皆さんはカフリンクス(いわゆるカフスボタン)を使っていますか?
サラリーマンが日常的に使えるかは業種業界にも依ると思いますが、カフリンクスはスーツスタイルで許される数少ないアクセサリーの一つです。袖元を華やかに見せたり、少し格式張って見せたりすることが出来る便利なツールです。
今回は、そんなカフリンクスについて、名称問題、種類、選び方など、ベーシックなところを中心に考えてみたいと思います。
1.カフリンクス? カフスボタン? カフス?
最近ではカフリンクスと表記することが多くなってきましたが、カフスボタンという呼び名もまだまだ現役です。googleで検索してみると”カフリンクス”が58万件、”カフスボタン”が57万件と、ほぼ拮抗しています。
カフス・ボタン[日<cuffs +button]ワイシャツなどの袖口を閉じるために用いる、取り外しの出来る留め具のこと。各種の貴金属や宝石類でつくられ、特にダブル・カフスには欠かせない装身具。カフス・ボタンは日本独自の表現で、英語ではカフ・リンクス(cuff links)という。
カフ・リンクス[cuff links]→ カフス・ボタンとほぼ同義語だが、カフス・ボタンは日本独自の表現。
出典:文化出版局編(1999)『ファッション辞典』文化出版局
服飾関係の辞書で調べてみると、カフリンクスからはカフスボタンに飛ばされるという結果に。
一方で「カフスボタンは袖に縫い付けられたボタンのことで、カフリンクスとは異なる。カフリンクスをカフスボタンというのは日本独自の表現で誤用である」という意見もあるようですが……。
各言語での扱い
それでは、本当に日本だけの独自表現なのかを確認してみます。まず、イタリア語の辞書でcufflinksを調べてみると、「gemelli」とでました。これは双子と同じ意味で、(うろ覚えですが)古典的なカフリンクスは同じ形のプレートをチェーンで留めた形をしているから、とのこと。
続いてドイツ語。ドイツ語では「Manschettenknöpfe」で、意味は袖のボタン。フランス語も似たような単語で「boutons de manchette」同じく袖のボタンです。
英語の「cufflinks」は袖の鎖ですから、英語では鎖、イタリア語では双子、日独仏ではボタンの表現を使っているようです。――と言う事は、カフスボタンは日本独自の表現では無いようですが…… (各国語に詳しくないので、ご存知の方はぜひコメント下さい!)
「カフス」は明らかな独自表現か
一方で、「袖のカフス」などとカフスという表現をカフリンクスと同義で使うのは明らかに紛らわしい表現だと思います。というのも、カフスはcuffsのことで、袖(cuff)の複数形。「袖のカフス」は「袖の袖」で、本来であれば意味をなさないわけです。(「白いワイシャツ」に通じる物がありますね^^;)
出来れば、「カフリンクス」か「カフスボタン」を使った方が、意味が通じると思います。
2.カフリンクスの種類
カフリンクスにも様々な種類があります。現代では鎖型、レバー型、ゴム型の3タイプを多く見かけます。
鎖型
古典的なのが鎖を使うタイプ。写真のカフリンクスは表側と裏側に大きさの異なる棒がついていますが、単純に同じものが付いているパターンもあります(礼装用のオニキスやパールのカフリンクスはこのタイプが多いです)。
レバー型
こちらは最近では一般的なタイプ。袖に差すときはレバーを縦に、差し込み終わったら横にして固定します。鎖タイプより袖に取り付けやすいメリットがあります。
こちらも上記と似たようなタイプですが、ブランドロゴを入れるため、蝶番の形状が異なります。綺麗なのですが、すこし付けづらいです。
ゴム型
少しカジュアルなタイプ。ゴムの変形を利用して、袖口に取り付けます。安価(数百円)でかわいいのですが、こちらも袖口に付けづらいのが難点です。ただし、デスクワークでPC操作が多い方は、机にあたってもカチカチ言わないので、気になる方にはオススメです。
材質
カフリンクスは形状以外にも様々な種類分けが出来ます。金、銀、プラチナなどの貴金属を使った物、ダイヤ、ルビーなどの宝石を使った物、七宝焼きなどの焼き物もあります。
また、慶事の真珠貝、弔事のオニキスなど、シーンによって材質を使い分けることもあります。
3.カフリンクスの選び方
礼装や弔事を除けば、自分の好きなカフリンクスを選べば良いと思います。カフリンクスは様々な意匠を採り入れやすく、ビンテージの物をふくめ、膨大なデザインが市場に出回っています。自分の好きな形、材質、動物などを選んでみては如何でしょうか。
あえて付け加えると、金属物であれば、時計やベルトのバックルの色と揃えると統一感が出て良いと思います。(金色の時計には金色のカフリンクス、など。)
フォトギャラリー
手近のカフリンクスを撮影してみました。
こちらはチェスの駒がモチーフです。
イギリスの土産物で、イングランド国旗でもあるの聖ジョージ旗。旗物は結構沢山あります。なかでもユニオンジャックや、英国空軍の識別旗を使った物はよく見かけます。
動物も豊富です。
タイバー(ネクタイ留め)とセットになった物も多いです。
4.カフリンクスとシャツの袖
カフリンクスを使える袖と使えない袖があります。手元のシャツで確認してみて下さい。
カフリンクスが使えない袖
たとえばこちら。ボタンがついている側に、穴が有りません。カフリンクスを使う為には、カフの両側に穴が開いている必要があります。
ダブルカフにつける
カフリンクスといってまず最初に思い浮かべるのがダブルカフでしょう。こちらはボタンがついていない、カフリンクス専用のカフです。
通常のカフが折りたたまれて二つ付いている形です。(ダブルカフは、普通のカフの袖を折りたたんだ物が原型と言われています。)
装着するとこんな感じです。
裏側。
ダブルカフはカフリンクスをした際にとても美しいのですが、袖口が目立つ(華美になる)ことから、オフィスワークと言うよりはパーティー向けです。また、袖口が細いジャケットには入らない事があるので、注意です(上着やシャツを仕立てるときに確認すると良いと思います)。
シングルカフにつける
シャツの原型はシングルカフで、そのカフを折り曲げるようにして使ったのがダブルカフの始まりであり、ダブルカフをフレンチカフ(奇妙なカフの意)と呼ぶのはそのためとのこと。そのため、ダブルカフが正式でシングルカフにカフリンクスを用いることはおかしい、という事はありません。
とはいいつつ、ダブルカフが華美な印象をもたらすのは事実で、パーティーなどカフリンクスを豪華なイメージを演出するため用いるならば、ダブルカフに用いる方が合目的でしょう。
こちらは通常のボタンでも、カフリンクスを使ってもしめることが出来る、いわゆる「コンパーチブルカフ」。
こんな感じになります。
ただし、裏側はボタンと同居する形に。少し不格好に見えるかも知れません。カフリンクス好きの方の中には、カフリンクス専用にするため、袖のボタンをはさみで切ってしまうひとも居るのだとか。
一部のコンパーチブルカフのシャツでは、ボタンを内側に格納できるようになっている物があります。写真は土井縫工所のものですが、内側にシャツのボタンをしまうことが出来ます。
こうだったものが……
こうなります。
5.まとめ
- カフリンクスは英語圏の呼称で袖の鎖を意味し、イタリア語では双子、日独仏では袖のボタンという
- 鎖、レバー、ゴムなど様々な形と、貴金属、宝石など様々な素材の物が有る
- 意匠を採り入れやすいので、探せば自分好みの物が見つかる
- ダブルカフだけでなく、シングルカフの一部にも取り付けられる
- コンパーチブルカフのなかには、ボタンを格納できるタイプもある
カフリンクスは、取り入れ方次第でとても良いアクセントになります。わたしもパーティやセレモニーでは積極的に使うようにしています。一方で、普段のスーツスタイルについては、袖元はシンプルな方が好きなので、日常では付けることが少ないです。
しかし、20~30歳代のカフリンクス愛用者を社内や取引先で見かけることがあります。とてもシンプルで自然に見えることもあり、見習うべきことがおおいです。また、ラベルピン代わりにカフリンクスを用いる方法もあるそうで……。まだまだ奥が深いですね。
皆さんはカフリンクスをどう採り入れていきますか?
それでは。