皆さんのスーツやジャケットにはどの様なボタンが使われていますか?
黒、茶、メタル、艶有り艶無しと、様々な種類があると思います。
ボタンは「留める」という機能以上に、装飾としての役割が非常に大きい素材です。
そこで、今回はスーツやジャケット用のボタンの選び方を考えます。ボタンの種類、どこで見つければ良いのかなどもご紹介します。
普段既製服しか買わないから、ボタンで遊べないよ――と思うかも知れませんか、ボタンを付け替えは意外と簡単でとても効果的です。
スーツの上着をジャケパン用の上着として使うとき、雰囲気を変えたいときなど、この機会にボタンについて考えてみませんか?
奥が深いボタン選び
「ボタン選びを考えます」などと軽く冒頭で述べましたが、ボタン選びは凄く楽しい一方、同時にとても奥の深いテーマでもあります。
今回は、まずボタンにどの様な種類があるのかを述べ、考えの前提を整理します。
続いて、簡単な選び方のコツ、最後にボタンに凝るにはどの様なところで服を作れば良いのかを、考えていこうと思います。
本エントリーだけではとても語りきれる物ではありませんが、まずはその入り口だけでも、皆さんと共有出来れば幸いです。
1.ボタンの種類
ジャケットのオーダー(ビスポーク)を経験したことのある方なら、詳しくご存じかも知れません。
ボタンには、ざっと挙げただけで以下のような種類があります。
- 水牛
- 練り(カゼイン、プラスチックなど)
- ナット(アイボリーナット)
- 貝
- メタル
- くるみ(革)
今回は、代表的な水牛、ナット、貝ボタンを写真でご紹介します。
水牛ボタン
まず、スーツのボタンとして一番多用されるのが水牛ボタンとその代用品である練りボタンでしょう。
「艶有り」と「つや消し」の2種類に分かれますが、ジャケットに重厚な雰囲気を漂わせることが出来ます。
ナットボタン
ナットボタンは、雰囲気に軽さやカジュアルさを出したいときにおすすめです。
染色や加工が容易なため、様々な色/形のボタンを見つけることが出来ます。
貝ボタン
シャツのボタンとして貝ボタンは定番ですが、ジャケットでも利用可能です。
特に、夏用のジャケットを軽快に見せる効果が有り、写真のように麻素材と相性が良いです。
但し、他のボタン素材と違い、クリーニングで割れやすいというデメリットもあります……。
写真にはありませんが、そのほかに、軍服や制服、ブレザーなどで定番のメタルボタン、冬用のコート、ツイードなどと相性の良いくるみボタンなどが有ります。
2.選び方の基準
次に、仕事用スーツと週末用ジャケットの2つに絞り、どの様なボタンを選んだら良いか考えます。
なお、当然ですが紳士服には一定のルールがあります。
しかし、正装で無い限り、あくまでもそのルールは「基準」であって、適不適は「知る」より自分で「考える」ほうが重要です。
従って、あくまで目安程度にしてください。(なお、本サイトを御覧の方は耳にたこかも知れませんが……。)
仕事用スーツ
まず、タイドアップするウールのスーツ。これは仕事で着る用の、接客用を含むスーツについて。
生地と若干色が違う(かつ違いすぎない)水牛ボタンを選んでおくと間違いがありません。
少し崩したい場合は、茶系の水牛ボタンを使うなど、生地とコントラストをつけると良いでしょう。
水牛ボタンには艶有り、つや消しはお好みで構いませんが、艶有りの方が高級感があります(個人的にはスーツの生地の光沢と合わせるのが好みです)。
下の写真は青系の生地に茶の薄い水牛ボタンを配した物です。堅いビジネスユースには不向きですが、スーツとしても、ジャケットとしても使うことが出来ます。
週末用のジャケット
ナット、貝、くるみボタンがお薦め。
種類が多いので、一概にこういうのが良いとは言えないのですが、選びやすいのは以下のパターンでしょうか。
- 紺系の生地:茶のナットボタン
- 夏用の生地:貝ボタン(生地の濃さにあわせ、黒蝶貝、白蝶貝などを選ぶ)
- 冬用の厚手生地:装飾性のあるナットボタンかくるみボタン
上記だとすこし真面目すぎると言う場合は、プラスチック系のボタン(ファンシー系のボタン)も活躍できます。
下の写真は紺に茶の格子柄ジャケットに、練りボタンをあわせた例です。
本項目ではボタンの素材、色を中心に述べましたが、実は形も重要です。
表面が平らな物、たらい状になっている物、二重たらい状の物、彫刻がある物など……
シンプルなのが似合うか、装飾性を上げた方が良いかなどの観点で選ぶ必要があります。
(番外)ジャケットのボタンを手っ取り早く選ぶには?
「基準」からは外れますが、簡単な方法があります。それは、信頼できる店員に手伝って貰うことです。
吊し(既製品)を買うときはわかりやすいのですが、ビスポークの場合は生地とボタンから、完成時の雰囲気を予想しなくてはなりません。
そこで、選択 → 予想 → 完成品確認 の作業を繰り返している店員に意見を求めます。
「自分で決める」ことも重要で、最後は自分の責任で購入の決断をするわけですが、店員の知見を生かさない手はないですよね(私たちが購入する服の値段含まれる、人件費をフル活用すべきではないでしょうか)。
最初のうち、あるいは自信が無いときは「この生地に似合うボタンはどれですか?」を、2人くらいの店員に尋ね、その候補の中から選ぶと、簡単に、気疲れなく選べると思います。
(私も、生地やボタン、裏地などを決める際には、今でも店員に候補を出して貰い、その中から決めるようにしています。)
3.ボタンの見つけ方
では、ボタン選びをしやすくするには、またはボタンで遊ぶにはどの様にすれば良いのでしょうか。
現時点での2プライスに代表される紳士服量販店のボタンは、殆どがオーソドックスな物が中心で、まだまだボタンで遊ぶ領域に至っていません。
この領域は、まだまだラグジュアリーブランドスーツの専売特許領域です。
とはいえ、費用対効果の悪い、ブランド物のスーツはサラリーマンにとって選びづらいですよね。
そこで、ビスポーク(オーダースーツ)か、ボタンの付け替えの何れかをお薦めします。
個人店が穴場
実は、チェーン店より個人店の方が、ボタンを数多く取りそろえている場合があります。特に、センスの良いテーラーではなおさらです。
(チェーン店はコスト圧縮のため、定型のボタンしか在庫していない場合が多いのです。)
店員に、ボタンの種類は何種類くらいあるか訊いてみるよとよいでしょう。
だいたい50種類以上あれば良し。休みはボタン探しに全国放浪、在庫300種類超なんて例もあります。
また、そのボタンが良く整理されているかも確認して下さい。
ボタンの付け替え
実は、スーツのボタンは意外と簡単に、自分で付け替えることが出来ます。
ユザワヤ等の手芸店や、もちろんインターネットでも手軽に購入することができます。初めからボタンを付け替えることを前提に、吊しの(既製品の)スーツを買ってしまっても良いでしょう。
自分で付け替える場合、糸は専用のボタン付け糸(ポリエステル)を使うか、ロウ引きした麻の糸を使います。心配ならボタンとジャケットをテーラーや修理屋に持ち込めばOKです。
また、スーツやジャケットを処分する際、良いボタンならとっておきましょう。切り取ってビニールパウチに入れ保存しておけば、どこかのタイミングで付け替えることができます。
スーツはだいたいが生地選びと採寸に注目されがち(勿論とても大事なこと!)ですが、ボタンもそれらと同じくらい、ジャケットの印象を大きく左右します。
また、後から付け替えることも出来、様々な遊び方が出来る便利な存在でもあります。
もうひとつ、今回は触れませんでしたが、「ボタン付けの糸色」と「ボタンホールの糸色」によってもだいぶ印象が変わります。
この写真は、カフの下から2番目の糸色を変更した例です。
フラワーホールの糸色とあわせて行われることもある、典型的な「遊び」です。
「既製服じゃ無いよ」アピールでしかないという批判もありますが、個性的なボタンとあわせると、良いアクセントになります。
みなさんもボタン選びの楽しくも奥が深い世界に足を踏み入れてみませんか?