先日、二次会まで出た飲み会の帰りに、雨に降られました。
普段、かなり酔っていても靴と服はブラッシングして陰干ししていたのですが、その日、雨に濡れた靴をそのまま靴箱へ入れてしまいました……。
そんな事を忘れて1週間後、見てみると靴の側面にカビが発生していてびっくり。
ということで、カビの生えた革靴を綺麗にしてみました。手順を追いつつ、実際に作業した際の写真も交えながら、ご紹介します。
1.状況を確認する
まず、靴の状況を確認してみます。
今回カビてしまったのは、スコッチグレインのシンクレアです。10年ほど履いています。
黒色の革靴ですが、ソールの色は茶色ということもあり、また外羽根※のクォーターブローグ※かつダブルソール※のため、スーツとジャケパンの両方に使え、重宝していました。
※ 外羽根:紐を通す部分が甲の部分に覆い被さるタイプ。履きやすく、かつスポーティに見える。
※ クォーターブローグ:穴の装飾(ブローキング)が入っている靴で、その中でも比較的おとなしめなもの。
※ ダブルソール:要するに、少し厚めの革底。
この様に、靴の両サイドとコバ(靴底の側面)にカビが発生していました。写真だとこんな感じですが、太陽光下だと結構目立ちます。
2.対処の流れを整理する
基本的には、①カビや古い靴墨を取って、②油分と水分を補充し、③化粧をするという、普通の靴磨きに近い流れです。
①については、この程度のカビなら通常のステインリムーバーでも出来なくは無さそうですが、今後の再発を防ぐためにも有機溶剤入りの物を使い、古い靴墨のロウ分ごと綺麗にします。
②は、雨に濡れたまま何も対策をせず1週間放置していた事もあって、通常より多めに油分と水分を入れるようにします。
③については、普通の靴磨きと同じくらいですかね。
ということで、実際に行った作業をご紹介します。
3.用意するもの
今回は、自宅で常備している靴ケアグッズから選んだので、かなり細かく使い分けています。
最低限「★」マークをつけたものがあればなんとかなるので、新規に買いそろえる場合の参考にして下さい。(リンク先は全てAmazonアソシエイトリンクです。)
- ★ サフィール レノマットリムーバー:有機溶剤入りの強力な汚れ落としです。
- ★ ニトリルゴム手袋:レノマットを使う為、また後述する手入れを簡単にするために使います。
- コロニルシュプリームクリームデラックス(無色):旧ディアマンテ。油分と水分が豊富な保革クリーム。添加されているシダーウッドオイルはカビの再発防止も期待できます。
- ★ イングリッシュギルド ビーズリッチクリーム(黒色):甲革の補色、艶出しに使う乳化性クリームです。
- モゥブレィ ソールモイスチャライザー:乾燥して減りやすくなった革底に油分と水分を補給する、靴底専用の保革クリーム。
- キィウィ パレードグロス(無色):コバの仕上げに使う、缶入りの油性靴墨。
- モゥブレィ トラディショナルワックス(無色):短時間で簡単に光沢を出せる缶入りの油性靴墨。つま先とかかとの光沢を出すために使います。パレードグロスを使ってもOK。
なお、当然ですが上記に加え、通常の靴磨きでも使う靴用ブラシと布(着古したシャツの切れ端や、専用のネル生地)、使い古しのストッキングも別途用意して下さい。
4.①カビと古い靴墨を落とす
今回使うのは、サフィールのレノマットリムーバー。
有機溶剤が入ったタイプの強力な汚れ落としで、硬くなった古い靴墨、カビ、水濡れした後に出てくる白い汚れ(いわゆる塩)などを、効果的に落とす事ができます。
手袋を使い、換気する
靴のケアをするときは、作業中に手が汚れないように、また手で靴墨を塗っても大丈夫なように、ニトリルゴム手袋を使うと便利です(爪のまわりに入った靴墨はなかなか落ちず、そして汚れた手指はビジネス上好ましくないですよね……)。
特に、今回の様な有機溶剤を使う場合は、必ず手袋を使って手を保護します。
また、換気にも気をつけます。
靴紐を取る
手入れの邪魔になるので、靴紐は取っておきます。
布にリムーバーを取る
レノマットリムーバーを良く振ったあと、指に巻き付けた布に塗ります。
指で注ぎ口を塞ぐようにした後、数回逆さまにすると適量を塗布することができます。
拭き取り
まずは、カビが発生した部分を丁寧に拭きます。レノマットはかなり強力なので、余りゴシゴシ擦る必要はありません。
カビが以外の部分も、汚れや古い靴墨のこびりつきが酷かったのと、拭った部分とそれ以外で雰囲気が変わるのを防ぐため、布の新しい部分にもう一度レノマットを取って靴全体を簡単に拭(ぬぐ)いました。
また、靴底にもカビがあったので、同様に拭き取ります。
拭き終わったところ。
カビが綺麗に落ちているのが分かります。
靴全体を拭ったので、写真左(手前)は古い靴墨も綺麗に落ちました。
比較のために、写真右上の靴は未処置の状態ですが、このあとこちらも同様に拭き取り、15分ほど陰干ししました。
5.②油分と水分を補給する
つづいて、雨とレノマットリムーバーで奪われた革の油分と水分を、コロニルシュプリームクリームの無色(旧ディアマンテ)で補充します。
なお、靴クリームでも補充は可能なため、本工程は必須ではありませんが、靴クリームを厚塗りすると見た目が悪くなるので、今回はこれを使います。
ペネトレィトブラシを使って、結構厚めに塗っていきます。
今回は雨に濡れた後、何も処置せずほったらかしにしてしまったので、塗った先からみるみる吸収されていきました。
この量を靴クリームで入れようとすると、顔料や光沢成分(ロウ)でガビガビになってしまうため、この工程を挟んで正解でした。
なお、定番のモウブレイ デリケートクリームでも代替出来ますが、シュプリームクリームの方が油分多めで、かつ防カビに優れているため、こちらを使いました。
3分くらい放置したところ。グングン吸収され、ブラッシングをしていないのにマットな感じになりました。
革底もケアする
雨の日に履いて放置したこともあり、靴底の乾燥も酷く、こちらもケアします。
使うのはモウブレイのソールモイスチャライザーですが、乳化性クリームでも代替出来ます。
ただ、今回は茶色の革底であること(染色したくない)、また乳化性クリームを使うと含まれる光沢成分で滑りやすくなり危険なため、ソールモイスチャライザーを使います。
使い方は簡単で、指にとって靴底に塗るだけです。
ペネトレイトブラシを使っても良いのですが、靴底は平面なのでブラシを使う意味は無く、またブラシに残る分が無駄なので手で塗りました。
ニトリルゴム手袋をしているで、手が汚れる心配はありません。
しっとりした革底。乾燥が進むと、減りが早くなるので気づいた時にケアをすると良いです。
6.③化粧をする
乳化性クリームを塗る
乳化性クリームならなんでもOKですが、今回は最近使う機会が多くなったイングリッシュギルド ビーズリッチクリームを使います。
保革成分が多いのに、ブラッシングしただけで深い輝きが出るのでお気に入りです。
これもペネトレイトブラシで塗り、数分放置します。
ウェルトとコバに靴墨を塗る
通常、コバとウエルト(コバの上部に見える縫い目周辺)は乳化性クリームを一緒に塗りますが、今回は甲革と色違いの革底のため、単独でケアをすることにしました。
無色の油性靴墨(今回はキィウイのパレードグロス)を……
この様に歯ブラシにとって、コバとウェルトに塗っていきます。
ブラシをかける
豚毛のブラシで、ビーズリッチクリームを塗った甲革と、パレードグロスを塗ったコバ部分をブラシ掛けします。
左下がブラシがけ後、右上がブラシがけ前です。
かなり良い感じの光沢が出てきました。
ストッキングで磨く
さらに、ストッキングを使って磨きます。左がストッキングをかけたもの、右がブラシのみです。
このとき、コバやウェルトの部分を念入りに磨くと、先ほど塗り込んだパレードグロスが良い感じに光ってくれます。
光沢をさらに出す
ここまでで十分輝いているのですが、もうすこし輝きを出してみます。
先ほど出てきたキィウイのパレードグロスを使っても良いですが、最近は短時間で輝きがでてくるモウブレイのトラディショナルワックスを使っています。
ニトリルゴム手袋をしているので、そのまま手で塗り込んでいきます。 手を使うと体温で溶け、かなり塗り込みやすいです。
下品になり、また蒸れやすくなるため、靴全体には塗らずにキャップ(つま先)と側面下部、踵(かかと)のみ塗ります。
水をごく少量つけつつ、ネル布で磨くとこんな感じ。カビが生えていた当初の写真と見比べると、すごいギャップです^^;
左が磨いた後、右が磨く前です。 このくらいなら下品な感じはしません。
7.完成
もう片方も磨き上げて完成です。
雨が多くなるこの時期、カビを発生させないのがベストではありますが、万一の際に皆様の参考になりましたら幸いです。