歴史・勉強 考察

タキシードのシャツ襟は「絶対にウイングカラー」は本当?

令和4年(2022) 1月17日 

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先日、披露宴を開く親族の衣装決めに同行しました。

その中で、ある貸衣装屋から、「タキシードのシャツには、必ずウイングカラーをご用意下さい」との案内を受けたのですが、私はこの案内に、少し違和感を覚えました。

というのも、海外の写真を見ると、タキシード(ブラックタイ、ディナースーツ)の多くは、シャツにウイングカラー(立ち襟の一種。上の写真左側)ではなく、ターンダウンカラー(折り襟のこと。上の写真右側)を用いるケースが多かったからです。

今回は、かなりニッチなネタになりますが、この貸衣装屋の指示を無批判に受け入れて良いのか――タキシードのシャツ襟にはウイングカラーが必須なのかどうかを考えます。

1.ウイングカラーとターンダウンカラーの違い

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△ ウイングカラー

ウイングカラーとは立ち襟(スタンドカラー)の一種です。燕尾服等の礼服のシャツ襟として用いられます。

 

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△ ターンダウンカラー(ワイドスプレッドタイプ)

一方で、ターンダウンカラーは、ビジネススーツを着る際の、まさに私たちが普段着ているシャツの襟のこと。レギュラーカラーとか、ワイドカラーなどは全てターンダウンカラーの一種です。

タキシードも礼服(準礼装)なのだから、ウイングカラーでよいのでは? と思うかも知れません。私も当初同じ感覚を持っていました。

しかし、コーディネートの参考にと、ネット上で画像検索をしたところ、欧米で撮影したと思われる写真の多くが、タキシードにはターンダウンカラーを合わせていたのです。

 

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△ Google画像検索で、英語でタキシードを示す"black tie"と検索した結果。タキシードの写真のうち、判別できるもの全てがターンダウンカラーだった(赤枠部分)。

 

2.専門店に聞いて回る

そこで、その他の貸衣装屋や礼服を取り扱う店に、この件を聞いて回ってみました。

貸衣装屋その1

冒頭の貸衣装屋とは別のお店ですが、こちらでも「原則ウイングカラーが良い。タキシードではレギュラーカラーのシャツは着ない」とのこと。

「着ない」とまで言い切られたので、海外の写真を見せたところ、「カジュアルなシーンでは、場合によっては着るのかも知れないですね」とあまり要領を得ない回答でした。

貸衣装屋その2

もう1軒、都内の貸衣装屋で聞いてみました。

「どんなシャツを着るかは自由」としながらも、「当店で扱うタキシード用のシャツは、ウイングカラータイプのみ」とのこと。

こちらも、実質的には、タキシード用のシャツとしては、ウイングカラーしか想定していないことが見受けられます。

有名百貨店の礼服売り場

東京新宿にある某有名百貨店にある礼服売り場へ。

若手の担当者にまず話を聞くと「基本的にはウイングカラーのものをオススメしております」という返答が。

しかし、上役の方にも話を伺うと「ウイングカラー一色なのは、日本のローカルルールかもしれませんね。ただ、海外では9割方レギュラーカラーなので、海外のイベントに出る際はレギュラーカラーを使っています」とのコメントが。

ただ残念ながら、なぜ日本がウイングカラーで、海外はターンダウンカラーなのかは、「よく分からない」とのことでした。

有名百貨店のネクタイ売り場

東京銀座にある某有名百貨店にあるネクタイ売り場へ。そこで面白い話が聞けました。

話をお伺いしたのは、元々シャツ屋に勤めていたというベテランの販売員です。

いわく「外国人を中心に、レギュラーカラーのタキシード用シャツが無いか聞かれることが多い。しかし、既製品での取り扱いは無いので、オーダーシャツで対応している。」とのこと。

さらに、「タキシードは正式な礼装ではないからウイングカラーは不釣り合いという話と、ウイングカラーはホワイトタイならベルトが目立たないが、ブラックタイだと黒い首輪に見えて不格好になるから、という話を聞いたことがある」というコメントを貰うことができました。

古い写真では、欧米でもタキシードにウイングカラーを用いているものもあったことから、私も「燕尾服(正礼装)からタキシード(準礼装)へ夜の礼装の主役が変化する過程で、襟型も簡略化していったのでは?」と想像していましたが、「首輪に見える」という話は意外でした。

そこで、実際に自分でも比較してみることにしました。

(参考)ビジネス用のシャツは使えない

欧米では、タキシードにターンダウンカラーのシャツを用いるからといって、同じターンダウンカラーであるビジネス用のシャツをタキシードに使うことはできません

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△ 胸のヒダとフライフロント(比翼仕立て)の前開き

というのも、タキシード用シャツには、胸のヒダがあり、かつ前開き部分がスタッズ用の穴またはボタンが隠れるフライフロント(比翼)である必要があるからです。

 

3.実際に比較してみる

ウイングカラーの場合

正面

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正面から、ウイングカラーを見たところ。

側面

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横から。

確かに、ボウタイのバンドが、首輪のように見えてしまいますね。

ホワイトタイならば、襟と同化して見えづらいかも知れません。

背面

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背後から。

このニョロッとした白いバンドは、襟からボウタイがズレないようにするためのもの。ターンダウンカラーには無いディテールです。

 

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これも、後ろから見ると目立ちますね。

タイのつなぎ目が見える

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ボウタイはオーダーのタイ以外ではアジャスタブルタイプが主流です。今回使ったのもアジャスタブルタイプですが、ウイングカラーではご覧の通りつなぎ目が見えてしまいます。

金具もプラックマットで、つなぎ目も見えづらいフェアファックス製(↓)を使いましたが、それでもアジャスタブルを使っていることが分かります。

ターンダウンカラーの場合

正面

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正面から。

側面

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当然ですが、ボウタイのバンド部分は見えません。

背面

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このように、スッキリとした印象になります。

 

4. まとめと結論

以上から、私なりのまとめと結論は以下の通りです。

  • 日本では、タキシードのほとんどがシャツ襟にウイングカラーを用い、既製のタキシード用ターンダウンカラーシャツはまず無い。
  • 一方、現代の欧米では、ほとんどがターンダウンカラーのシャツが用いられている。ただし、古い写真ではウイングカラーも見られる。
  • ウイングカラーシャツに黒の蝶ネクタイを合わせると、首輪のように見える。また、アジャスターつきの蝶ネクタイがバレる。

結論:着たい方を着ればいいんじゃない?

結論が乱暴ですみません^^;

周囲に合わせたいという方は、日本ではウイングカラーを、海外ではターンダウンカラーを着用すれば良いでしょう

一方、欧米のスタンダードに合わせたい、黒い首輪に見えたりアジャスターが見えるのは嫌だ、という方はターンダウンカラーを着用すれば良いのです。

「タキシードには絶対ウイングカラー」というのは日本流のローカルルールである、ということを理解した上で、自ら着たい物(ディテール)を選べぶことが、重要なのだと思いました。

* * *

この記事にどのくらいの需要があるかは不明ですが、どなたかの参考になればと、備忘録的に残しておこうと思います。

また、タキシードのシャツ襟について、ほかに情報をお持ちの方がいましたら、ぜひコメント欄から書き込みをお願いします。

 

 

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