前編では、ネクタイピンについて、定義や種類の違い、そして必要性について取り上げました。
今回は、もう少し実用寄りの、使い方や選び方について考えます。また、最後に前後編を通してまとめてみました。
1.ネクタイピンの最適な位置は?
おすすめは自然にノットが持ち上がる位置
ネクタイピン(ここではタイクリップを想定します)をする大きな目的の一つに、ネクタイのノット(結び目)を適度かつ自然に持ち上げる、というものがあります。
そのため、留める位置が下過ぎるとタイが途中でゆがみ(かつ間抜けに見え)ますし、上すぎてもペチャンコになってしまいます。
タイの厚さや芯地のコシにもよりますが、おおまかに中間くらいか、中間より少し上ぐらいが丁度良いと思います。
また、ビジネス用途には余り目立たない方が良いと思いますので、個人的なオススメとしては、ジャケットに少し隠れる位が控えめが好きです。
極端に上で止めるやり方もあるが……
写真のような、極端に上で留める方法を、雑誌などで見たことが有るかも知れません。
ただ、タイクリップが悪目立ちしてしまい、ビジネス用途には不向きだと感じます。また、パーティ等の用途であっても、私の感覚からすると不自然さが拭えません……。
どうしてもこの位置で目立たせるのならば、まだタイタック(前回の記事参照)の方が、向いているのでは無いでしょうか。
2.敢えてネクタイピンを見せない留め方
前回の記事で、ネクタイピンの目的は以下の3つがあるのではと考察しました。
- 見た目のため①:タイにボリュームを持たせる
- 見た目のため②:アクセサリーとして
- 実用のため:タイを固定する
夏場に軽めの装いをしたいとき(例えば、麻のシャツ/タイ/ジャケットのセットなど)、ネクタイピンのアクセサリーとしての装飾性が要らない時があります。
つまり、上記で言う1と3だけ欲しく、2は不要というケースの留め方をご紹介します。
シャツ、タイループ、小剣を挟む
やり方は簡単。通常は、外側から大剣、小剣、シャツを挟みますが、大剣の代わりにタイループ(小剣通し)を挟むだけ。
これで、タイクリップを表に出さずに、タイにボリュームを持たせつつ、ネクタイを固定することが出来ます。
タイループの位置によっては、ノットを持ち上げる効果が少なくなりますが、タイクリップが無いよりは見栄えは良くなります。
なお、留めるのがシャツと小剣だけだと、大剣の横方向の動きを制御出来ても上下に動くため、ボリュームを持たせることは難しくなります。また、タイバー(バネがついていないタイプ)だと落下の危険性があるため、タイクリップの使用をお勧めします。
実はこの方法、前々回の記事で2人の方からコメントを偶然戴いており、結構メジャーな方法だと思われます。
3.ネクタイピンの選び方
基本は身に付ける金属の色とあわせる
靴とベルトはもちろん、かばん、時計のバンド、手袋……といったように、革製品の色を合わせると統一感が出て、格好がよいものです。
ネクタイピンも似た様に、身に付ける金属の色とあわせるようにします。
例えば、ベルトのバックル、時計のケースや金属ブレス、靴のストラップバックル、鞄の金属金具、カフリンクス、ブレイシーズ(サスペンダー)の金具、万年筆の金属パーツ等々……。スーツスタイルも金属が多いですが、これらの色とあわせることで、統一感を出すことが出来ます。
ネクタイピンの長さを確認する
ネクタイピンもネクタイの幅に合わせて、様々な長さがあります。
たまに、ナロータイ用の短いネクタイピンを、普通のネクタイにしている人を見かけます。しかし、これでは上手く留められませんし、見た目にもアンバランスになってしまいます。
目安として、5センチ位はあった方か良いでしょう。
クリップタイプのシンプルな物から
もし、ネクタイピンをまだ持っていないのなら、クリップタイプのシンプルな物をオススメします。
キャラクターや宝石がついた物もありますが、Vゾーンの主役はあくまでネクタイ。プレーンなものであれば、ビジネスから冠婚葬祭まで幅広く使えます。
クリップを選ぶのは、ネクタイを傷つけないためです。慣れないうちは、ネクタイピンを留める場所が定まらないでしょうから、擦れて傷つけやすいタイバーより、タイクリップがオススメです。
4.まとめ
最後に、前編も含めてまとめてみます。
- ネクタイピンは「ネクタイ留め」全般を指すことが多いが、日本独自の表現だと思われる(ネクタイ留めを英訳すると tie clasp)
- ネクタイピンにはタイクリップ、タイバー、タイピン、タイタック、タイチェーンなど複数の種類がある
- 現役はタイクリップとタイバーだが、機能的な問題からタイクリップの方がおすすめ
- ネクタイピンの役割は主に、ノット部分のボリューム維持、アクセサリー、タイの固定の3つ
- タイクリップを留める位置は、ネクタイの半分か半分より少し上、ジャケットに少し隠れるくらいがおすすめ
- シャツ、小剣、タイループをまとめて挟むことで、敢えてタイクリップを見せない留め方もある
- ネクタイピンの選び方は、身に付ける金属の色と合わせる
- ネクタイピンは、ネクタイの幅に応じた長さを選ぶ必要がある
- 初めて買うときは、シンプルなクリップタイプがおすすめ
たかがネクタイ留めですが、こうしてみると様々なポイントが見えてきます。
興味が湧いた方は、是非取り入れてみて下さい。