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貿易統計から見る、ジャケパン回復とスーツ没落(2022年/R4版)

投稿日:令和5年(2023) 1月28日 

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昨日、令和4年(2022年)分の貿易統計(速報値)が発表されました。

一見、ファッションと貿易統計とは関係が無いように感じます。しかし、日本で消費される衣料品の98%が輸入品によって賄われていると言われ、貿易統計を見ることで、ファッションの趨勢を垣間見ることが出来ます。

今回は、コロナ禍によって激減したスーツとジャケパンの輸入量が、3年目の今年、どの様に回復しているのかを見ていきます。

 

1.スーツはほとんど復活せず

まずはスーツの状況から。

昨年の記事では、20年前の1,200万着/年から、クールビズ、消費増税などを経て800万着を割り込み、コロナ禍で400万着を切るという異常事態になったことをお伝えしました。

その後どうなったのでしょうか。

早速グラフを見て頂くと、僅かですが反発しているものの、500万着を切る状態で近年ワースト2と、依然悲惨な状態です。

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R3年('21)の異常な落ち込みの反動で回復があるかと思っていたのですが、ほとんど振るわなかったようです。

 

2.ジャケパンはコロナ以前の水準まで回復

一方で、ジャケパンの輸入量は、コロナ以前まで回復しています。

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ジャケットの輸入量は、20年ほど前のクールビズブームを除くと、長い間スーツの後塵を拝していました。しかし、コロナ禍でスーツの輸入量が激減したことで逆転し、ここ数年はジャケットの方が多く輸入されている状況でした。

そんな中、昨年は761万着で、コロナ直前の759万着を超えていることが分かります。

スーツの輸入量が472万着でしたから、その差は1.6倍を超え、差がかなり広がりました。

 

3.読み取れること

貿易統計の数値に加え、スーツ量販店各社のIR資料を読むと、以下の事が分かってきます。

  1. スーツは社会生活が元に戻った影響で、冠婚葬祭が復活し、需要がわずかに回復した。
  2. リモートワークと出社のハイブリット化によりビジネス服のカジュアル化がさらに進行した。
  3. ジャケパンとスーツの需要が逆転した結果、量販店各社が、軸足をスーツからジャケパンに移した

詳しく見ていきましょう。

冠婚葬祭の復活とスーツ

コロナ禍での急激なスーツ需要の低迷は、当初リモートワークの普及や対面会議の減少がメインだと考えていました。

しかし、仕事でスーツを着ない人の、冠婚葬祭用のスーツ需要の影響もかなりあったようです。

コロナ禍で、結婚式や披露宴が無くなり、葬式も家族だけになったため、フォーマルスーツのが売れなくなったということです。

そして、アフターコロナを迎えつつある中、前者のリモートワーク云々での影響はあまり回復していないが、後者の婚葬祭需要が復活した結果、あの僅かな輸入量の反発に繋がった、と言うわけです。

販売の軸足をスーツからジャケパンへ

そして、量販店各社も、ジャケパンとスーツの需要が逆転し、販売の軸足をスーツからジャケパンに移しているようです。

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△青山商事決算説明会資料(2023年3月期)より抜粋

「洋服の青山」を展開する青山商事のIR資料(2023年3月期)に大きく書かれた、「スーツの青山からビジネスウェアの青山へ」というキーワードが特徴的です。

 

おわりに

かつての1/3まで輸入量が減少したスーツ。まだ本格的な「コロナ禍明け」が訪れたわけではありませんが、その回復は数字上、ジャケパンに先を越されたようです。

スーツ量販店各社のIR資料を見ると、マス向けのジャケパンへの軸足変更と並んで、「スリーピーススーツの展開拡大」「クイックオーダースーツの拡大」といった文言が並んでいます。

個人的には同好の同志が増えるという意味で嬉しく思いますす。しかし、スリーピーススーツやオーダースーツは、現在、そして恐らく今後もコアなファン層を中心とした需要がメインで、マス層にまで広まるのか、個人的には懐疑的です(^^;

先日、新型コロナウイルス感染症の5類引き下げのニュースがありましたが、本格的な「コロナ禍明け」でスーツの需要がどの様に変化していくのか、また来年もこの時期に、再びチェックしてみたいと思います。

 

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