東京ではまだまだ暑い日は多いですが、それでも徐々に涼しく、また湿度が低い日が増えてきました。
古今東西、ファッションは先取りが粋(いき)。ということで、秋に活躍するスエード靴を再動員すべく、手入れをすることにしました。
今回は、手入れで使用した道具、手順、実際に雨の中を歩いてみた結果などをご紹介します。
1.スエードのチャッカブーツ
今回手入れをするのはスエードのチャッカブーツ。具体的には、名門Crockett & JonesのChiltern(チルターン)です。
ブーツタイプは時期的にもう少し後でも良いのですが、靴底がダイナイトソール仕様で雨に強いため、台風シーズンの活躍に期待しての選択です。
2.用意する物
ブラシ
スエードは手入れが簡単な素材のため、基本的には写真左のクレープブラシがあればOKです。
ただ、すこしかさついた感じがする場合は、無色のスエード用スプレーも使用します。
さらに、日光や経年劣化で色が褪せてきた場合は、色つきのスプレーや、スポンジで塗るタイプの補色液を使うと色が蘇ります。
補色
今回は、ブラッシングに加え、写真のように少し色が褪せてきたので、色つきのスプレーで補色もします。
また、雨天での利用を想定しているため、スエード用の防水スプレーも最後に使用したいと思います。
防水
普段、スエードには、コロニル(写真左)とWOLY(写真右)のスエード用防水スプレーを使っています。
この2つは、若干役割が異なり、コロニルは防水に、WOLYは保革に重きを置いているようです。
従って、補色が不要な場合はWOLY1つで、今回の様に補色する場合は、補色/保革スプレーとコロニルの2つを利用しています。
なお、WOLYは国内では廃番になったようです(まとめ買いしておけば良かった……)。店で訊くと、モゥブレィから同じデザインのものが後継製品として発売されているようです。後継製品においても、保革に重きを置いていることは変わりが無いようです。
3.ブラッシング
革靴は、ブラッシングだけでも表情が変わる、面白いアイテムですよね。
なかでも、スエードはその効果がテキメンに現れる素材だと思っています。
まず、汚れを落とすと共にスプレーが良く浸透するよう、クレープブラシで軽くブラッシングします。
左がブラッシング前、右がブラッシング済の靴です。毛並みを揃えるだけでも、見た目が良くなるのが分かります。
普段はこれだけでも良いのですが、今回は補色、防水へと進みます。
4.保革と補色
通常、革靴の保革や補色には、靴クリームを使います。しかし、起毛革に靴クリームは使えないため、スプレータイプの物を使用するのが一般的です。
スプレーの選び方ですが、靴クリーム選びと同じく、革とスプレーの色をよく比較する必要があります。
そして、「迷ったときは薄めを」も、靴クリームと変わりません。
初めてそのスプレーを使用する際は、紙に少し噴射してみると安心です。今回はスエードの色より少し薄めで、問題なさそうですね。
屋外で噴射し、5分程度乾かしたのがこちら(写真右)。色が若干濃くなっているのが分かります。
また、この手のタイプのスプレーには、ラノリンなどの保革成分が入っているので、革がしっとりした感じになりました。
スポンジで塗るタイプとの比較
以前、スポンジで直接液を塗るタイプのスエード用補色剤を紹介しました(下記記事参照)。
それに比べると、補色力は下がるかな、という印象です。
一方で、作業が簡単な上、噴霧時間を調整することで補色の強さを調整することが出来のは、大きなメリットです。
使う上での注意
スプレータイプは靴全体をまんべんなく補色してしまいます。
例えば、2種類以上の素材を使ったコンビ靴や、コバ(靴底の横に張り出している部分)やコバの出し縫いの糸が薄い色の場合には、塗り分けのためにもスポンジタイプがオススメです。
どうしてもスプレーが良い場合は、マスキングテープを使うと良いでしょう。
5.防水
先述したとおり、今回は左のコロニルの起毛革用防水スプレーを使います。
再び外でレザープルーフを噴霧し、最後にクレープブラシでブラッシングをしたのが右側。
あくまで防水スプレーのため、補色スプレーを塗った時点から見た目は殆ど変わりません。強いて言うなら、写真からは分かりづらいですが若干ツヤが増した感じでしょうか?
ここでは、防水スプレーによって、見た目が悪くならない事が、確認出来れば良いと思います。
そして、両足の手入れが完了しました。
履く頻度にもよりますが、私の場合は補色は年に1~2回で十分なため、起毛革はとても手入れが簡単に感じます。
そして防水スプレーですが、時間が経つと効果が薄くなるため、出来れば履く前日くらいに噴霧すると良いと思います。
製品によりますが、雨に降られなければ1週間くらいは持つように感じます。
6.おわりに
茶の起毛革は、カントリー調で、カジュアルな素材です。
そのため、多くの業種でビジネス利用がためらわれると思いますが、休日の靴としては秋冬に最適な素材だと思います。
特に、今回の様なチャッカブーツですと、なおらさですね。
これからの季節が、とても楽しみです。
(おまけ1)スエードは雨に弱い V.S. 雨に強い?
「スエードは水染みになりやすく、雨に弱い」という話と、「スエードは雨に強い」という話、両方きいたことは無いでしょうか?
少なくとも、私にはあります^^;
複数の、革に詳しい方への質問や、自分の経験から得た、私なりの結論は以下の通りです。
スエード革は……
- 防水スプレーと相性が良い
- きちんと防水処理をすると、とても良く水を弾く
- もちろん、濡れれば色は濃くなる(=染みになる)が、スムースレザーほど顕著ではない
ということで、個人的には雨に強い派です。もちろん、きちんと防水処理を施すことが前提ですが・・・。
「スエードが水染みし易い説」の理由?
以下は完全な推測ですが――
昔の日本人にとって、スエードの感触に最も近く、かつ身近な素材が、弓術のカケに使われる鹿革製の起毛革でしょう。
これは結構シミになりやすいようで、もしかしたらこの辺りから水に弱い、という話が出てきたのかも知れませんね。
このあたりについて、ご存知の方がいらっしゃったら是非コメントをお願いいたします。
(おまけ2)「ウォーターストップ」と「レザープルーフ」の違い
コロニルにはスムースレザー(一般的な、表面がスベスベした革)用の「コロニル ウォーターストップ」と、起毛革用の「コロニル レザープルーフ」という2種類の防水スプレーがあります。
外見がとても紛らわしく、たまにネットショップの記載も間違っていたりするのですが、この2つは異なる製品です。
▲ 左の2つはウォーターストップの旧デザインと新デザイン、右はレザープルーフとWOLYのスエードスプレー
具体的に言うと、ウォーターストップ(写真左の2本)の方はフッ化炭素樹脂、レザープルーフ(写真右から2つめ)はフッ化炭素樹脂に加えオイルを配合しています。
気になって店員に確認したことがありますが「ウォーターストップでも起毛革に使えるが、レザープルーフの方が防水性能がより強力で、かつツヤが出やすい」とのことでした。
実際、レザープルーフをスエードに使うと、水が面白いように弾きます(次項に写真を掲載しています)。
また、ウォーターストップはガス圧による噴霧、レザープルーフはポンプによる手動での噴霧という、ギミックも異なります。従って、広い範囲への防水処理は、ウォーターストップがオススメです。
(おまけ3)後日談 ~実際に雨の中を歩いてみました~
早速、今週末に雨が降りましたので、この靴を履いてお出かけをしてみました。
その結果がこちら。殆ど水を弾いています。
拡大。
タオルで水分を払うように取ると、殆ど濡れていないことがわかります。
台風が接近する、傘の効かない本降りの中、かなりの距離を歩いたはずなのですが、無事役割を果たしてくれました。
リンク
今回使用した製品
- クレープブラシ「サフィール クレープブラシ」 → http://amzn.to/2w2ml4K
- ヴィオラ スエード専用コンディショナー(廃番)
- 補色・保革スプレー「ヴィオラ スエードカラー」(後継品) → http://amzn.to/2x85HC10
- 防水スプレー(起毛革用)「コロニル レザープルーフ」 → http://amzn.to/2x86nax
その他参考にした製品
- 防水スプレー(スムースレザー用)「コロニル ウォーターストップ」→ http://amzn.to/2haYe1u
(今回、実際に使用していませんが、スムースレザー用としては一番オススメです)
※Amazonアソシエイトリンクを使用しています。