雨の多い季節がやってきました。みなさんは革靴に防水スプレーを使っていますか?
一般的に、防水スプレーは手入れの最後にかけるものとされていますが、本当にそれが正しいのでしょうか。
今回は、メーカーに訊いたり、実際に検証したりしてみました。
※ (R元.06.16追記)本記事のフッ素系防水スプレーにかかる記述はコロニル社製で確認を取ったものです。コメントでご指摘頂いたとおり、他社製品については仕様が異なる可能性がありますので、製品記載の利用方法に従ってください。
1.防水スプレーは最後にかけるって本当?
一般的なシリコンを含む防水スプレーは、革の上にシリコンなどを主成分とする撥水(はっすい)層を作ります。
この層が、靴への水の浸透を防ぐと共に、水を弾くことで防水になるわけです。
一方で、2つほど疑問が出てきます。
- 綺麗に靴を磨いたのに、スプレーをかけたら汚くならない?
- フッ素を主成分とする革用防水スプレーも最後にかけるの?
そんな疑問を持ったので、今回の記事を書くことにしました。
2.綺麗に靴を磨いたのに、スプレーをかけたら汚くならない?
シリコン系の防水スプレーは、手入れの最後に噴霧
先述の通り、シリコンを含む防水スプレーは、革の上に撥水層を作ることで水を弾きます。
したがって、その上から靴クリームを塗ってしまうと、撥水層を剥がしてしまうことになるため、スプレーをかけた意味が無くなってしまうわけです。
つまり、シリコン系の防水スプレーは、手入れの最後にかける必要があります。
防水スプレーが見た目を悪くことも……
一方で、最後にかけることで問題もあります。
それは、せっかく磨いた靴が、マットな感じになって輝きを失ったり、スプレーの痕跡がのこったりして汚くなってしまうことです。
そのため、革靴を手入れする際、私と同様あまり防水スプレーを使わないという方も多いのではないでしょうか。
3.フッ素系なら磨く前にかけても大丈夫?
シリコンタイプの防水スプレーは、安価で入手しやすい反面、靴店やメーカーに聞くと「革の透湿性や靴クリームの浸透力を奪うため、靴の寿命を縮める」という課題がありました。
そこで登場してきたのが、透湿性も浸透力も維持できるフッ素系の防水スプレーです。
フッ素系は、シリコンタイプのように革の上に層を作るのでは無く、革に浸透して作用します。
したがって、理論上は磨く前に噴霧しても大丈夫なはずですが、「使い方」等をみても「ホコリや汚れを落としてから」など参考になる情報は掲載されていません。
4.販売元に聞いてみる
そこで、フッ素系防水スプレーでよく見る「コロニル ウォーターストップ」の販売元に、磨く前に噴霧しても問題無いかを確認してみました。
磨く前に噴霧してOK
結論から書いてしまうと、OKでした。
コロニルブランドの防水スプレーは、一部を除いて素材に浸透するタイプのため、噴霧した後に靴クリームを塗布しても防水・防汚効果が落ちることは無いとのことでした。
むしろ、ステインリムーバーを使ってから
さらに、ステインリムーバー(コロニルの場合はユニクリームですね)等の汚れ落としを使ってからの方が良いそう。
つまり、最後に噴霧するのは、クリームやワックスが防水成分の浸透を阻害するため、逆にNGというわけです。
つまり、靴磨きの順番で言うと……
- ブラッシングをしてホコリを落とす
- ステインリムーバーで汚れや古いワックスを落としてすっぴんに
- ★ここで防水スプレー★
- 乳化性クリームの塗布&ブラッシング
- 油性靴墨でワックス掛け
というわけです。
磨いた後にスプレーをかけるべきという意見も……
一方で、ブログやECサイトの中には、フッ素系防水スプレーの紹介ページでも、磨いた後に噴霧する方法を紹介していることが多いです。
――ということで、どっちが良いのか実際に試して見ることにしました。
5.スプレーしてから靴を磨いても大丈夫か実験してみた
防水スプレーを使いつつ磨く
今回の実験対象はこちら。以前、雨用にと購入したリーガルのダブルモンクストラップです。(詳細は以下の記事をご覧下さい。)
左足は防水スプレーをかけてから磨く方法、右足は最後にかける方法で実験してみます。
使うアイテムはこちら。
右から順番に――
- 汚れ落とし:(モゥブレィ)ステインリムーバー
- フッ素系防水スプレー:(コロニル)ウォーターストップ
- 靴クリーム:(サフィール)サフィールノワール クレム1925
- 油性ワックス:(モゥブレィ)トラディショナルワックス
以上の順に使っていきます。
汚れを落とす
まずは左足から。馬毛ブラシでホコリを落とした後、ステインリムーバーで汚れを取り除いた状態です。
ワックスが落ちて、すっかりマットな状態になりました。
左足は汚れ落としの後、防水スプレーをかける
そこに、コロニル・ウォーターストップを左足のみ噴霧。
写真では少しわかりにくいですが、表面がすこしざらついた感じになります。
右足は、最後に防水スプレーを噴霧
つづいて、左足は普段通りクレム1925を塗って、ブラッシング。その後、トラディショナルワックスで磨きました。
右足も、ステインリムーバーからワックスまで(防水スプレーの噴霧を除いて)同様に手入れを完了させました。
そして、手入れが終わった右足に、防水スプレーをかけたところ。さっきまで輝いていたのが一気にマットな感じに^^;
ストッキングで磨きますが、正直輝きは元に戻りません。(これがあるので、防水スプレーを使うのをためらう方が多いと思います。)
雨の日に使ってみる
翌日、思い通り雨が降りましたので早速傘を差して歩いてみることに。実際は雨というよりは大雨でしたが^^;
出発直前の様子。
土砂降りを10分歩いてみました。 って、トゥやストラップ部分は防げたものの、屈曲部分が両方濡れてる^^;
フッ素系は防水性がシリコン系に比べて弱いと感じていましたが、ズボンのクリースが取れるほどの大雨にはなすすべも無い感じでした。(実験日を間違えたかも?)
しかし、10分ほど経つと明らかな違いが。なんと、右足は水染みが残ったのに対し、左足はすぐに水染みが取れました。
フッ素系物質が革の中に浸透し、革の中で水を防ぐというのは、こういうことなんですね。
(シリコン系の「コロコロ弾く」をイメージしていると、期待外れに感じるかもしれませんが、これはこれでアリかもしれません……。)
そして、右足のように、フッ素系防水スプレーの場合「後がけ」をすると効果が落ちることも分かりました。
6.まとめ
少し長くなったのでまとめます。
- 防水スプレーにはシリコン系(革の表面に撥水層を作り水を弾く)とフッ素系(革の中に浸透して水を防ぐ)がある
- 手入れの最後に噴霧する必要があるのはシリコン系の話(綺麗に磨いた靴の見た目に影響が出てしまうデメリットに繋がる)
→ 防水スプレーだからといって、十把一絡げに「最後にスプレー」はダメ - フッ素系は革の中に浸透するため、靴クリームを塗る前に噴霧が可能で、普段通り磨き上げることが出来る
- フッ素系は防水力はシリコン系に劣るものの、革の内部まで水分が浸透することを防げるなど、一定の効果がある
製品によってはシリコン系とフッ素系のハイブリッド型もあるようです。
ただ、革とシリコンの相性の悪さを指摘する意見も多く、(シリコン系ほど抜群の効果は見込めませんが)フッ素系のみ使っていこうかと考えています。
防水スプレーは意外と奥が深いですね……。本件について「自分はこうしている」「こうだった」など、情報をお持ちのかたがいたら、是非コメントをください!