全3回を予定している「雨と革靴について考える」はとりあえず今回が最終回です。
いままで、以下のような内容で雨と革靴について考えてきました。
第1回:雨の日にはどの様な革靴を履けばよいか
第2回:通常の革靴の雨予防
第3回:雨に降られた後の処置(今回)
今回は「雨に降られふやけてしまった革靴をどの様にすれば元通りになるのか」を考えたいと思います。色々なケアの仕方があると思いますので、あくまで私が行っている一例として、試行錯誤の材料にしていただければ幸いです。
また、「こんな方法があるよ」と言うかた、是非コメントを下さい。
3つのポイント
雨がたっぷりしみこんだ靴は、以下のポイントで処理をしています。
1.すぐに乾燥させる
2.乾燥させすぎない
3.油分を補給する
この3つさえ守ることが出来れば、雨はそれほど怖い存在ではありません。
一つずつ、紹介していきます。
1.すぐに乾燥させる
水を吸い込んだ革は、カビの格好の餌食になったり、そのまま履きつづけると著しく皮革の耐久力を低下させます。
そこで、はじめに、これ以上革に水が入り込まないようにします。
→ 雑巾などで軽く叩くようにして(=ホコリで傷をつけないように)、表面の水滴をぬぐいます。
続いて、靴に浸透した水分や湿気を取り去ります。市販の除湿剤を突っ込んでも良いのですが、ここでは手っ取り早く新聞紙を使います。
→ 次の写真のように、新聞紙を太い棒状に丸めた上で、靴の中に突っ込みます。さらに、踵を浮かせます。
踵を浮かせるのは、革底が直接新聞紙や地面と接しないようにするためです。空気の通り道をつくり、除湿の効率を上げます。
2.乾燥させすぎない
前項と少し矛盾しているように見えますが、革の乾燥させすぎはかえって革を傷めてしまいます。
この新聞紙は最初は2時間に1回程度交換し、余り湿気が新聞紙に移っていない感じがしたら、3-5時間に1回程度のレートに下げます。これを晴れている日は1日、湿度の多い日は2日程度続けます。しかし、ある程度乾燥が出来たと思ったら、シューキーパーに切り替え、3番の動作に移って下さい。
少し湿気が残っているくらいが適切です。
3.油分を補給する
乾燥した肌に、水分補給といって水を塗布し続けたらどうなるでしょうか。答えは簡単、肌荒れがさらに深刻化します。
これと同じ理屈で、水を吸収した皮革は、急速に油分を失って硬く(=脆く)なります。従って、ある程度靴が乾燥したら、油分を補給してやる必要があります。
補給のさせ方はいたってシンプルです。通常通りの手入れと同じか、少し多めに乳化性クリームを塗布して、ブラッシングし、磨いてやれば大丈夫です。革底にも、乳化性クリームや(滑るのが心配であれば)専用のソールトニック、ソールモイスチャライザーなどを塗って下さい。
雨に濡れた靴の場合、次回の出動は少し間隔を開けてやって下さい。というのも、油分補給後も水分が残っていますので、風通しの良い日陰で穏やかな除湿をする必要があるからです。その際、シューキーパーの装着をお忘れ無く。
だいたい、雨に濡れて1週間程度は休ませてあげることをお薦めします。
(番外)トラブルFAQ
雨に降られてしまった場合の「いつもの」処理は、上記1-3を粛々と行って下さい。(特に慌てる必要はありません)
しかし、雨に降られたことによっていくつか「靴に異変」が生じることがあります。下記を参考にしていただければ幸いです。
Q. 雨に降られたら甲革がまだら模様に!
A. 思い切って全体をぬらしてみて下さい。
これはデリケートな革(と鞣し方)に良く生じます(アニリンカーフなど)。この場合、クリーム等で隠したり、乾燥をさせたところで元には戻りません。ここで、目的は「元の色に戻す」ことではなく、「まだらにならないようにする」と言うことを意識して下さい。
従って、全体をぬらせば均一な色になります。その後、通常通りケアして下さい。
荒療治に見えますが、「革製品を洗う」という行為は、乗馬が盛んな欧洲では頻繁に行われてきました。そのための製品もありますので、簡単に紹介したいと思います。
▲ モゥブレイのサドルソープ
これはサドルソープといって、元来乗馬用の革製品を綺麗にするための物です。泥まみれになった靴を綺麗にする際に効果的ですが、水をつけながら洗うため、今回のような部分変色時にも効果を発揮します。
※今後、別途記事にて使い方等詳細をお伝えしたいと思います。
Q. 乾燥させたら白いボツボツが!
A. まずはステインリムーバーを。ダメだったらサドルソープで洗って下さい。
革を生産する工程で使用した塩や、汗に含まれるミネラルが析出したのがこの白いボツボツの正体です。多くの場合、ステインリムーバーで除去できますが、完全に乾燥してしまった場合などは前掲のサドルソープで洗ってみて下さい。綺麗にとれると思います。
まとめ
- すぐに乾燥させる
- 乾燥させすぎない
- 油分を補給する(→手入れする)
全3回の「雨と革靴について考える」ですが、如何でしょうか。雨用の靴を考え、雨に備え、降られたあとも対策をする――これでずいぶんと気が楽になりませんか?
# 前回か他の記事で、「オーバーシューズ」について書きますなんて言った気がしますが、
# 記事が長くなってしまったので、次回以降で(出来れば今年中に……)ご紹介したいと思います。
# まだ日本では一般的ではありませんが、靴の上からかぶせるゴム製の靴です。おたのしみに!?
→ 後日書きました オーバーシューズ
リンク
第1回:雨の日にはどの様な革靴を履けばよいか
第2回:通常の革靴の雨予防
第3回:雨に降られた後の処置(今回)