真夏の電車、車内を見渡すと、「スーツからネクタイを外しただけ」はもちろん、「男子中学生の夏服」、「香り立つ汗と生乾き臭」、「短パンとすね毛の密林」等々、少し対策すれば良くなるのに……のオンパレードです。
今回は、そんな夏のビジネスカジュアルを格上げできる、おすすめのポイントをご紹介します。
1.(おさらい)清潔感を大事にする
夏はなにより清潔感が失われやすい季節です。ビジネスマンとしては、ファッションよりも、まずは清潔感を保つことが重要です。
清潔感の欠如は、ビジネスの装いにおける一発退場の赤点といえます。
前回の記事で詳細を述べましたので、詳しくは以下のエントリーをご覧下さい。本稿では、要点のみ箇条書きで記載しておきます。
- シャツの汗染みを防ぐ(脇汗パッド付きのシャツ等を活用)
- シャツの、下着や乳首の「透け」を防ぐ(ベージュのカットオフシャツを活用)
- 足のすねや胸元、脇の体毛露出を防ぐ(靴下、アンダーシャツ等を活用)
- 汗や脇の体臭、衣服の生乾き臭はもちろん、香水の付けすぎにも注意する(制汗剤、洗濯の工夫、香水の適正量を守る)
- 日焼けやかぶれなど、皮膚の荒れも清潔感に繋がるので注意する(日焼け止めの活用、汗のケアに気をつける)
2.素材感を大事にする
清潔感をクリアしたとして、次は何に注目すべきでしょうか。
夏は寒いときと違い、重ね着によるコーディネート表現が難しい季節です。そのため、素材感を大事にすることが必要だと、私は思います。
ここで言う素材感とは、夏らしく見える生地のこと。見た目にも涼しく、体感でも涼しくなる生地です。
具体例をみていきましょう。
麻などのザックリとした素材
例えば麻。麻は暑い時期に好まれる素材の代表格です。それは、ザラザラとした素朴なテクスチャが、見た目に涼を感じさせ、かつ吸水/蒸発に優れた素材特性が体感としても涼しくしてくれるからです。
用途としては、シャツ、パンツ、ジャケットなど。ただし、パンツやジャケットはシワになりやく、カジュアルに見えやすいので、気になる方はウール混紡のほうが扱いやすいでしょう。
メッシュなどの通気性の良い素材
風通しが良さそうにみえる、メッシュ素材もおすすめです。
具体的には、ベルト、腕時計、鞄などの革小物、ジャケットやシャツなどの服でもありです(バスケット織りなど)。
もちろん、メッシュにすることでカジュアル寄りのコーディネートにはなります。色を工夫したり、細かいメッシュを使ったりと、ビジネス用途に相応しいかの見極めは必要です。
薄手の素材
これは、言うまでも無いかも知れませんが、生地の厚さも素材感に繋がります。
スーツやジャケットでは、春夏秋冬、オールシーズン(で使える)を謳う製品が増えてきました。しかし、「なんにでも使える」は「何にも使えない」の裏返しになる危険性をはらんでいます。
オールシーズン素材は、夏に「着られるか、着られないか」でいえば、着られます。しかし、一段オシャレに見せるためには、半歩だけその季節(または次の季節)寄りに振った装いが必要です。
従って、夏場は、春や秋には着られない、薄手の生地でコーディネートする事で、より夏らしい雰囲気を出すことが出来ます。ただし、ビジネス用途においては透けすぎには注意しましょう。
3.爽やかな色を使う
次に大事なのが、色使いです。
淡色系を中心にコーディネートすることで、涼しさや夏らしさを表現出来ます。
オススメの具体例をご紹介しましょう。
薄い灰色か、生成りのパンツ
夏のカジュアルなコーディネートとして、白のパンツは定番です。汚れが目立ち落ちにくいなど、メンテナンスに難ははありますが、清潔感があり、シャツやジャケットに何色を持ってきても合わせやすいからです。
しかし、ビジネスとなると、職種や業種にもよりますが、真っ白のパンツ(スラックス、トラウザーズ)はカジュアル過ぎることも。
そんなときにオススメなのが、薄い灰色か生成りのウールパンツです。すこしトーンを落とすだけで、休日感が減り、ビジネスにも使えるようになります。
ただし、クリース(両足正面の中心線)がしっかりついていることが条件です。
霜降りのシャツ、ジャケット
夏らしい色、例えば薄い水色でも良いですが、それが霜降り状になることで、より爽快感がアップします。
シャツの場合は、シャンブレー生地が代表格です。(シャンブレーとは、霜降り状の平織り生地を言います。要は、白色の霜降りが混ざった、薄手の生地です。)
また、前項で紹介した麻のシャツやジャケットにも、霜降り状のものが多いので、探してみて下さい。
4.半袖は難しい
半袖といえば夏の象徴です。しかし、これは、非常に扱いづらいディテールであると感じています。
というのも、「半袖シャツ」に染みついた、「中高生の制服感」や、世の中の「夏のダサいおじさんレッテル」が強すぎるからです。
個人的には、半袖シャツも、サイズや素材に気をつければ格好良く見せることが出来ると思っています。しかし、自己表現であるファッションは、同時に、他人に判断されるものでもあるため、そのレッテルを剥がすためには高いスキル(や顔や体型)が要求されます。
また、いざというときにジャケットを羽織りづらいのもデメリットです。
できれば、長袖を綺麗にまくったほうが良いと感じています。
5.靴も妥協しない
服が軽くなると、靴も軽くしたくなるもの。 そこで大量発生するのが、休日用の完全カジュアルスニーカーを履いたサラリーマンです。
もちろん、(スーツスタイルの一番フォーマルな装いである)黒のストレートチップが最適とはいいませんし、全てのスニーカーが不適とも思いません。
しかし、上がビジネス用途のジャケパンなのに、下が純粋な運動靴というのは、やはりちぐはぐです。
例えば、色は黒では無く茶に、紐靴ではなくモンクストラップにする、など、革靴を中心としつつカジュアルに寄せると、ビジネスウェアとしての端正さを保つことができます。
最後に
夏の装いは本当に難しいです。
最初に述べたとおり、重ね着が出来ないため、アイテム一つの選択が全体の雰囲気を大きく左右するからです。
また、しっかりとしたルールが整い、そのルールを守ればある程度美しく見えるスーツスタイルとは異なり、夏のビジネスカジュアルは自由度が高い故に自身の判断に委ねられる(つまり、自身の力量がためされる)部分が多いからです。
しかし、それでも一定の法則やTIPSはありますので、それを見つけて活用し、夏のビジネスカジュアルを楽しんでは如何でしょうか。
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今回、記事を書く中で最も悩んだのが半袖です。
レッテルの問題もありますが、オシャレな型/ディテールの半袖シャツがあまり売っていない、ジャケットを羽織ったときにシャツのカフ(袖)が出ず袖元が気になったりと、いろいろ課題が多いため、あえて今回の様な書きぶりにしました。
一方で、半袖シャツの方が涼しげだとか、こうすると格好良く着られるという意見がありましたら、是非、下のコメント欄からご意見をいただければ幸いです。(ある程度情報が集まったら、考察した記事も書いてみたいです。)
また、その他のビジネスカジュアル向けのTIPSも、是非お寄せ下さい。