3.5インチ(9cm)幅のタイ
Giorgio Armani製
皆さんはネクタイをどんな基準で選んでいますか?
好きな柄、それとも色でしょうか。今回は「ネクタイの幅」でネクタイを選ぶこと考えたいと思います。
「ネクタイの選び方」と題したときに幅から? と思うかも知れません。勿論、色や柄は非常に大事です。しかし、スーツスタイルやジャケットにネクタイを合わせるとき、幅を基準に考えるとネクタイ選びがスムーズになります。
なぜネクタイの幅でネクタイ選びがスムーズになるのか。朝の忙しい時間に、ネクタイ選びで時間がかからなくなる裏技をご紹介します。
■どの幅が一番良いの?
結論から先に言うと、ネクタイの幅はジャケットのラペル(下襟;下の写真でメジャーをあてている部分)幅とそろえると、格好良く見えます。○cmが一番良いと言うことではなく、ジャケットによりけりと言うことです。
余談ですが、ファッション雑誌等に「××の幅は○○cmでなくてはならない」という文言をよく見かけます。正直に言って、衣服には相対的な長さ(=比率)の基準はありますが、絶対的な長さの基準はありません。その人の体格によって、全て異なるからです。
サイズを考えてみる
たとえば、幅9cmのラペルがあるジャケットであれば、大剣の幅が9cmのネクタイをあわせると締まって見えます。大剣とは、ネクタイを締めたときに外側に来る幅の広い先端部をいいます。ここの一番広い部分を計ってみてください。
ネクタイの色合わせはシャツやスーツの色や柄を考えなくてはならず、最初のうちは結構手間取ります。しかし、ネクタイの幅であらかじめ合わないサイズのネクタイをフィルタリングして(除外して)おけば、もう朝のネクタイ選びで時間がかかることはありません。
ラペルはジャケットの左右に存在し、下に向かって細くなります。逆に、ネクタイは結び目から下に向かって広くなります。この▽△▽のサイズがそろうことで、端正なイメージが出来ます。真ん中が太すぎたり、逆に細すぎたりすると、アンバランスさがクラシカルな印象を壊します。
スーツのラペル幅を計る
このスーツは9cmです。スーツを購入するとき、ラペル幅に気を遣うようにすると良いと思います。
ちなみに、この斜めの筋から下がラペル(lapel;下襟)、上がカラー(collar;上襟)です。
■ジャケットを脱いだときはどうすればよいの?
「シャツは元々下着なので、人前ではジャケットを脱がないで下さい」
なんて、堅いことは言いません^^;
勿論、「シャツは下着」は正しいことです。これを貫いても良いですし、貫くことは格好良いと思います。しかし昨今夏のオフィスは「地球温暖化対策」の錦旗の元、冷房の設定温度が常に高めで、そのような意地を張ると仕事に支障を来します。
また、日本ではシャツの下に下着を身につけるため、「日本に於いてシャツは下着ではない」と考えることも出来ます。(勿論、夏以外やお客様の前ではジャケットを羽織るのが礼儀ですので、注意して下さい。気になる方は、ウエストコート(ベスト)の着用がお薦めです。)
西洋的ダンディズムを追求するのも良いですが、(格好が良い、清潔感があるという前提があれば)日本的な着こなしも有りだと思っています。
結論
閑話休題。結論を述べます。シャツだけの時、ネクタイの幅はどう考えれば良いのでしょうか。
このときは、シャツの襟の長さと開き方を基準にしてみて下さい。こちらはそこまで厳密にそろえる必要は無いです。幅広のタイには、開き方が大きく(ワイドカラーなどと言います)襟の長さが長いシャツをそろえると綺麗に見えます。
これを逆にしてしまう(開き方が狭いシャツに、幅広のタイ等)は、非常に滑稽に見えますので、気をつける程度で大丈夫です。
■常識的なネクタイの幅は?
この記事を執筆している時点では、ナローラペル――幅の狭い下襟のジャケットが流行しています。従って、皆さんのワードローブにも狭いラペルのスーツが多いのではないでしょうか。大体7センチ~8センチ程度ですね。
したがって、ネクタイも7センチ~8センチ幅の物が似合うことになります。ネクタイを買う際には参考にしてみて下さい。しかし、ネクタイを消耗品ではなく投資にしたいと考える方は、次の項目を御覧下さい。
■ネクタイとスーツは、8.5cm~9cm程度に
スーツ(シングル)のラペル幅は、基本的に7.5cm~11cm程度の間を時代によって行き来しています。日本人の体格を考えると、8.5cm~9cm程度のラペル幅はもっとも中庸で、クラシカルな印象を与えます。(流行のラペル幅は、わざと細くしすぎたり太くしすぎたりさせ、個性を演出しているからです。)
つまり、体格により若干異なりますが8.5cm~9cm程度のネクタイがもっとも長持ちすると言えます。
行き過ぎた流行は、スーツスタイルにとってもっとも金食い虫です。なぜなら、メーカーやブランドが、消費者にカネを浪費させるために生み出すのが行き過ぎた流行だからです。従って、質の高いスーツスタイルのポートフォリオ(つまりスーツやその周辺の持ち物)に、それらは一番の敵だと考えます。
ネクタイの幅は、スーツのラペルと同じく流行に左右されやすい場所です。「流行にあえて乗らない」のと、「流行遅れ」は雲泥の差があります。着用できなくなったネクタイばかりにならないよう、注意したいものです。
4インチ(10.2cm)幅のタイ。Stefano Ricci製。
外国製は幅広の物が多いです。小柄な日本人は3.5インチ(9cm)以下が良いと思います。
7.5cm幅のタイ。日本製(ネット専業、京都のネクタイ屋D+art'sのもの)。
次回紹介しますが、非常にクラシカルな紺色のドットタイ。若干細めで、これ以上細いのは流行になってしましますが、汎用性は高めです。
但し、先述したようにファッションは絶対的な数値ではなく、比率が大事です。体が大きな人は、大きめなラペルと幅広のタイを。体が小さな人は、小さめのラペルと細めのタイが基本です。
■まとめ
- ネクタイをジャケットに合わせるときは、何よりも幅を見る
- 地面と水平に定規をラペル(下襟)にあて、測定する
- 測定したラペル幅と同一幅(または±0.5cm)のネクタイを選ぶ
- 色や素材はその後考える
- シャツとの合わせは、「大襟に小幅のネクタイ」やその逆にならなければよい
- ネクタイ幅とラペル幅は流行にとらわれない
第一段階はクリアです。しかし、これだけではネクタイを選ぶことが出来ません。次回はネクタイの「色」を考えたいと思います。