ビスポーク(オーダースーツ)

スーツを初めてオーダーするとき、気をつけたいポイント

投稿日:平成30年(2018) 10月14日 

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スーツは既製服派ですか? オーダー派ですか?

先日、「初めてスーツをオーダーするが、どういったことに気をつけたら良いか」というメッセージを戴きました。

昨今は若手サラリーマンでもスーツをオーダーする方が徐々に増えているように感じますが、未体験の方も沢山いらっしゃり、同じ悩みをお持ちの方も多いと思います。

そこで今回は、オーダースーツを初めて作るときにどういった点に気をつければ良いか、自分なりに考えてみました。

本当は難しく考える必要は全く無いのですが、初めてのオーダーは勇気が要ることですし、不安も多いことと思います。本記事が皆さんの後押しになれば幸です。

1.通いやすい店を選ぶ

最初に重要なのは店選びです。

当然、店のスキルや価格、デザインの趣味が合うか等の重要なポイントはありますが、意外と見落としがちなのが通いやすい店かどうか、という点です。

通うほどスーツは良くなる

テーラーには、生地選びと採寸、そして納品と、1着の服を作るのに最低2回、仮縫いや中縫いを含めると4回くらい通う必要があります。

それだけではありません。作る度に修正が加えられるため、今回より次回、次回より次々回の方が……と、どんどんと着心地が良くなっていきます。また、長く付き合えば付き合うほど、自分の体型や生地/ディテールの好み、既に持っている服の情報等々を店側が把握し、デザインも良くなっていきます。

さらに店側が自分の好みを把握すると「こんな生地が入った」等々、自分が好きそうなオススメ生地の入荷情報をくれることもありますし、客側としても各種相談から修理の持込まで、気軽に顔を出せることはとても大きなメリットになります。

ということで、気軽に寄ることの出来る店というポイントは後々効いてくるため、店選びの基準では重要なポイントです。

もちろん、有名店に数時間掛けて通う方もいますし、私も他県のテーラーに通う事はありますが、それは行きつけのテーラーを持った後でも良いでしょう。

 

2.予約し、空いている時間帯を狙う

店を決めたところで、次に考えるのは訪問の時間。

というのも、オーダースーツは既製服と違い、最初から最後まで担当者と1:1で相談しながら作るため、先客がいるとかなり待たされる事があるからです。(1人当たり注文時は1~1.5時間、仮縫いも30分以上かかります。)

予約をしよう

一番良いのは予約をし、自分のために時間を取って貰うことです。

とはいえ、予約をするとどうしても「注文しなくては……」という気になってしまいますし、(私を含め)気が小さい方は予約無しで来た待ち客の視線も気になります。また、そもそも小規模店等は予約制にしていないところもあります。

空いている時間帯も確認しよう

ということで、予約するしないに関わらす、電話等で店側に何曜日の何時頃が空いているか、確認することをオススメします。

混み合う週末に無理矢理行くよりも、平日に半日、または数時間有給休暇を取得して行くのも良いでしょう。

なお、3月下旬からゴールデンウィークにかけて、特に既製服を併売している店は繁忙期を迎えるため、この時期を避けるのも有効です。

 

3.お気に入りのスーツを着ていく

テーラーを訪れる時は、お気に入りのスーツやジャケパンを着ていくと良いでしょう。

普段どの様な服を着ているのか、どんな服の好みがあるのか、今の服にどんな不満があるのかといった情報をテーラーにインプットし易くなることに加え、採寸に必要なドレスシャツを着た状態にもなるからです。

2着目以降は前回作ったスーツを着ていく

また、2着目以降も、同様の理由で直前に仕立てたスーツ/ジャケパンを着ていくと良いです。

体型の変化も分かりやすく、また差分を見るだけで良いので、正確な修正がし易いためです。

 

4.予算と用途を最初に話す

恐らく何を買うにしても有効な手だと思いますが、最初に店側へ、今回の予算と用途を話す事が重要です。

スーツは、生地によってだいぶ値段が異なります。言い換えると、予算を指定することで、どの生地群から選べば良いのかを絞ることが出来、オーダーがスムーズになります。

そして用途や着用時季を指定することで、さらに選択肢を絞っていくことが出来ます。

このように選択肢を絞ることで、テーラーも生地を提案しやすくなりますし、なにより注文者側の目的が明確化されるため、出来上がりに満足しやすくなります。

以下、私がよくテーラーに伝えていることを参考までに列挙します。(1~3はマスト、4~6は決めていれば、といったところでしょうか。)

  1. 予算(例:○万円以下)
  2. 用途(例:仕事用、デスクワーク主体)
  3. 時季(例:秋冬)
  4. (例:濃いめの紺)
  5. (例:無地)
  6. スタイル(例:シングルの三つ揃い)

 

5.初回は安い生地を選び、ディテールにも凝らない

せっかくのオーダーだからと、高い生地を選び、さらに既製服と差をつけるためのディテールをてんこ盛りにしたくなるかも知れませんが、少し立ち止まって考える必要があります。

初回は安い生地を

先述したとおり、注文服は初回よりも2着目が、2着目よりもその次が、より良い物が出来上がる傾向があります。

従って、初回注文時は高い生地を使わず、まずはリーズナブルな生地を使って仕立てることをオススメします。

また、新規顧客を引き入れるための奉仕品(大量に現物を安く仕入れ、ストックしてある生地で、ベーシックな物が殆ど。初回客限定の場合もある。)を用意している事もあり、コスパが良い上に生地の性質を店側が熟知しているため、それを使うのも手です。

ディテールもあまりこだわらない

せっかくのオーダーなのだから、差をつけるためにディテールを工夫したい……と思うかも知れませんが、初回はあまりこだわりすぎない方が良いです。

理由は2つあります。1つは店側が標準としているディテールが、一番デザイン面のバランスが取れたものであることが多く、結果的に良い物が出来上がる可能性が高いからです。今後、少しずつ好みのディテールを追加していく方が安全です。

もう一つは金額の問題。フルオーダーの場合は、ディテールを複数選んでも金額が変わらないことが多いです。しかし、パターンオーダーやイージーオーダーの場合、オプションには大抵別料金がかかるため、あれもこれもとつけていると、せっかく安い生地を選んだのに、すぐに予算をオーバーしてしまいます。

※ フルオーダー、パターンオーダー、イージーオーダーの違いは以下の記事を参照下さい。

 

6.教えを請いつつ会話を楽しむ

スーツやジャケットのオーダーで重要なのは、テーラーとの会話です。

そして、その際の姿勢として重要なのが、教えを請うことと、会話を楽しむことだと思います。

教えを請うこと

テーラーはそれまで何百人、何千人という人のスーツやジャケットを仕立てた、その道の専門家です。

今時は(このサイトのように)簡単にスーツやオーダーに関する知識を手に入れる事が出来ますが、(自分で言うのもなんですが)どこまで信憑性があるか分かりませんし、それらはあくまで知識の状態であって、知っているからといって活用出来るとは限らないのです。

また、オーダーの金額には生地代や縫製代金だけでなく、接客する店員の人件費が当然乗っています。つまり、専門家に費用を支払っているわけで、それならしっかりとアドバイスを貰わないと損だとは思いませんか? 私は今でも、テーラーや店員に教えを請いつつ、注文しています。

もちろん、自分なりの意志を持つことは重要で、要望を正しく伝えると共に、最後に仕様を決めるのは自分自身ですが……。

会話を楽しむこと

ビスポーク(bespoke。カスタムメイド、服飾類をオーダーすること。)という表現の通り、スーツのオーダーは会話によって成り立ちます。

当たり前ですが、テーラーや店員のほぼ100%が服好きです。そして、好きな話題は大抵歓迎されますし、盛り上がります。

最初のうちは緊張するかも知れませんが、スーツをオーダーする上での醍醐味の一つですので、ぜひテーラーとの会話を楽しんでみて下さい。

十分にアドバイスを貰い、そして会話を楽しむためにも、前項に紹介した予約や空いている時間での訪問はとても大切です……。

 

7.つまみ食いはほどほどに

世の中には沢山のテーラーがあります。そして、スーツを1着仕立てた後、あの店の方が格好良いのではないか、自分に合っているのでないか等々、隣の芝生は青いように思うことがあります。

しかし、オーダースーツはテーラーと二人三脚で作り上げるもので、作る度に改良されていきます。

従って、「良い店を探しながら3つの店で1着ずつスーツを作る」よりもよほどのヘタか相性が悪い店で無い限り、「1つの店でスーツを3着作る」方が、最終的には良い物が出来上がる可能性が高いと感じています。

つまり、つまみ食いよりも、まずは腰を落ち着けることが重要だと思います。

限界を感じたら新規開拓もあり

とはいえ、何着か作ると進化が止まり、限界を感じることがあります。これはイージーオーダーやパターンオーダー等の、融通が利く範囲が狭い工場縫製に顕著です。

従って、そういうときは新規開拓をして、別の店の門を叩くこともアリだと思います。

店の特性を見ることも重要

店によっては、この店のスーツが合う、こっちはジャケパンが得意そうだ、といった傾向を見つけることもあります。

作るものによって、テーラーを替えるというのもアリでしょう。

 

まとめ

長くなりましたのでまとめます。

  1. 通いやすい店を選ぶ
  2. 予約し、かつ空いている時間帯を狙う
  3. お気に入りのスーツを着ていく
  4. 予算と用途を最初に話す
  5. 初回は安い生地を選び、ディテールにも凝らない
  6. テーラー/店員に教えを請いつつ会話を楽しむ
  7. 店のつまみ食いはほどほどに

オーダー(ビスポーク)の目的は、自分にとってより良いスーツを着るためです。

しかし、そこは趣味の世界。美しい靴を履くという目的を達成するための、一つの手段に過ぎない靴磨きが、趣味となって靴磨きそのものが目的となるように、個人的にはビスポークそのものを楽しむようになっても良いと思います。

ビジネスの世界では、手段の目的化は御法度ではありますが(^^;)、ファッションはあくまで趣味の世界。心の余裕として、そういった遊びも(とはいってもほどほどが重要ですが)、必要なのでは無いかと思います。

 

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