着こなし

ジャケットの前ボタンを全て留める ~台無しになる着こなし2~

投稿日:令和5年(2023) 7月9日  更新日:令和5年(2023) 8月20日 

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「首元が緩いと着こなしが台無しになる」という記事を書いたところ、他の台無しになる着こなしについて、コメントを複数いただきました。

そこで今回は、いただいたコメントの中から「ジャケットの前ボタンを全部留めてしまう」問題についてとりあげます。

実は、単なるマナーではなく、ジャケットの構造的な問題にもかかわっているのです……。

1.ジャケットのボタン「きちんと全部留める」は誤り

日本人は几帳面な方が多く、半開きの扉や引き出しを見かけると、ついつい閉じたくなってしまいます。

ジャケットのボタンも同様に考える方もいらっしゃるようで、実際(お堅い職業の方を中心として)しばしばジャケットを「全閉じ」になっている方を見かけます。

しかし、ことメンズのスーツやジャケットの前ボタンについては、全て留めてはいけません。

その理由に入る前に、ジャケットのボタンについて、留め方の原則を確認しておきます。

  • 2つボタン:上1つのみ留める
  • 3つボタン:中1つ or 上と中の2つを留める
  • 3つボタン段返り※:中1つのみ留める

いろいろ書きましたが、要は、ボタンが2つなら一番上を、3つなら真ん中だけ留めればOKです。

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△ ※段返りのジャケット。1つめのボタンが折り返されている。

 

2.マナーではなく構造的な問題

それでは、なぜ全てのボタンを留めてはいけないのでしょうか。

ボタンを外すのがマナーだから、という本や雑誌の記載を見かけることがありますが、この記載は正確ではありません。

ジャケットに不自然なシワができたり、傷みやすくなるから、という記載も半分正解ですが、もっとわかりやすく言うと、「一番下のボタンは実用では無く、飾りだから」です。

 

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上の写真は、左側が女性用のスーツ、右側が男性用のスーツです。

実は、女性用のスーツは2つともボタンを閉じるように設計されている事が多いです。そのため、1つめと2つのボタンは間が直線で、2つめのボタンから裾のカーブが始まります。

一方で、男性用のスーツは2つめの(下の)ボタンは飾りで、実際1つめのボタンから裾がカーブを描き、2つめのボタンとボタンホールは重ならない設計になっているのです。

そのため、男性用のスーツで、留める設計になっていない2つめのボタンを留めると、シルエットが崩れてしまうのです。

 

3.ジャケットは、ボタンを減らして進化した

スーツのジャケットは、詰め襟から変化したものです。

詰め襟のジャケットは、首の部分はホックで留め、第1ボタンから最後のボタン(大抵は5~7つ)まで全てを留めます。

その詰め襟(立ち襟)がシャツ襟に近い折り返しの襟(折り襟)になった後、さらに開襟シャツのように第1ボタンが外れフラワーホール(ビジネスマンだと社章をさすところ)になりました。

一部には折り襟と開襟状態の両用ができるジャケットも存在しましたが(例:WWII時代のドイツ軍の軍服)、第1ボタンを留めたときに折り目が見苦しいことから、多くは開襟専用となりました。

その後、第2ボタンまで解禁されるようになりましたが、今ではボタンホールすら無いデザインがほとんどです。

この時点では20世紀初頭の4つボタンジャケットですが、そのうち第3ボタンも無くなり(3つボタン化)、その下の第4ボタンを留めなくなり(3つボタン段返り化)、最近は第4ボタンそのものも無くなりました(2つボタン化)。

 

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△ 第1ボタンはフラワーホールに、第2、第3ボタンはボタンホールすら無くなった

これは想像ですが、このように上側のボタンを減らして進化してきたジャケットにとって、下側も同様に外さなければ、アンバランスになったのではないかと考えます。

 

4.例外

女性用ジャケット

先述したように、女性用のジャケットは2つボタンでも両方ともボタンを留めます。

あるテーラーによると、女性用のジャケットは、胸の膨らみに対応するため、一つ目のボタンが男性用に比べ下の方にあるため、バランスを取るために下側のボタンも出す(留める)ようになっている、のだそうです。

フロントカットが直角なジャケット(各種制服など)

また、開襟タイプのジャケットでも、軍人や警察官、民間でも公共交通機関職員の制服は、その多くが一番下まで留めるデザインになっています。

見分けた方としては(全部が全部ではありませんが)、裾が直角になっているデザインの場合は留める設計になってる場合が多いです。

やはり、整然とした雰囲気を出す必要のある制服は、付いるボタンを全て閉じる必要があるのでしょう^^;

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△2等陸曹(軍曹)の制服(防衛省のサイトより)。裾は直角で、全てのボタンを留めるタイプ。

 

ただし、東京メトロの制服は少し事情が異なります。

営団地下鉄時代は裾が直角デザインで「全部留め」だったのですが、民営化後は制服の改訂を繰り返す度にフロントがカーブを描き、かつボタン全部留めは踏襲されているので、例外はありそうです。それでも、私たちが着ているジャケットよりは開きは小さく作られています。

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東京メトロのプレスリリースより

私は鉄道に詳しくないのですが、調べて見るとJRの制服も同じ変遷のようです。国鉄時代は直角&全部留めだったのに対し、民営化後何度か制服改訂をするうちに、若干ラウンド&全部留めになっているようです。(この辺りの詳しい経緯をご存知の方、是非教えて下さい……。)

 

(おわりに)「台無し」の理由

今回、このテーマを取り上げた理由は2つあります。

一つは、単なるルールやマナーではなく、ジャケットの構造上の問題であって、シルエットへの影響やジャケットのダメージが大きいこと。

もう一つは、ちょっと気をつけるだけで簡単に解決できてしまう、いわばコスパ/タイパの良い改善ポイントだからです。

皆さんの身近に、ボタン全部留めの真面目な若手がいたら、是非そっとアドバイスしてあげて下さい。(ただし、まわりに人が居ないとき、かつバカにしたような感じにならないようにしてあげて下さい。)

 

 

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