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スポーツ庁の「スーツスタイルにスニーカー」施策を考える

投稿日:平成29年(2017) 10月8日 

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今週、衝撃的なニュースがありました。

ニュースそのものは、スポーツ庁が、国民の健康増進を目的として、スニーカー通勤などを呼びかけるものです。

問題は、記者会見に登場した鈴木スポーツ庁長官がタイドアップしたダークスーツに真っ白なスニーカーという、とても愉快な格好だったことです。

そこで今回は、賛否入り交じるであろうこの施策について、考えてみたいと思います。

1.スポーツ庁「FUN+WALK PROJECT」の概要

まずは、この施策がどんなもなのか、簡単に整理してみましょう。

目的は国民の健康増進

刺激的な「スーツ×白スニーカー」の記者会見が行われたのは、つい先日の10月2日でした。

その中で鈴木長官は、

「日頃、体を動かす習慣が無い20~40代が、(医療費増大の観点から)次世代に迷惑を掛けない生き方を」すべきで、

「運動を定期的に行っている者と、体に良くない生活習慣をしている者とでは、保険料に差がつく時代になる可能性がある」とも発言し、

「1日8千歩を目標に」歩かせることで、「国民の健康を増進させ」る

などと本施策の意義を発表したようです(出典:「「働く世代の生き方、覚悟を」鈴木大地長官、熱く提言」Asahi.com, H29.10.8閲覧)。

そして、来月11月からデモイベントを開始し、来年(平成30年)の3月から本格的にキャンペーンをスタートさせるとのことでした。

詳細

詳細は、スポーツ庁のニュースリリースをご覧下さい。

「“歩く”をもっと“楽しく”『FUN+WALK PROJECT』開始」
http://www.mext.go.jp/sports/b_menu/houdou/29/10/1396838.htm

衝撃的な写真

スポーツ庁の公式Facebookに、件(くだん)の写真が掲載されていました。それがこちら。

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(出典:スポーツ庁の公式Facebookアカウント

鈴木長官はスポーツマンで体型がよく、スーツがとても似合う方なのですが、白スニーカーはどうしてもちぐはぐ感が否めないです……。

そこで、もう少しマシなやり方は無かったのか、考えていこうと思います。

 

2.スーツにスニーカーは似合う?

スニーカーはカジュアル要素

まず、スーツにスニーカーを(何も考えずに)あわせると、なぜ「ちぐはぐ感」が出るのかを考えてみます。

一般的に、スニーカーはスポーティで、かなりカジュアル寄りなアイテムです。一方、スーツはその反対であるドレス要素の強い服装ですよね。

タイドアップした(ネクタイを結った)全面ドレス要素のスーツに、カジュアル色の強いスニーカーを合わせれば、当然違和感が出るわけです。

全身ジャージに、ストレートチップの黒革靴を合わせるのと、似た様なものですね。

スーツの統一性を崩す

また、スーツというのはその名の通り、統一性がとても大事な服装です。

スーツは、上下に共地(ともじ;同じ生地)を使い、極力肌を露出しないデザインで全身を纏うことで、統一感と安定感を生み出しています。

そこに、カジュアルでハイコントラストな白スニーカーを突っ込めば、当然その統一感が失われます。

もちろん「ハズシ」でカジュアルな要素を持ってくることはあります。しかしそれは、お洒落上級者が意図的に(かつ、他人から見ても意図的だと思わせる手法で)ハズした場合に限られます。

ジャケパンならアリ?

個人的には、スポーティなジャケパンスタイルなら、やり方次第ではスニーカーもアリでは無いかと思っています。

例えば、白いスニーカーであっても、ズボンに白やオフホワイト、薄い水色などのカラーパンツをもってくれば、ある程度の統一感が出ることでしょう。

とはいえ、多くの業種で、ビジネス用途にカラーパンツは難しいもの。その場合は、白スニーカーではなく、茶革などシックな素材を使ったスニーカーに、ミドルグレイのパンツを合わせれば、ビジネスカジュアルとしては及第点になるのではと思います。

 

3.「スニーカー」が目的化していないか

ここまで、スーツにスニーカーは合うのか? を考えてきました。しかし、そもそもこの施策の目的は、国民の健康増進であったはずです。

スポーツ庁のプレスリリースによると、

目的:「歩く」習慣の定着などスポーツ人口の拡大を通じた健康増進

アクション:スニーカー通勤など“歩きやすい服装”での通勤

とあります。果たして、この目的を達成するための手段として、本当にスニーカー通勤が適しているのでしょうか?

スーツスタイルのサラリーマンを歩かせるには?

このプレスリリースに準拠して、今回の施策を図表化するとこんなイメージでしょう。

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こうしてみると、ずいぶん回りくどいなぁ^^;という気はします。

別に、健康増進のためであれば、他の方法もあるわけで。

さらに、「歩く習慣の定着」や「歩きやすい服装での通勤」に絞ったとしても、なぜ「歩きやすい服装」の中に「歩きやすい革靴」か出てこなかったのでしょうか。

ということで、次に、本当に革靴は歩きにくいか、を考えてみます。

 

4.「革靴は歩きにくい」は本当?

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走りにくいが、歩きにくくはない

個人的な感想ですが、革靴はそこまで歩きにくい靴では無い、と考えています。 むしろ、平坦で舗装された道であれば、下手な軽すぎるスニーカーより、革靴の方が楽です。

もちろん、ラスト(木型)やサイズが自分の足に合っていて、それなりに履き込んで革が足になじんでいることが前提ですが……。

一方で、革底のクッション性とグリップ性には限界があるため、走りにくさは認めざるを得ないデメリットです。

クッション性が良い革靴も出てきている

また、革靴の課題として、中高年以降の声として多いのが、クッション性の低さから来る膝の痛みです。

しかし、リーガルウォーカーなど、見た目はきちんとした革靴でも、クッション性にも配慮された製品も出てきています。

したがって、一足飛びにスーツにスニーカーを合わせる努力をしくても、大丈夫なのではないてしょうか。

 

5.FUN+WALKに対する意見

最後に、今回の施策に対する私なりの意見を述べたいと思います。

① カジュアル度別の「装い具体例」を見せるべき

サラリーマンは、業界、職種さらに年次などによっても、カジュアル度の許容範囲は大きく異なります。

そのため、ひとくちに「歩きやすい格好」といっても、単純に白いスニーカーを履かせるだけではなく、カジュアルの程度別に、具体例があると良いなと感じました。

よっぽどの達人で無い限り、ファッションは、他人の装いを参考にする(真似する)ところから始まります。

従って、国民に格好良いと思わせる、歩きやすい格好の具体例を見せると、理解されやすいのでは無いでしょうか。

リベラルな方からすると、政府の装い例を真似することはもちろん、そもそもファッションに口を出すことそのものに拒否感があるかも知れませんが……^^;

② 押しつけない

医療費削減の観点から、国民へ体を動かすよう促すのには一定の理があると思います。

しかし、「体に良くない生活習慣」をしている人が「次世代への負担」になるといった主旨の発言をし、このような施策を推し進めることには、ファッションならぬファッショな感じがして抵抗感があります^^;

もちろん、この発言は私が直接聞いたわけで無く、あくまで反体制色が強い朝日新聞の電子版をもとにしているため、ある程度のバイアスを考慮する必要がありますが……

ファッションというのは、(民間における)一定のルールのもと、自由であるべきだと思います。

かつてクールビズが、「軽装も可」という表現から、服装の自由を奪いかねない「ネクタイでの来庁はご遠慮下さい」になったような、押しつけのファッション指導が横行しないように望みます。

 

6.おわりに

私の意見は以上の通りですが、皆さんはどう思いますか?

スーツにスニーカーを合わせることについて、歩きやすいスーツスタイルについて、ご意見をお持ちの方は、是非コメントをお寄せ下さい。

私はどちらかというと服装にはクラシカルな――保守的な嗜好があるので、スポーツ庁による進歩的な取り組みに少し抵抗があったことは事実です。ただ、それを差し引いても、もう少しやりようはあったのでは無いかと、思う次第でした……。

 

……。

……と、ここまで書いてみて、鈴木長官の「スーツに白スニーカー」姿は、むしろ話題作りのため、意図的にやったのでは無いかと思えてきました。

SNSが発達した現代、このように賛否が分かれるやり方をする(いわゆる炎上させる)ことで、スポーツ庁の施策が、とても効率的に拡散できたからです。

その場合、本サイトもまんまとその手法に乗せられた、ということになりますね^^; どこの広告代理店が受託したか知りませんが、うまいやり方です!

 

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