「デコシャツ」とは、襟や袖にステッチがあったり、ボタンが派手な色のシャツをいいます。職場や客先でも、最近はよく見かけるようになりました。
一方で、デコシャツを着ると一発で全体のスタイルが台無しになるという声もあります。
今回は、そもそもデコシャツとは何か、そしてデコシャツは本当にダメなのかを考えます。
1.デコシャツとは
「デコシャツ」という表現は、本記事初出時点ではネットにいくつか散見されるものの、まだ確立したものではないようです。
そこで、まずはこの記事における、「デコシャツ」とはなにか、を定義しておこうと思います。
デコシャツの定義
デコシャツとは、男性向けに販売されているシャツ(いわゆるワイシャツ)で、クラシカル/伝統的ではない華美な装飾(デコレーション)が施されたものをいいます。
具体的には、襟、袖、前立てなどに、派手な糸色、刺繍、ステッチなどの装飾があるものや、襟が二重になっているデザインのものがあります。
デコシャツは、クールビズにおけるノージャケットが増えた時代を反映して、シャツ単体でも地味にならないように、又は安価な素材を使っていても見栄えを良くするために発達してきた(※)とされていますが、その賛否は分かれています。
※ 知り合いのテーラー曰く。
デコシャツの類型
続いて、実際に私が目撃した、デコシャツの類型を見ていきましょう。
派手なボタンホールの糸色変更、派手なボタン
目立つ色のボタンホールやボタンなど、一番多いパターンです。製造側も、最小限のコストでデコレーションできるため、最もよく見かけます。
また、他のデコレーションと併用されるケースが多いです。(以下の類型も、糸色変更&派手なボタンと組み合わせて表現しています。)
派手なステッチ
続いて多いのが派手な色のステッチです。
二重襟
最近よく見かけるのが二重襟です。生地を切り替えているパターンと、本当に二枚重ねになっているパターンの2つがあります。
コーポレートカラーを配するなど、企業の制服としては良いかも知れませんが……。
ボタンが沢山
ボタンが沢山つくタイプのデコレーションもあります。脱ぎ着が大変そうです……。
前立ての勲章リボン
先日見かけたのがこれ。前立てにトリコロール(三色旗)が配されているものです。
勲章のリボンを巻き付けているようにも見えます。叙勲されたのでしょうか……。
2.デコシャツの問題点
続いて、デコシャツの何がいけないのか、を考えます。
①安易な装飾は全体を安っぽく見せる
一つ目は、装飾が安っぽく見えやすいことです。
派手なステッチや原色のカラーボタンは、素材感をチープに見せ、シャツ全体、延いてはコーディネート全体を安っぽいイメージにしてしまうのです。(特に、原色カラーボタンは安く見えますよね……)
②主張が奇抜/強すぎる
販売側も差別化を図るため、様々な趣向を凝らしたデコレーションが登場しています。
しかし、それゆえ主張が奇抜すぎたり、強すぎたりすることが多く、ビジネスに不適なのではという声もあります。
類型で示した「前立ての勲章リボン」は最たるもので、なにか特殊な組織に所属しているのかと思う方もでてくる可能性も……(コーポレートカラーをデザインした?)
③高品質と両立しづらい
品質の低さやシルエットの悪さを、奇抜なデザインで乗り切るために装飾するデコシャツも多いようです。そのため、そもそもデコシャツを選択してしまうと、高品質のシャツを見つけづらいと思います。
もちろん、オーダーで良い生地と縫製を使ってデコシャツを作る事も不可能では無いですが、そういうシャツはデコらなくても美しく見えるので……。
④スーツやジャケットに合わせるのが難しい
ノージャケット前提ならまだよいのですが、デコシャツをジャケットに合わせるのは至難の業です(少なくとも私にはハードルが高いです。)
ジャケットは、大人のシックさというか、完成された美しさを持っているのですが、デコシャツはそれとケンカしてしまうほど主張が強いためです。
特に、タイドアップする際には難易度がかなり上がります。
3.デコシャツはダメなのか?
以上のようなデコシャツの問題点を踏まえた上で、デコシャツを着てはいけないのかを考えます。
私の結論は、意外かも知れませんが「好きな方は、別に着ても良いのでは?」です。
ノーネクタイ時に、安価に個性を出す方法ではある
前項に掲げた問題点の裏返しではありますが、デコシャツを用いることで、安価に個性を出す事はできるかもしれません。
もちろん、私が推奨する方法を訊かれれば、シャツ以外にも個性の出し方はごまんとありますし、ジャケットを羽織ったときのコーディネートが難しいので推奨はしません。
ただ、ノーネクタイ、ノージャケットで、という前提条件があればまだ許容出来るのでは無いかと思います。
そもそも、ファッションとは着たいものを着ることだし
また、着たいものを着るのがファッションですので、どうぞご自由にという面もあります。
ただし、顧客やビジネスパートナー等に、自身の印象をより良く見せたい、など、ファッションを使ったセルフプロデュースを前提とするのであれば、本当にデコシャツが理想のコーディネートなのかを、今一度立ち止まって考える必要はあろうかと思います。
4.どんなシャツなら良いの?
デコシャツでないのなら、どんなシャツならば良いのでしょうか。
基本は、良い生地と良い縫製によって作られた、自身のサイズに合うプレーンなシャツが良いでしょう。
それでも、シャツへの装飾を試したいのであれば、今様の「デコシャツ」にならない、古典的な手段がありますので最後にご紹介します。
- 生地で遊ぶ:麻など素材、バスケット地などの織り方を変えてみる
- ボタンで遊ぶ:上質な貝ボタンで、上品な輝きを出す
- 色で遊ぶ:薄い色であれば、水色、アイボリー、場合によっては桃色なども許容されるでしょう
とはいえ、やはりシャツはクラシカルの範疇から言うと自由度が少ない(そもそも下着を出自としているので)ため、シャツだけで無く、他のアイテムも組み合わせたトータルで個性を出すのが良いでしょう。
こうして考えてみると、スーパークールビズによって、コーディネートの幅が狭まった結果、そしてなんとかおしゃれ感を出して差別化したいという企業努力の結果、生み出されたのがデコシャツなのだと思います。
以上、私一個人の意見でした。
デコシャツ賛成派、反対派、それ以外の方も是非コメントでご意見をお寄せ下さい。