スーツの生地

夏に最適な「モヘア生地」について考える

投稿日:平成27年(2015) 6月20日  更新日:平成30年(2018) 12月18日 

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夏用の素材として、前回は「麻」を採り上げました。

しかし、麻はその毛羽立ちやシワによってカジュアルさが際立ち、ビジネス用途には不向きなこともあります。固い職種では採り入れることが難しいこともあるのでは無いでしょうか。わたしも、堅い職業のお客様との打ち合わせには、麻100%を着て行く勇気はありません^^;

そこで今回は、涼しいのに適度なシャリ感と光沢を併せ持ち、固い場にも対応できる「モヘア」を採り上げます。

 

1.そもそも「モヘア」って何?

モヘアはアンゴラ山羊からとれる獣毛のこと。カシミアはカシミア山羊ですが、モヘア山羊というわけではありません。原産地はトルコですが、現在ではアフリカやアメリカでも生産されています。多くの場合、ウールと混紡されて使われます。

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© Erica Peterson

モヘアを使った生地は通気性が高く、夏用の素材として重用されています。カシミアのように値段が高いわけでも無いため、採り入れやすい素材だといえます。

 

 

2.「モヘア」生地の特徴

モヘア生地の特徴を並べてみます。

ベトつかず通気性が高い

毛の太さについて、ウールが20ミクロン弱なのに対し、モヘアが約1.5倍の30ミクロンくらいあります。太さの違う毛を混紡することで、生地の表面に凹凸が出来、汗ばんでもべとつかず、かつ通性が高くなります。

保温効果が薄く、熱がこもりにくい

ウールは毛の縮れによって空気を保持し、保温効果を高めているのですが、モヘアはウールほど縮れがなく、空気をため込みません。従って、熱がこもることが無く、前項の通気性とあいまって、夏にはとても涼しく感じられます。

光沢が強く、カッチリ感が出る

モヘアにはウールに比べてキューティクルが滑らかで、かつ縮れが少ないため、上品な光沢があります。そのため、通気性を高めるためにザックリとした織り方をしていても、モヘアそのものの光沢がでるのです。これが、麻に無いカッチリ感やラグジュアリー感に繋がります。

糸が固く、若干耐久性に劣る

メリットばかりのモヘアですが、弱点もあります。複数の文献で「糸はしなやかで光沢があり」と書いてあるのですが、経験上ウールよりも太くて固いです(柔軟と言うよりは、弾力があるという意味の「しなやか」なのでしょう)。

したがって、肌触りは人によっては清涼感に繋がる「サラサラ」なのですが、敏感な人にとっては「チクチク」と感じると思います。また、ウールに比べて直毛なため、ズボンのクリース部分や、ジャケットの袖口など、強く折り曲げているところから解れていく傾向にあります。(従って、クリースには優しくアイロンがけした方が良いです)

 

 

3.モヘア生地の服

実際に、モヘアを使った服がどの様な感じなのか、ご紹介したいと思います。ただ、モヘアは実物で無いとその良さがはわかりにくく、テーラーなどで実際に生地に触れてみてください。

モヘア混フレスコ地のスーツ

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モヘア混のスーツです。平織りのサラサラとした生地で、見た目も着心地も涼しいです。混紡率が低い(20%程度)ため、あまり光沢は出ていません。

 

三杢(3ply)のジャケット

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こちらは混紡率60%の三杢(みつもく)のジャケットです。かなり光沢があり、写真を撮るとモアレも相まって虹が出てしまいます……。仕事用というよりは、結婚式の二次会など、週末少しドレスアップするときに着ています。

三杢とは、英語で3plyといい、3本の糸で撚った糸のことを言います(2plyは双糸、4plyは四杢と言います)。この三杢を使った生地は、腰が強く固いですが、通気性が高く、なによりザックリとした生地感で、見た目にとても涼しげで、好きな人にはたまらない生地だと思います。

 

三杢のスーツ

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先ほどの2つは海外製の生地でしたが、こちらは日本製の素朴な生地です。混紡率は40%程度。私はこの程度の混紡率が一番好きです。

地味なチャコールグレイなのですが、よくよく見るとモヘアの上品な光沢がわかります(テラテラとしたいやらしさは全くありません)。春夏に「お堅い場」に出るのであれば、こういったスーツがお薦めです。

 

 

4.入手方法

既製品でモヘアを使った物が少ないため(ズボンのクリースに強くアイロンをかけると傷みやすいので、クレームに繋がりやすいから、とのこと)、モヘアのスーツ/ジャケットが欲しい場合はオーダーしてしまうのが手っ取り早いです。

見直されるべき日本製のモヘア生地

モヘア生地といえばドーメルのトニックが有名ですが、最近は扱っているところを余り見なくなりました。また、あったらあったで、結構な値段がします。そこで、私のお薦めはズバリ国産生地です。

国産生地でモヘアというと、真っ黒な礼服(日本用)を思い浮べそうですが、最近はそんなのばかりではありません。たとえば葛利毛織などはかなり良い色の、上質なモヘア生地を出しています。低速織機の生地感とモヘアのシャリ感の相性がとてもよく、外国製に比べてコストパフォーマンスがとても高いと感じます。

ウイリアム・ハルステッド

一方で、光沢感やラグジュアリー感を求めるのであれば海外メーカーもお薦めです。たとえば、モヘアの生地メーカーといってすぐに出てくるのがウイリアム・ハルステッド。色のバリエーションも日本製生地に比べて多いので、ジャケット単品で仕立てるのであれば、候補に入れると良いでしょう。

 

一度着てみると誰でもモヘア好きになること間違いなしです。
皆さんもモヘア、着てみませんか?

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