洋の東西を問わず、ファッションは季節を先取りすることが重要なようです。
まだまだ暑い日が続きますが、実は暦の上では既に秋。 少し早い気もしますが、夏のコーディネートへ秋らしい装いを加えていく方法を考えてみようと思います。
1.ポイントは色と素材
秋らしさを表現するのに重要なのは色と素材ですが、今回は以下の2点を前提に考える事とします。
- 完全なる秋冬物ではなく、暑さが残る秋口の装いである
- ビジネスマンに相応しい出で立ちである(完全なカントリーファッションはNGなど)
① 色使い
アースカラー
茶色(その他緑色や赤茶色などもあり)を中心としたアースカラーが、よく秋らしいと言われる色の特徴です。
真夏に、白や青、水色を中心としていた色使いに対し、アースカラーをポイントとして持ってくると、格段に秋らしい雰囲気になります。
彩度を落とす
また、彩度を落とす(=くすんだ色にする)ことにより、派手さが消え、ビジネスの中でも通用する色になります。
さらに、彩度を保ったまま明度(明るさ)の違うパーツを組み合わせることで、統一性を産む事が出来ます(焦げ茶のズボンに、アイボリーのシャツなど)。
ほかにも、夏に使われた色使いでも、彩度を落とすことで「真夏!」といった雰囲気が消えるので、覚えておくと便利です。
なお、全身をアースカラーにしてしまうとカントリー調になってしまうので、あくまで色使いの1~2点に限定します。また、無彩色(黑、白、灰色)の範囲を多くとると、ビジネス的な、都会的なまとまりのある配色になります。
② 素材
男性のファッションで秋らしい素材感と言えば、起毛と厚手の素材です。
たとえば、薄手の麻は夏らしい涼しげな素材ですが、ウール混や織りが厚めの麻であれば、その起毛感も相まって、秋口に相応しい雰囲気が出ます。
一方で、厚手のウール地のタイや、ツイードのジャケットなど、行きすぎてしまうと冬物に見えたり、カントリー調に寄りすぎビジネスに相応しく無くなってしまいます。
ですから、あまり厚手や起毛素材で身を固めるのではなく、場所を絞って(たとえばタイ、靴など)起毛素材を使うなどの工夫が必要です。(もちろん素材の統一感を出す事も重要なので、光沢がありすぎる素材との組み合わせを避けるなど加減が難しいですが……。)
2.ネクタイ
それでは、具体的に色と素材をどう採り入れていくのかを考えます。
盛夏にノータイであったならば、タイを付けることだけで、まずは秋のらしさを感じさせることが出来ます。
その中で、残暑厳しい時期では、ウールタイは暑苦しいですし、シルクタイでは面白みがない――そんなときは、リネンウール混紡タイ(無ければ厚手のリネンタイ)というのも一つの手です。
写真はいずれも麻を含むタイです。左側は芯地がない、薄手の麻100%で完全に夏用ですが、中央はウールリネン混の厚手で織りもザックリとしたタイで、秋口に適します。
もちろん、アースカラー系のシルクタイも、秋らしい装いとして良く合います。
3.靴
前項のネクタイが、新しく揃える方法としては金額的に一番安い選択肢ですが、もしスエードの靴を既にお持ちであれば、こちらの方がもっと簡単に秋らしい雰囲気を出せます。
もちろん、スエード靴をビジネスに使えるかは業界や職種にもよりけりで、汎用性が高いわけではありませんが、とても効果的です。
さらに、スエードのブーツともなれば、もっと秋らしさが出ますが、顧客対応のある職種の場合は、難しい(ウィークエンドにとどめた方が良い)かも知れませんね……。
なお、その際は靴とあったベルトを合わせるのをお忘れ無きよう……。
4.シャツ
シャツも、純粋な白ではなく、アイボリー(象牙色)や生成色(きなりいろ)などのオフホワイト系にすることで、暖かみが生まれ、秋らしさを出すことが出来ます。
タイや靴、ズボンといった別のパーツに茶系統の色を採用する場合も、オフホワイト系であれば統一感を出すことが出来ます。
さらに素材も厚手のオックスフォードや、ヘリンボーンであれば、より季節感を出せると思います。
ただし、これもあまり色が濃すぎるとビジネスには使えませんので、他のシャツの色と比べて若干自然の色合いだな……と感じられる生地を選ぶと良いでしょう。
5.ジャケット・ズボン
ジャケットやズボンは面積が広いため、印象がガラッと変わりやすいパーツです。そのため、安易にビジネス用途として茶色や起毛素材を採り入れる事が難しいところです。
とくに、年代が上の世代だったら茶色のスーツもありかなと思うのですが、本サイトがターゲットとしている2~30代だとすこし浮いてしまうかも知れません。
しかし、茶色と灰色を混ぜたような色(=彩度をかなり下げた茶色)であれば、そういったデメリットが軽減できます。実際私もこの色のウール麻混紡の三つ揃いを愛用しています。<下図>
このように、無彩色に近い茶色や、ウールと混紡の麻であれば、カントリー調やカジュアルっぽさを出さずに、秋らしさを採り入れることが出来ます。
また、もし、夏のアースカラー系ジャケットをお持ちの場合は、ボタンを夏用の貝ボタンから水牛やナットに交換することだけでも、秋らしさを表現出来るとおもいます。
6.おわりに
今回はあくまで、コテコテの秋らしさではなく、まだ暑さが残る秋口における、季節を先取りした装いについて考えてみました。時季の変わり目の服装は、難しくもありますが一番旬を取り入れやすくもあり、面白いですよね。
季節遅れなら恥ずかしいですが、先行であればある程度は許容されるところもありますから、積極的に挑戦してみたいと思います。
また、皆さんはどの様なテクニックをお持ちですか? 秋を先取りするコーディネートのコツがありましたら、コメント欄から是非教えて下さい。