本切羽の袖側1つ、ボタンを外した状態
カンタンに言うと、本切羽とは「スーツの袖が、袖ボタンによって開閉できる仕様」です。
2回目の今回は本切羽のメリットを考えてみたいと思います。
ビスポークスーツ(オーダースーツ)の意匠として
真っ先に挙げられるのが、ビスポークスーツとしての自己主張/自己満足という点です。
既製のスーツは袖丈を長く作っておき、購入者に合わせて袖を詰めます。このとき、本切羽にしてしまうと袖の長さが変更できなくなってしまいますから、本切羽はビスポークでなければ通常行いません。
よって、他人がスーツの袖を見たときに「あっ、本切羽だ」=「あっ、ビスポークスーツだ」と思わせることが出来ます。事実、ビスポークスーツ愛用者の中には、本切羽の第一ボタンをわざと開けて着用する人も居るようです。(上の写真参照)
ビスポークスーツは、たいていのスーツより高価ですから、「見栄を張る」という意味では、有効な手段になるでしょう。
しかし、ある程度スーツに対する知識を持った人か、同じく見栄を張っている人しか、第一ボタンがなぜ外れているのかという意味が分からないのではないか、という疑問も残ります。(この疑問については、次回、さらに考えたいと思います)
末端の飾りとして
スーツスタイルは、末端の処理を非常に重視します。上部末端であるシャツの衿に凝ったり、左右末端である多種多様なカフリンクス(日本語で言うカフスボタン)があったり、下部末端である靴が非常に重要視されるのもそのためです。
既製服における飾りのボタンホールは、袖ボタンの位置をずらすことを前提に作られています。そのため非常に貧弱な作りになっています。なぜなら、いくら穴を開けていないとはいえ、沢山の針穴を通してしまえば抜糸した後が残ってしまうからです。
従って、見栄を張る意図とは別に、本切羽のボタンホールは、飾り切羽に比べ見た目がよいのです。
まとめ
本切羽のメリットは、見た目を良くすることと見栄を張れることに尽きます。
従って、何が何でも本切羽にする必要はありませんし、むしろ生地や縫製、採寸に力を入れるべきだと考えます。それらが良い状態になった上で、なお装飾性を高めるための本切羽ではないでしょうか。
- 本切羽は主にビスポークスーツに用いられるため、良いスーツを着ているというアピールが出来る。
# 特に、1つか2つ、わざとボタンを外すと本切羽であることがアピールできる - 本切羽のボタンホールはしっかり作るため、見栄えが良くなる。
- 生地や縫製、採寸に力を入れた上で、オプションとして本切羽を取り入れれば良いのではないか。
本切羽にするのか/しないのか、ボタンは外すのか/外さないのかというのは、個人の自由ですし、「こうあるべき」という主張は出来ません。
しかし、「わざと本切羽のボタンを外す」という事が非常に流行っているようですので、「私個人の方針」と、その流行に思うことを次回に書いて終わりにしたいと思います。