先日、同僚との雑談の中で「ブラックスーツなら喪服代わりになるから便利だよね」といわれ、同意すべきか戸惑ってしまうシーンがありました。
そういえば、スーツ量販店でビジネススーツを探していたときにも「このスーツなら喪服代わりになりますよ」という説明を受けた記憶があります。 果たしてこれは本当なのでしょうか?
今回は、喪服とブラックスーツの違いと、喪服代わりとして使えるのかを採り上げます。
1.喪服とブラックスーツの違い
まずは、喪服とブラックスーツは何が違うのかを確認します。
なお、ここで言うブラックスーツとは、ビジネスやパーティー用として売られている、黒い生地を使った喪服専用ではないスーツのことを言います。また、ここで言う喪服とは、弔事を中心に冠婚葬祭で使える日本式の略礼服を言います。
違い①:黒さが違う
一番の違いは黒さが違うこと。黒と言っても様々な濃さがあるのです。
喪服の黒は漆黒である一方、ブラックスーツ、特にビジネス用として売られているものは、若干グレーがかっていることが多いです。
色自体は両者とも黒に分類されます。しかし、光の反射率が違うため、両者を比較すると明確に違いが分かります。(実際に生地メーカーも、喪服/礼服用の黒色生地を販売しています。)
普通のスーツを着ている人が沢山いる中でブラックスーツを見ると「黒いな……」と思いますが、喪服の人が沢山いるなかでみると「妙に明るい……」と感じてしまいます。
違い②:光沢感が違う
ブラックスーツは、遊び用の服としても存在し、その場合はかなり艶のある生地が選ばれることがあります。
一方で、弔事では光沢は避ける傾向にあるため、喪服用の生地はある程度マットなものを使うことが多いのです。
違い③:デザインが違う
遊び用のブラックスーツは、例えばタキシード/ディナースーツっぽい意匠(例えば拝絹や側章)や、華やかなデザイン(例えば極端に絞ったウエスト、極端に細い襟幅など)が取り入れられていることがあります。
一方、弔事に使われる喪服はおとなしいデザインであることが求められます。
こちらはデザインの違いは単品で見たとしても分かるので、要注意です。
また、喪服の場合は使用頻度が低いため、体型変化に柔軟に対応できるようになっていることもあります。(アジャスター付きのズボンなど。)
2.喪服代わりになるブラックスーツとは?
それでは、どんなブラックスーツならば、喪服として使えるのかを考えてみます。
前項の結果から、
- できるだけ黒い色であること
- 光沢感がないこと
- おとなしいデザインであること
というブラックスーツなら、喪服としても使えると言うことになります……が、こういうブラックスーツを一般的には「喪服」って言いますよね^^;
そして、喪服と見なせる服を、冠婚葬祭以外の普段のシーンで使えるか、という問題もあります。(喪服で出社など。)
3.オススメは、喪服専用のスーツをきちんと用意しておくこと
ということで、私のオススメは、喪服は、喪服専用のスーツを用意することです。
理由は、整理すると2点です。
二兎追うものは一兎をも得ず
ファッションにおいて、「XXにもXXにも使える」というフレーズは良く使われます。たとえば、「上着としてもコートとしても使えます」とか「男女兼用のデザインです」とかです。
ただ、一部例外はあるものの、それらは「上着としては大きく厚く長く、コートとしては薄く短い」「男が着るには小さく、女が着るには大きい」という、どっちつかず、まさに二兎追うものは一兎をも得ずのパターンになることが多いのです。
これと同様、「喪服としても、ブラックスーツとしても使えるスーツ」は、「片方の用途しか使えない」か、「どちらとしても使えない」かの2択になる可能性が高いです。
必要になったとき、使えないことがある
また、百歩譲って両用できたとしても、まだ問題はあります。
それは、弔事で直近に使う必要が出ても、普段使いしているブラックスーツを出動できるか、ということです。
普段使いしていれば、運悪く必要なタイミングで汚した、クリーニングに出していた、傷つけた、修理に出していた、など、本当に必要なときに使えない状況も考えられるからです。
4.まとめ
ビジネスに使える様なブラックスーツは実質濃いめのチャコールグレイですし、色が漆黒でもパーティー用のブラックスーツはテカテカで派手なデザインの可能性が高く、そして喪服の要件を満たしたブラックスーツは……冠婚葬祭以外には使えないので喪服と言うべきではないでしょうか。
結論:ブラックスーツは喪服の代わりにならず、専用のスーツを用意した方がよい
* * *
今回は普段とテイストを変え、皆さんと議論したく、あえて断定的に書いてみました。
近年の葬式はドレスコードが緩くなっている、とか、それでもビジネス兼用スーツは目立って浮く、とか、賛成反対どちらもウェルカムですので、ぜひご意見を下のコメント欄からお寄せ下さい。