久々の靴ネタです。しかも、あまり日の当たらない「コバインキ」について。
靴クリームや靴墨を持っていても、所有率の少ないコバインキが今回のお題です。
コバインキとは、革靴底(レザーアウトソール)の側面部分(コバ)に塗る塗料のこと。色が抜けたときなど、再染色を施すための染料です(一部顔料タイプもある)。
マイナーなメンテグッズなので、小さな靴屋では取り扱っていないことがあります。
なんとなく用語解説【コバ】:そもそもコバってあまり聞き慣れない言葉ですが、行きつけの靴屋によると、「木端」が語源だとか。木端は文字通り木の切れ端ですが、積み重ねた革の切断面が同様に見えるため、木端→コバとなったようです。コパじゃありません。
そんなコバインキですが、どのくらい効果が有るのか、どうやって使えば良いかを考えてみたいと思います。
使い方――の前に
コイツがコバインキ(BootBlack エッヂカラー 革コバインキ)です。
写真はBoot Blackブランドですが、中身は製造元でもあるコロンブスのコバインキとあまり違いは無い模様。(間違ってたら教えて下さい)
蓋を開けるとこんな感じ。蓋に棒がついており、その先がスポンジ状になっています。
このスポンジを使って、直接コバへ塗料を塗っていくわけです。
使い方 1.事前準備
コバインキを単体でつかっても良いのですが、出来れば今回のように、靴磨きのタイミングと合わせて使ってあげると良いと思います。
重複する工程もありますし、よりコバが強く光るようになります。
さて、今回の被験体はこちら。 ブダペストのVASS製、パンチドキャップトゥです。
購入して2年くらいしか経っていないのですが、コバの部分がすこし禿げてきてしまいました。
まず用意したのは3つのブラシ。左から、靴底用、コバ用、アッパー用のブラシです。
通常はアッパー用だけでも良いのですが、コバの汚れをしっかりと落とすために用意しました。
ソールについた泥汚れを一番左のナイロンブラシで、続いてコバ部分を真ん中のブラシで、最後にアッパーを右の馬毛ブラシで擦り、綺麗にします。
続いて、collonil ユニクリーム(写真右)を使って、靴に塗られた古いワックスを落としてゆきます。
布を手に巻き付け、ユニクリームを若干とり、甲革→コバの順に優しく擦ります。先にコバを擦ると、コバについた砂利で甲革を傷つける恐れがあるので、注意して下さい。
2~3回で綺麗に落ちるはずですので、終わったらアッパー(甲革)に保革用のローション(左、サフィール ユニバーサルレザーローション)を塗って下さい。なお、今回はワックスを落としやすいように、ステインリムーバーではなく、ユニクリームを使いました。
使い方 2.コバインキの上手な塗り方
そしてお待ちかね、コバインキの登場です。
ヒール部分を含む、ソールの縁に、コバインキを附属スポンジで塗っていきます。
このとき、上手く塗るためにいくつかコツがあるので参考にして下さい。
A. アッパーに近い部分を先に塗る
絵を描く人はご存じだと思いますが――はみ出したくない部分との境界を先に塗ってから、そのほかの部分を塗ると、はみ出さずに上手く塗ることが出来ます。
つまり、アッパー(甲革)に近い上の部分を慎重に塗ってから、ムラが出ないように地面に近い部分を一気に塗り上げると、上手くぬれます。
B. 余計なインクを切ってから塗る
スポンジはかなりのインクを吸っているので、取り出していきなり塗り始めると必ず液だれします。
ビンの縁や内側にスポンジをこすりつけ、ある程度インクを切ってから塗るようにして下さい。
C. 蓋を下にして塗る
これも液だれ防止のテクニックです。
万一液だれしたときでも、蓋を下にして塗れば、液が垂れる先は靴ではなく蓋になります。
そうして塗ったのが上の写真です。塗布前の写真(下;再掲)と比べると、接地部分がくっきりしたのが分かると思います。
コバインキを塗り終わったら、インクが他につかないようにして乾燥させて下さい。
インクが完全に乾いたら、次の工程に進みます。
使い方 3.コバインキを塗った後どうする
今回は通常の手入れも兼ねていますので、靴クリームを塗り、さらにワックスを塗って磨く工程に入るのですが、コバインキを塗った部分も、一手間加えるとなお良くなります。
というのも、コバインキは基本的に水性なので、水に濡れると色落ちしてしまいます。
そこで、上から油性の靴墨(ワックス)を塗っていきます。
※ コバインキが乾いたのを確認してから、塗って下さい。
今回はこちら。サフィールの油性靴クリームを使いました。
歯ブラシをつかって、コバ部分にこいつを塗り込んでいきます。歯ブラシを使うのは、コバの上部――ウエルトの糸や起伏部分にも塗り込むからです。
そして、いつも通り乳化性クリームとワックスを使って、アッパー部分を磨きます。
何度か本サイトでもやり方を紹介していますが、念のため簡単に書いておきます。
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- 乳化性クリームをアッパーに塗った後、10分ほど放置(油分をしみこませませる)
← 片足ずつ順番に作業すると、待ち時間なくシームレスになります - 豚毛ブラシを使ってブラッシング、必要に応じてストッキングで磨く
- トウ(つま先)と小指側側面、かかと部分に油性ワックスを塗り込む
- 水で若干湿らせた布きれで磨く
- コバの部分も、布きれかストッキングで磨く
← 通常は、油性ワックスを塗る工程が入りますが、今回は事前に塗っているので飛ばします
- 乳化性クリームをアッパーに塗った後、10分ほど放置(油分をしみこませませる)
で、出来上がったのが上の写真です。最初の写真(下;再掲)と比べると、一目瞭然です。
全体だとこんな感じになりました。
※ この靴はパーティー用途なので、若干強めに光らせています。
※ オフィスワーク用の場合は、もう少しワックスの量を減らしても良いと思います。
まとめ
長くなったので、まとめてみます。
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- コバインキとは、靴底側面(コバ)の補色を行うインキのこと
- ブラシやクリーナークリームで泥や汚れを落としてから使用する
- 液だれを防ぐため、余分なインキを切り、蓋を下にして、アッパーに近い部分を先に塗る
- 水性インキの場合は、乾燥後に油性靴墨(ワックス)を上から塗り、磨く
- 通常の手入れと重複する部分があるので、一緒にやると楽
こんな感じでしょうか。
コバインキは、基本的に汚れてきたら利用するというスタンスで良いと思います。
従って、毎回使用するわけでは無いので、すぐになくならず、コスパは良い方だと思います。
靴クリームなどに比べて露出の少ないコバインキですが、靴墨のコバへの塗り込み等に比べて、圧倒的な染色力を誇ります。
靴好きで、革靴底利用者ならば、1本持っておいて損は無いと思います。
それでは。
今回この記事を書くに当たって、改めてコバインキを調べていたのですが、最近は「コバクレヨン」なるものが登場しているようです。
扱いが面倒なインキに代わって、クレヨンと言う事なのだと思います。
通常の手入れで行っている、油性靴墨(ワックス)のコバへの塗布と、どの程度の差があるかのでしょうか……? ということで、人柱にならずには居られないので、「クレヨン」、買ってみました^^;
次回以降ご紹介したいと思います。