にも価格面でリーズナブルなことが多いです。
日本の百貨店において紳士服を購入するのは、着用者の妻という伝統があるからでしょうか^^;
デフレ不景気が続いて20年以上経ち、大規模チェーン店顔負けの価格で入手することが出来ます。(吊し中心ではありますが、松屋銀座の「男市」なんかは有名ですよね)
百貨店でスーツをオーダーするデメリット
どこの店舗も共通しているのが、店員の伎倆(技量)にばらつきがあることです。
百貨店でイージーオーダーをする場合にはセールが狙い目なのですが、
そういうときは店員に他フロアからの応援がかなり混ざるので、当たり外れが大きくなります。
ですから、ある程度自分で生地やディテールの要求を言えるような場合(経験があり、かつ作る服のイメージが固まっている場合)なら良いのですが、そうでない場合はあまりお薦めできません。
勿論、セール時を除けば店員の質は良いのでしょうが、価格面で優位性が無くなります。
百貨店のレビュー
上記の理由から、2店舗程度しか利用したことが無いので、あまり詳しいレビューを書く事が出来ません。
その少ない経験から言うと、新宿伊勢丹(イセタンメンズ)と松屋銀座あたりが良いと思います。値段的には伊勢丹の方が高いですが、高いなりにセンス(と流行性)は上だと思います。コストパフォーマンス重視なら、松屋銀座のセールが狙い目でしょう。
D. 工場直営店
従来、服はテーラー自らが、あるいはテーラーと契約した職人たちが作っていましたが、近年は注文紳士服市場の縮退に伴って、工場へ外注することが多くなっていると、項目Bで先述しました。
その、外注先自らが、ファクトリーブランドとしてEOやパターンオーダー(PO)を扱う場合があります。
工場直営店でスーツをオーダーするメリット
なんといっても、コストパフォーマンスの高さです。
店舗の中間マージンや経費が乗っていない状態で、服をEO、あるいはPO出来るのは魅力的です。
工場直営店でスーツをオーダーするデメリット
一方で、デザイン面(生地やディテール選び)について、見劣りする面があります。
「服を作る」という行為は、服をデザインすることとイコールです。型紙や縫製は問題ないのですが、細かい提案は期待するのは酷です。むしろ、その部分が店舗の中間マージンへの対価なのだと思います。
工場直営店のレビュー
すみません。こちらも2店舗程度しか利用実績が無いので、詳細なレビューは控えます。
工場直営店を利用する場合、狙い目は業界の閑散期でしょう。
工場によって若干異なりますが、2-3月と9-10月が各テーラーからの発注が少なくなるので、セールをする場合が多いようです。
E. その他
セレクトショップでのスーツオーダー所感
その他にセレクトショップを入れて良い物か迷いましたが、基本的にセレクトショップでイージーオーダーするのは得策では無いと考えています。(扱っていないところもあります)
セレクトショップの役割は、国内外の優良なブランドの商品を仕入れ、顧客に提案することであって、基本的に吊し(既製服)が前提になっている業態だからです。もちろん、国内外の優良な生地を仕入れ……に置き換えることも可能で、実際にやっている店舗もありますが、あまり良いとは思いません。
セレクトショップに豊富な生地(現物)があるでしょうか? 様々な商品を陳列する必要のあるセレクトショップにその余裕は無く、あって少量のバンチ(小さくカットされた生地見本)でしょう。
また、オーダーに力を入れている店舗以外では、店員にテーラーリングの知識があるかというと、あまり期待できません。従って、セレクトショップについてはデメリットが多い状態で、メリットを強いて言えば「そう悪い生地は扱っていないかなぁ」くらいです。
海外通販でのスーツオーダー所感
実際にインターネット経由で、数カ国(イギリス、香港、タイ)からスーツやジャケットをオーダーしてみた経験から言うと、あまりお薦めしていません。
一番の課題はフィッティングです。スーツのフィッティングはやはり自分一人かつ遠隔での指示はとても難しいのです。
シャツの海外オーダーは、そこそこの生地で、首回りのサイズが合っており、ある程度の袖丈があればそこまで問題はないシロモノなのです。他のサイズは勿論大事ですが、致命的な問題にはなりません。しかし、ジャケットやトラウザーズ(ズボン)は違います。
また、アイロンワークの問題があります。シャツは衿さえしっかり縫製すれば(概ね)問題ないのですが、スーツは生地を切って縫い付けただけではダメです。ここがシャツとの最大の違いです。熱で生地にゆがみをつけ、体にフィットする状態にする必要があるのです(クセ取りといいます)。
そういったことを考えると、海外通販(特に価格メリットの出る中国)でスーツというのはお薦めできません。一応、食わず嫌いは良くないので2~3回試した経験がありますが、ヒドい物ではスーツの形をした別の物、といった感じでした。(スーパーのスーツかそれ以下)
勿論、丁寧な仕事をする業者は居ますが、これでは価格メリットが出なくなります。日本のイージーオーダーは牛丼と一緒でかなり価格破壊が進み、世界的にも超高コスパです。日本に住んでいることは、EOの面からいうと、かなり幸せなことかも知れません。
後半はグダグダになってしまいましたが、EOする際の、一つの情報として活用して戴ければ幸いです。
しかしこのままでは、初めての人がどの様にEOすれば良いのか、あまりお伝えできていないのではと思います。ですので、次回は「初めてEOする人が、どんな準備をして、どんな店で、どんなオーダーをすれば良いのか」の一例を、自分自信の経験を交えながら、オーダーの流れに沿って考えてみたいと思います。
EO経験者の方には退屈かも知れませんが、ご容赦戴ければ幸いです。