先日読者の方から、「ファッションにおいて”一点豪華主義“は批判される事が多いが、どう思うか」とのメッセージをいただきました。
個人的にはあまり意識したことは無かったのですが、一点豪華主義は男性ファッションのダメ典型と批判するコラムが複数ある一方、少数派ながら一点豪華主義を取り入れるべしとアドバイスしているものもありました。
そこで今回は、ビジネスにおけるスーツスタイルに焦点を絞った上で、一点豪華主義はアリなのか、ナシなのかを皆さんと一緒に考えてみたいと思います。
1.一点豪華主義とは
定義
議論を始める前に、そもそも一点豪華主義とは何かを先に定義しておきたいと思います。
様々な解釈があると思いますが、ここでは、
「ファッションにおいて、特定のアイテム一点にのみ、豪華(贅沢で華やか)なものを用いること。」
と定義しておきます。
一点豪華主義の代表例
男性のファッションにおける一点豪華主義の代表例としては、以下の物があると思います。
腕時計
入手しやすい高額アイテムの代表例は腕時計でしょう。
スーツやネクタイ、靴などはどんなに高くても一般的に100万円未満です。しかし高級腕時計は100万円を超える物がザラです。つまり、豪華にし易いわけです。
また、認知されている高級ブランドが多いこと、さらに金無垢やダイヤモンドなど、一目で高級/豪華とアピールしやすいことも理由です。従って、豪華にする効用を得やすいわけです。
鞄(かばん)
次に多いのが鞄ではないでしょうか。
高額なものや認知されているブランドが多いこと、さらにブランドロゴや意匠を配置しやすいことで、時計に次いで豪華にし易く、その効用も得やすいアイテムだと思います。(とはいえ、男性よりも女性の方が顕著かもしれませんね。)
靴(くつ)
ここからはファッション好きの領域かも知れませんが、靴も一点豪華主義の隠れた代表例です。
例えば、2~3万円のツープライススーツを着ているが靴は20万円近い、という方も本サイトをご覧の読者にも少なからず居るように思います。
一目で――とはいきませんが、見る人が見ればもちろんのこと、雰囲気でもある程度高級靴と分からせることが出来るのもポイントです。
その他にもスーツ/コート(生地だけで凄いのありますよね)、ネクタイ、シャツなどが豪華にする対象としてあるかと思いますが、本記事は定義が本筋ではありませんので、早速賛成/反対両陣営の意見を見ていきたいと思います。
2.「悪い」側の意見
まずは、多数派と思われる一点豪華主義反対派の意見を確認してみます。
①成金趣味に見える
最も批判されているのが「成金趣味に見える」という点でしょう。一点豪華主義は、一点がきらびやかに悪目立ちし易いのです。
従って、「突然大金を手に入れた人が、考え無しにとりあえず高い物を身に付けてみた」や、「頑張って見栄を張ってみた」というストーリーを彷彿とさせてしまうわけです。
成金趣味の何が悪い?
なんで「成金趣味」と見なされるのはデメリットなのでしょうか。
一つは、「突然大金を手に入れた人」や「計画性の無い見栄っ張り」は、ステレオタイプ的な判断の下では、信用や堅実性を重視されるビジネスシーンにおいて不適当と見なされるからだと思います。
もう一つは、(一部の人からだと思いますが)「僻(ひが)まれやすい」というのもあるでしょう。高価なアイテムを身に付けた者がいる場合、無意識に相手を貶(けな)して自己の優越性を確認しようとするアレです。そして、貶すターゲットには信頼も信用もしないので、ビジネス上不利になるわけです。
理性的に考えると、金持ちはため込まずにどんどん金を使い、私たち庶民にまでお金を行き渡らせて欲しいと思いますが……^^;
②バランスが悪くなる
そして、一点豪華主義は言い換えると「一点以外貧相主義」になる恐れがあります。これが一点豪華主義反対派に多い意見の2つ目です。(なお、「一点以外貧相主義」は本サイトの造語です……。)
一点以外貧相主義
一点豪華主義は、「コレだけやっておけば良い」的に受け取られることがあります。
それを真に受けると、靴やスーツはボロボロだけど時計だけは妙に高そうだ、とか、シワだらけのだらしない格好なのに鞄だけはブランド物だとか、そういったちぐはぐさが出てしまいます。
優先順位として、ボロボロの靴やシワだらけのスーツを先に改善すべきでは? というのが主旨でしょう。
相対的にも「一点以外貧相主義」になる
加えて、一つのアイテムを豪華にした場合、相対的に他のアイテムがより貧相に見えてしまう事も批判の念頭にあると思います。
悪い意味でコントラストが付いてしまうわけですね。
3.「良い」側の意見
一方で、一点豪華主義を推奨する意見があるのも、冒頭で述べたとおりです。
私が本やネットで読んだ限りでは、こちらも大きく2つに意見が分けられます。
①お金と時間を効率的に使える
1つめは、一点豪華主義により、コーディネート全体が格上げされるというものです(批判派の意見と矛盾していますが、この点は詳述します。)。
予算や時間に限りがある中で――特にランニングコストまで考えると、コーディネート全てを豪華には出来ません。しかし、一部良い物を取り入れることで、全体の格が底上げされるという意見です。堅い言い方をすれば「選択と集中」ですね。
これは、靴が例えとして良く出てきますよね。靴が高級品ならば、安いスーツも高く見える……というアレです。
②経験を買える
2つめは、「高い物を買い、身に付け、メンテナンスすることは良い経験に繋がる」というものです。
例えば、高級な靴を買ったとします。そうすると、払った対価を無駄にしないために、どう履けば良いか、どうメンテすれば良いか等々を自身で調べ、実践していくわけです。
これにより、①の効果に加え、服飾に対する考え方やコーディネートも改善されるという意見です。
どちらかというと、中長期的視野に基づいたメリットですね。
4.私の考え
つづいて、私なりに一点豪華主義の評価を考えてみました。
条件さえ満たせば、理にかなった一点豪華主義
最初に思ったのは、確かに否定派の意見はもっともだけれど、条件さえ満たせば肯定派の考えを生かせるのでは? ということです。
注目すべきは、肯定派は「一点豪華主義はコーディネート全体の格上げができる」といっているのに対し、否定派は「一点豪華主義は一点以外貧相主義であって、ちぐはぐなコーディネートになる」と、真っ向から対立しているように見える点です。
しかし、ここでいう肯定派と否定派の「一点豪華主義」には、どうも食い違いがあるのでは無いか、条件を満たせば問題無いのではないか、と考えました。
選択と集中は「足切り点」を意識する
たとえば、コントラストが悪目立ちするのは、豪華にしたアイテム以外があまりにもみすぼらしいからでは無いでしょうか。
例えると、学生であれば、いくら特定の教科が良くても他の捨てた教科で足きりにあい落第してしまい、社会人であれば、いくら特定分野に秀でた能力があっても素行が悪ければ組織から追い出されるのと同じですね。
ですから、「一点以外貧相」の”以外”の部分も、足きりに引っかからない程度に、豪華では無いけれどある程度新しく、メンテナンスされ、サイズの合ったものを着るだけで、悪目立ちするコントラストは防げるのではと思います。
「豪華」だけでなく「上品さ」も意識する
コントラストが悪目立ちしないもう一つの方法として、「豪華」側を上品にすることも有効だと思います。
つまり、「一点豪華主義」から「一点上質主義」にしてしまおう、というわけです。
例えば、名が売れすぎたブランドの金無垢ケースブレスにダイヤがちりばめられた腕時計では無く、品質とデザイン重視のブランドで、金無垢では無くステンレス(またはホワイトゴールド)の腕時計にする、といった具合でしょうか(金無垢ブレスジャラジャラを革バンドするだけでも違うかも)。
「タコツボ」から「幅だし」したっていい
そしてその「上質」には、加えてランニングコストも重視することで、初めは選択と集中をせざるを得なかったタコツボ型の一点豪華主義(改め上質主義)から、他のアイテムにも「幅だし」を出来る様になるのでは無いでしょうか。
例えば、高価だが見栄えが良く上質な良い靴を手に入れたとします。それによって、靴を大切にすること、手入れをすることに目覚め、他のアイテムを揃える余裕と欲求が生まれます。そして、スーツや鞄、時計なども、同様に永く使える上質な物を探し、大切に扱うでしょう。
(まとめ)一点豪華主義と、これ実行する上でのポイント
少し長くなりましたのでまとめます。
- 一点豪華主義は成金趣味に見え、コーディネートのバランスも悪くなるというデメリットがある
- しかし、うまく取り入れれば、効率的にコーディネートを格上げできる上、良い経験も得られる
- 上手くやるポイント1)「一点」以外の「足きり」を発生させない気遣いをする
- 上手くやるポイント2)豪華よりは上質であることに重きを置く
- 上手くやるポイント3)初期費用は豪華でもランニング費用は抑え、将来的に他アイテムへの幅だしも視野に入れる
こんな所でしょうか。
自分なりの結論としては、
「やり方に気をつければ、一点豪華主義でも良いんじゃ無いの?」
です。
ご質問頂いた方の参考になりましたら幸いです。
なお、あくまでこの結論は私個人の考えですので、肯定派否定派問わず、みなさんのご意見もぜひコメントからお寄せ下さい。