イングリッシュギルドビーズワックスは、黒色と茶色でまったく違う性質を持つ製品でした。
通常、同じ製品を色別に2回に分けてレビューすることはあまりないのですが、2回目の今回は茶色を実際に使ってみた(そして一悶着あった)様子をご紹介します。
本記事の前編は、以下のリンクからどうぞ。
1.前回のおさらい
※ 不要な方は読み飛ばして下さい
イングリッシュギルド・ビーズワックスは、モゥブレィで有名なR&Dが販売している革靴用油性ワックスです。
イングリッシュギルドはビン入りの乳化性クリームである「ビーズリッチクリーム」が有名ですが、前回その姉妹品である缶入りワックス「ビーズワックス」の黒色をレビューしました。
実際に使ってみると、かなり軟らかく、強い光沢を出すのには不向きだったものの、薄く広く光沢を出したい場合には重宝する製品でした。
茶色も同じはずと思い、実際に使ってみると……?
※ 靴磨き用ワックスって何? 乳化性クリームって何? という方は、前回記事の項番1で解説しましたのでご覧下さい。
2.外観レビュー
本記事では茶色と書いていますが、正式には「MID TAN(ミッドタン)」です。
フタをあけたところ。
まず、この時点で黒色と大きく違うところがいくつかあるのがわかります。
黒色と異なる点
黒色はこんなシールとフタ裏のスポンジがありましたが、茶色にはなし。
そして……
フタの周りにかなり隙間が。
フタを閉め忘れた缶入りワックスが大体こんな感じになるのですが……^^;
そして、結構硬いです。黒色は、指で触るとサフィールのクレム1925並(食べ物にたとえると、堅めの味噌くらい)の柔らかさがありましたが、完全にカチコチです。
3.使用感レビュー……?
それでは、実際の手入れの中でビーズワックスを使いながら、レビューしてみます。
生け贄はこちら。シェットランドフォックスのハーフブローグです。
使うのは以下の3点。
- 汚れ落とし+保革:サフィールノワール レザーバームローション
- 保革+化粧:イングリッシュギルドビーズリッチクリーム
- 化粧:イングリッシュギルドビーズワックス【今回のレビュー対象】
下準備
サフィールノワールレザーバームローションを塗る
ブラシで簡単にホコリを落とした後、綿の布切れに、サフィールノワールレザーバームローションを垂らし、靴全体を拭います。
靴の汚れや、古くなった靴墨の成分を拭い、適切に油分と水分を補給するためです。
左側の靴が実施後。
元々綺麗な靴だったので極だった変化はありませんが、ローションを吸ってシワが若干薄くなり、また全体的にさっぱりしているのが分かります。
ビーズリッチクリームを塗る
ペネトレイトブラシにビーズリッチクリームを少し取って、塗っていきます。
ビーズリッチクリームは粘度が低いため、サフィールクレム1925よりも少し多めに取ることが多いです。
左側が塗った後です。
乳化性かつ染料系のクリームのため、あまり塗った様子が分かりづらいですが、マットな感じになっています。
豚毛のブラシでブラッシングすると、このように結構光ります。
ビーズワックスを塗る
いよいよ、ビーズワックスの登場です。
指で、ワックスをつま先と靴の側面に塗っていきます……。
あれ? なんか緑色に見える……。
磨くと、若干緑色は薄くなりますが、それでも右側の靴と比べると、緑色がかっているのがわかります……。
こちらがワックスの表面。
油性ワックスを開けたまま放置した時のように、表面が硬く、よく見ると緑色っぽい感じがしないでもありません。
この堅さは、キィウイの缶を開けたまま1週間放置したものよりも硬く、これまで使用してきた靴墨の中でも一番です。
とりえあえず両方磨いてみました。
うーん。これはこれでお洒落ですが、やはり緑色っぽくなっています^^;
黒色との比較。粘性が全く違います。
これはおかしいのでは……? と思い、まずは販売店側に問い合わせてみることにしました。
4.不良品?
まずは電話をしてみる
店名は伏せますが、今回購入したのは、これまで何度も靴ケア用品を購入してきた店です。通販で購入したため、まずは電話で確認してみることにします。
とりあえず、他の在庫品と著しい違いが無いかどうか確認して貰おうとしたところ、残念ながら茶色の在庫が切れていました。
状況を伝えるとメーカーに確認するとのことでしたので、お願いすることにしました。
販売店/メーカーへの問合せ
販売店を通じてメーカーに伝えた、本品の状況と質問は以下の通りです(メールで詳細な状況をお伝えし、写真も添付しました)。
状況
- 茶色のビーズワックスについて、表面が非常に硬く乾燥しており(振るとカラカラ鳴るくらい)、また緑色っぽい色素がでており、磨いた靴についても緑がかっていた
- 一方黒色はかなり軟らかく、粘性があり、靴墨が缶全体に充填されていた
- 缶の中で靴墨が乾燥し隙間が空くことは、製品の仕様とするケースがあることは承知しているが、同一の製品でかかる違いが起こることは初めて
- このため、色違いによる製造工程や成分等の違いに起因するもの(=仕様)か、意図しない劣化等に起因するのも(=不具合)か確認したく、以下質問する
質問
- 茶色のワックスについて、上記の状態は仕様か
- 茶色と黒色の粘性や柔らかさの違いは仕様か
そして板挟みにならないよう、販売店には「仕様なら交換不要(営業的、予防的な交換を含む)です」と付け加えました。
回答
後日、販売店を経由して、以下のような回答がありました。
- 詳細は実際の商品を確認する必要があるが、状況から不具合や劣化などが考えられる
- メーカーとして、良品と交換させて欲しい
とのことで、早速交換をお願いしました。
ただ、交換品を発送した旨の販売店のメールに、「交換品もカタカタ音が鳴る」との不吉な一文が。果たして……^^;
5.リトライレビュー
交換品の受領と比較
ということで交換品が届きました。
右が交換品です。返送品を送る前に、比較写真だけ撮っておきます。
開けると早速違いが。返送品には当初無かった、黒色と同じ注意書きの内蓋が入っていました。
フタ裏のスポンジもあります。
表面の緑がかったカサカサもありません。が、やはり一般的な靴墨よりも硬い点は変わりません。
裏側。縮み具合も同じくらい。
早速磨いてみる
早速磨いてみることにします(事前の靴クリームや乳化性クリームのくだりは省略)。
やはり、最初と同じくらい硬く、塗るのもひと苦労です。
そして、完成品がこちら。
右がビーズワックスの茶色(交換品)を使って磨いた靴です。
……。
緑色の斑点が^^;
油分が少ないため光沢は驚くほど早く出ますが、「靴墨を塗り広める間もなく、光沢が出始めてしまう」という表現が正確です。
靴墨が異様に硬くうまく靴の上に均一に広げられないことと、色素に濃い色が含まれているのが原因だとおもいます。
ということで、ステインリムーバーをつかって掃除をして、サフィールノワールのワックスを使って元に戻しました……。
ステインリムーバーを使ったときの布です。緑色そのものは見えません。
濃い茶色は緑色に見える事もあるため、もしかしたら緑色自体が入っているというわけでは無いのかも知れません。
ビーズワックスの茶色は、ダークタン、ミッドタン、ライトタンの3種類で今回は中間のミッドタンを選びました。
靴も薄い色ではないため、中間の茶色を選んでおけば、そこまで色素が目立つことは通常無いのですが……。
6.おわりに
交換品も、当初入手した製品と同様の現象(硬くて塗りにくい、塗った靴に緑がかった変な色が出る)が発生しました。
このことから、「今回のレビューで見られた特徴は全て仕様である」という可能性が高いことがわかります。
茶色のイングリッシュギルドビーズワックスは、軟らかく低いカバー力であった黒色と、全く反対の性質を持っており、かなりビックリしました。
初心者にはお勧めできない
靴磨きを始めたばかりの方には、あまりお勧めできない靴墨と言わざるを得ません。
普通の靴墨とは違う色味を出したいなど、なにか目的を持って手を出すべき製品だと感じました。
ビーズリッチクリームは汎用性が高く、(耐水性の低さを除けば)万人受けする製品でもあったため、そのギャップに、驚きました……。
なお、今回は2色しかレビューしていませんが、本製品は無色を含めると合計で7色あります。
1缶1,620円と、比較的高く、茶色の結果がご覧の有様だったため、これ以上人柱する気にはなれませんが、使ってみた事がある方、是非コメントをお願いします……。
また、私の使い方が悪いという可能性も十分あり得るので、その辺のツッコミも大歓迎です。
参考:オススメの靴クリーム・ワックスの組み合わせ
今のことろの、汎用的に使えるオススメの靴クリームやワックス等の組み合わせは、以下とおりです。ご参考まで。
- 汚れ落とし+保革:サフィールノワール レザーバームローション
- 保革+化粧
- (晴天用):イングリッシュギルド ビーズリッチクリーム
- (雨天用):サフィールノワール クレム1925
- 化粧:モゥブレィ トラディショナルワックス
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