少し前に登場した、サフィールの「クリーニングローション」。
見た目は、以前からあるユニバーサルレザーローションと似ていて、用途も汚れ落としと保革という類似したものです。
先日、製品の比較をして欲しいというコメントもあり、今回実際に購入し、使ってみることにしました。
本稿では、既存製品のユニバーサルレザーローションとの比較や使い分けも考察しつつ、レビューしたいと思います。
1.製品概要
- 製品名:サフィール クリーニングローション
- 用途:スムースレザー、オイルドレザー、合成皮革、コーティング素材などにクリーニング効果、光沢効果、保護効果を与える。
- 製造国:フランス
- 容量:125ml
- 価格:定価1,600円(税別)
この類の製品の目的
※ ご存知の方は読み飛ばして下さい……。
靴磨きの目的とは?
靴磨きの目的は、大きく次の2つと言えます。
- 革に潤いを与え、寿命を延ばす
- 革に化粧を施し、見栄えを良くする
Aについては、適量の油分と水分を革に浸透させることで、また、Bについては汚れを取り除いた上でロウ分や顔料/染料をのせて色艶を出すことで実現します。
一般的な革用クリームの効果
そして、(この製品を含む)無色の革用クリーム(レザーローション)は、以下の効果を謳うことが多いです。(括弧内は前項との関係。)
- 汚れを取る(→ B)
- 革に栄養を与える(→ A)
- 光沢を出す(→ B)
一般的に、靴磨きは靴墨(靴クリーム)を使う事が多いと思いますが、以前「「靴のケアはレザーローションで十分」を実践してみた」で考えたとおり、日常の手入れであればレザーローションで十分という意見もあります。
今回の製品は上記の「1.汚れを取る」を従来製品(ユニバーサルレザーローション)よりも効果が出やすいようにしていると想像しますが、果たしてどうなのでしょうか。
次に、本製品について、詳しく見ていきます。
2.外観レビュー
こちらが今回購入したサフィールクリーニングローション。
価格は1,600円(税別)と、ユニバーサルレザーローションに比べて僅かに(100円)高いです。また、容量も150ml→125mlと若干少なくなっています。
ml単価に換算すると、ユニバーサルレザーローションの10円対クリーニングローションの12.8円ということになり、単純計算では28%ほど割高ですね。
サフィール関連で私が使っているのは、左からレザーバームローション、ユニバーサルレザーローション、クリーニングローション(今回購入)、レノマットリムーバーです。
レノマットリムーバーは有機溶剤満載の汚れ落とし特化という製品だけに少し毛色が違いますが、左から3つはなんだか似た雰囲気です。
(レザーバームローションとユニバーサルレザーローションの違いは、「サフィールノワール「レザーバームローション」レビュー」にてレビューしていますので興味があればご覧下さい。
裏に図で使用方法が分かりやすく書かれています。
ホコリを落とし、良く振ってから布でローションを塗り、3分乾かしてから磨き上げるという簡単なものです。
クリーニングローション、ユニバーサルレザーローション、レザーバームローションの違い
今回は、ユニバーサルレザーローションとの違いを詳しく見ていく予定ですが、先にレザーバームローションを含めた見た目上の違いを確認しておきます。
おなじサフィールの通常ラインということもあり、製品のデザインはユニバーサルレザーローション(左)とクリーニングローション(中央)は似ています。
ただ、クリーニングローションの容量は125mlとユニバーサルレザーローションよりも少なくなっていて、容器の形状は同じ125mlであるサフィールノワールのレザーバームローション(右)とほぼ同一です。
※サフィールノワール……靴ケアブランド「サフィール」の上級ライン。天然成分、とりわけビーズワックス(蜜蝋)を前面に押し出した、比較的高額な製品が多い。クレム1925の特徴的な形状の靴クリームが有名。ノワール(仏語で黒の意)のとおり、デザインは黒を基調としている。
並び順は上の写真と同じです。
両端のユニバーサルレザーローションとレザーバームローションは似た様な色合いですが、クリーニングローション(中央)は明らかに様子が違います。
指で擦ってみると、両端は乳液の様なねっとり感があるのに対し、クリーニングローションは少しサラサラしたゲル状に感じました。
また、後述しますが香りもかなり異なります。
3.使用感レビュー
今回の実験台はこちら。
左上を従来のユニバーサルレザーローションで、右下をクリーニングローションで磨いていきます。
ユニバーサルレザーローションを塗る
ホコリをブラシで取り去った後、まずは従来から使い慣れているユニバーサルレザーローションを、ネル布につけて塗っていきます(塗ると言うより、「古い靴クリームや汚れを拭き取りつつ、革に油分と水分を与える」といった方が適切ですね)。
完了したのが写真左上の靴です。
光沢が無くなり、かなりマットになっているのが分かります。
使ったネル布はこんな汚れ具合。
クリーニングローションを塗る
続いて今回新しく買った、クリーニングローションを同じように塗っていきます。
右下の靴にクリーニングローションを塗ったところ。
塗布に使ったネル布。
ユニバーサルレザーローションの時よりも、若干よく落ちている気がします。
ユニバーサルレザーローションは塗った後にすぐ白っぽいマットな表面になるのですが、よく見るとこちらは結構濡れた状態です。
同量(小豆2-3個分くらい)とっていますが、もう少し少なくても良いかも知れません。
説明書には3分と記載されていましたが、3分だとまだ濡れている感じでしたので5分経過したのがこちら。
写真だと分かりづらいですが、左のユニバーサルレザーローションの方が、よりマットな感じに見えます。
磨く
通常、靴墨(色入の靴クリーム)を塗った場合は、一旦豚毛のブラシを使いますが、今回はレザーローションということでいきなりストッキングを用いて磨いていきます。
磨き終わったのがこちら。
どちらも違いが無いように見えますが、若干右側(クリーニングローション側)の方が、照明の反射などがにじんでいる様に見えます。
とはいえ、いずれもつま先の鏡面磨き(といっても強い鏡面磨きは嫌いなので、鏡面磨きファンからは怒られそうですが……)は残ったままです。
どちらも適切に汚れを落とせているのにも拘わらず、ここまで光沢が戻るのは素晴らしいですね。
ユニバーサルレザーローションを使った靴の先端。
クリーニングローションを使った方。
製品説明には、
あらゆるタイプの汚れや過剰なワックスを除去します。
革表面のワックス仕上げの基本層を維持することができるので、クリーニング後の靴磨きによる光沢効果をより速く達成することができます。
とありますが、ユニバーサルレザーローションに比べると若干光沢は取れている様に感じます。
とはいえ、許容範囲内ですが。
4.まとめ:クリーニングローションとユニバーサルレザーローションの「違い」と「使い分け」
その他使っていて感じた事も含め、両者の違いをまとめた上で、使い分けについて考えてみます。(「ローション」だらけで読みづらいので、本項だけ文字に色をつけてみました……。)
クリーニングローションとユニバーサルレザーローションの違い
- 汚れの落ち:ユニバーサルレザーローション < クリーニングローション
- 保革の強さ:クリーニングローション < ユニバーサルレザーローション?
- 光沢の強さ:クリーニングローション < ユニバーサルレザーローション
- 価格の高低:ユニバーサルレザーローション < クリーニングローション(単価、ml単価ともに)
それぞれ見ていきます。
汚れの落ち
靴そのものの比較ではよく分からなかったのですが、使用した布を見ると、クリーニングローションの方が靴墨が多く取れている様に思います。
この辺は能書き通りといったところでしょう。
保革の強さ
正直、これは長期間使ってみないと分かりません。
ただ、直感的にはビーズワックスを使いまた油分も多めに入っている(と思われる)ユニバーサルレザーローションの方が上だと感じました。
光沢の強さ
若干ですが、クリーニングローションの方が光沢が弱く感じました。
これは、
- クリーニングローションの方が、元々塗ってあったロウ分をよく落とす
- クリーニングローションの方が、テカリの成分が少ない
という2つの原因が考えられますが、個人的には両方関係している気がします。
とはいえ、レノマットリムーバーはもちろん、モウブレイのステインリムーバーほど落ちるワケではありませんが……。
価格の高低
冒頭に述べたとおり、ml単価では3割くらいクリーニングローションの方が高価です。
とはいえ、使用感レビューでも述べたとおり、クリーニングローションの方が伸びが良く、少量で使えることも事実です。
また、クリーニング製品を毎回使うかというのも議論の分かれるところだと思いますので、その辺は単純な価格の高低だけで考えない方が良いように思います。
最初に道具を揃えるときは価格を気にするかも知れません。しかし、靴ケア用品はそんなにガンガン減るものではありません。個人的には、価格にはあまり拘泥(こうでい)せず、高くても良い物(効果が高いもの、使いやすいもの、使っていて楽しいもの)を使った方が良いと感じています。
その他の違い
ほかに特徴的だったのが、香りです。
ユニバーサルレザーローションは、ビーズワックス特有の甘い香りがします。個人的には好きな香りですが、好みは分かれるでしょう。
靴ならばまだ良いですが、鞄、財布、手袋、レザージャケットなど、顔に近い場所や広範囲で使う物については、その香り方(臭い方)はより強くなります。
一方でクリーニングローションは、あまり独特な香りはしません(ほのかなシトラス系の香り?)。ビーズワックスが苦手な方は、クリーニングローションを使ってみるのも手です。
また、クリーニングローションは、乾燥した後のベタベタも少ないです。
クリーニングローションとユニバーサルレザーローションの使い分け
使い分けの例をいくつか挙げてみると、こんな感じでしょうか。
- 靴墨の厚塗りや、汚れが気になる場合はクリーニングローション
- 保革メインならユニバーサルレザーローション
- 乳化性靴クリームを併用するならクリーニングローション、単体ならユニバーサルレザーローション(とはいえ、1~2回程度ならクリーニングローション単体でも十分な気がします)
- ステインリムーバー系を持っているならユニバーサルレザーローション
- ビーズワックスの香りが苦手ならクリーニングローション
- 塗った後のベタベタが嫌いならクリーニングローション
5.おわりに
ユニバーサルレザーローションを窓から投げ捨ててまでクリーニングローションに買い換える必要はないと思います。
しかし、これまでにあった各製品の丁度中間的な存在で、バランス感覚に優れる製品だと感じました。今お持ちのレザーローション類が無くなったタイミングで、購入を検討する価値はありそうです。
リンク
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