みなさんは、自分や自分に合う服のサイズを把握していますか?
「このメーカーならMサイズ」というようなサイズ感をお持ちの方は多いと思います。しかし、「胸回りは何センチか」と問われてすぐに答えられる方はどのくらいいるでしょう(少なくとも私の職場ではほとんどいませんでした^^;)。
この、自身や服のサイズを把握することに、実は様々なメリットがあるというのが今回のお題です。
※ 今回はスーツスタイル/ジャケパンスタイル初級者向を対象とした話題です。
1.自分の服と体のサイズを知ることのメリットとは?
服選びが格段に楽になる
スーツやジャケットなど、紳士服は既製服であってもかなり細かくサイズが分かれています。(カジュアル着ならS/M/L等の大まかなサイズ分類ですが、テーラードは身長とドロップ寸<胸囲とウェストの差>で分かれるため、より細分化されます。)
そこで、自身のヌード寸のいくつかを把握しておくことで、試着時のアタリを付けやすくなり、服選びがずいぶん楽になります。
もちろん、店員に合う服を持ってきて貰うのも手です。しかし、自身で選ぶ場合もありますし、店員の採寸にもバラツキがある(後述)ため、ぜひ把握しておきたいです。
見た目が良くなる
スーツスタイルを格好良く見せる最も手っ取り早い方法は、サイズ感の合った服を着ることです。前項の様に服選びがこなれてくると、自身に合うサイズの服を見つけやすくなります。
また、少しストイックな話ですが、好きなデザイナーやブランドの服がある場合、「体を服に合わせる」という方法が出てきます。
例えば、胸囲があと2センチあれば……とか、ウェストが2センチ細ければ……などの場合に、トレーニングや食事制限でそのブランドに自身を合わせてしまうということが出来るわけです。
「お直し」に役立つ
自身の体型が変化した場合に行う「お直し」。これにも体型や服のサイズ把握は役立ちます。
サラリーマンは、異動・昇級・転勤や転職などで執務や生活環境が変わりやすく、体重の変化が激しい職業です(少なくとも私の周りはそうです^^;)。
たとえば、体重の変化はウェストサイズに直結し、そして、サイズの合わないズボンはとても見苦しいものです。そのためか、テーラーが口を揃えて言うのが、お直しで一番多いのはズボン(米語のパンツ、英語のトラウザーズ)のウェスト周りとのこと。
そこでお薦めなのが、まずはウェストサイズだけでも把握しておくことです。
現在のウェストサイズと所有しているズボンのサイズを把握し、どのズボンにサイズの問題があり、どれを優先してお直しに出すべきかということを理解すれば、効率的に管理できるようになります。
購入時にサイズ指定が不要なオーダー服をメインにしている人の方が、かえってサイズを把握していないパターンが多いのではないかと思っていますが、どうでしょうか……?
(参考)店の趣味・傾向が分かる
ここからは蛇足ですが、サイズの把握は店(店員)の趣味や傾向を把握するツールでもあります。こちらはヌード寸ではなく、仕上がり寸のはなしです。
私がよく見ているのは、胴回り、着丈、そしてラペル幅です。
胴回り
胴回りは、比較的年齢層の高い保守的な傾向のある店では、ゆとりを多めにとることが多いです。(あとはデザインとして、アメリカンドラディショナルはゆとりが多めに感じます。)
着丈
ジャケットの着丈も似た様な傾向にありますが、軽快さやスポーティさを大切にしている店では短くなりがちに感じます。
ラペル幅
ラペル幅はジャケットの流行と密接に関わっている部位のため、流行を先取りしようとしているのか、それとも保守的なのかを知ることが出来ます。
例えば、今はスーツのラペル幅が広くなっている期間なので、保守的なら8~8.5センチ、流行に敏感な店は9センチ以上を提案して来るように感じます。とはいえ、スーツの上着なのかジャケット(替え上着)なのか、その人の体の大きさにも依るので一概には言えませんが……。
2.把握しておくべき部位(サイズ)は?
では、具体的にどの部位を把握しておけば良いのかを考えてみます。(複数のテーラーに聞いた結果と、私の独断でまとめてみました。異論はあると思いますので、是非コメントをお寄せ下さい。また、基本的に全てヌード寸の把握を前提としています。)
首回り
シャツのサイズは首回りが基準です。適切なシャツ選びの為にも、是非把握しておきたい部位です。
人にもよりますが、痩せたり太ったりしたとき、思った以上にサイズが変わる(正確に言うと、変わったことを感じやすい?)部分でもあります。
肩幅
ジャケット選びで最も重要なサイズの一つです。
ただし、僅かに狭くすることで活動的な雰囲気を、逆に広めにすることで威厳のある雰囲気を出すなど、幅があるのが面白いところです(やり過ぎはNG)。これはシャツにも共通しますね。
修理痕が残らないのお直しが難しい部位なので、スーツやジャケットを選ぶ際、一番最初に見るべきポイントでもあります。
胸回り
ジャケットの見栄えに大きく影響するのが胸回りです。
デザインにもよりますが、ある程度ボリュームがあると格好良く見えます。そして、体を鍛えることである程度なんとかなる部位でもあります。
ウェスト
ズボンを選ぶ際に重要で、また体重の変化が一番出やすい箇所がウェストです。
体重が増えた場合は「キツいな……」と気づきやすいですが、逆に減った場合は見過ごしやすいので、変化を分かるようにしておきたい部位でもあります。
その他は……?
中胴、尻周り、袖丈、着丈等々様々ありますが、これらは上の4つを上手く把握できるようになってからでも良いのではと思います。(ただし、ジャケパンメインの方は、雰囲気に大きく影響する箇所として、好みのジャケットの着丈は把握しておいて損は無いです。)
3.サイズはどうやって測る?
次に、どの様にしてサイズを知れば良いのかを考えてみましょう。
店で計った数値はメモする
慣れていない方が、自分で寸法を測るのはとても難しいです。というのも、
- どこを測るか……場所や角度が少しズレただけで、だいぶ数値が変わります
- どのように測るか……人間の体は軟らかく、力の具合でも大きく数値が変わります
- 自分で自分を測るのは難しい
という問題があるからです。ですから、基本的にはスキルのある店員に測って貰うのが一番でしょう。
店やテーラーを訪れた際に、測った数値を自分のスマホ等にメモしておき、後日参照出来るようにしておけばOKです。
最終的には数値は覚えておいた方が使いやすいですが、まずは記録をとるところから始めます。
時系列で比較する
そして、次に行うのは時系列での比較です。
ウェスト、胸回りや尻周り、首回りの順で変化が激しいと思います(ただし、体質や痩せ方/太り方に依ります)。
これらを定期的に把握することで、似合う服を考えたり、修理の要否を確認することが出来ます。
なお、体重があまり変わらなかったとしても、体型は変化することがあるので注意します。(例:胸や尻の筋肉が落ちて、腹に脂肪がつく等。)
また、正確に比較するためには、似た様な厚さのシャツ・ズボンを着て、かつ同じ店員に測って貰った方がよいです(後述)。
他の店と比較する
慣れてくると面白いのが、店や店員同士の結果を比較することです。
「スキルのある店員に測って貰うのが一番」と言いましたが、実は店員が変わると採寸が数センチ違う……なんてことはザラにあります。
私自身も、何回も経験しています^^;
仮縫いを行わないイージーオーダーでは、その差が仕上がりへ大きく影響するため、注意して観察すると良いでしょう。
4.おわりに
(ここまで書いておいてアレですが)スーツやジャケットを購入するとき、一番大事なのはサイズの把握――では無く試着です。
しかし、効率よく試着し、そして適切にお直しするためには、自分のサイズを把握しておくことはとても有利に働きます。
また、自分のサイズ感の好みを見つけたり、ブランドや店同士を比較する際にも、「サイズ」は便利なツールです。
身長・体重・S/M/Lしか興味が無かった方も、ぜひ自身や服の寸法に興味を持ってもらえれば、と思います。
★お詫び★
来週と再来週は、業務繁忙で更新が不定期(または更新無し)になりそうです。。。