先日友人とクローゼットの除湿の話題になったとき、「据え置きタイプは湿気が良くとれない」「ハンガータイプが良い」という話を聞きました。
従来、湿気は下に溜まるものだから、クローゼットの床面に設置できる据え置きタイプの方が有利だと思っていたので、かなり意外でした。
もう少し待てば乾燥した季節がやってきますが、関東では例年11月はかなり湿度が高く衣替えのタイミングとも重なりますので、クローゼットの除湿について考えてみようと思います。
1.クローゼットに除湿が必要?
本題に入る前に、そもそもなぜ除湿が必要なのかを考えてみることにします。(ご存知の方は読み飛ばして下さい)
服やタイはカビが生えやすい
スーツやジャケット、ネクタイなどの生地は、その多くが天然繊維が使われています。湿度が高い環境下では、天然繊維にはカビが生えやすく、私も何度かやらかしてしまったことがあります。
また、食べこぼしや人間の皮脂か付着した状態では、特に生えやすく、ポリエステルなどの人工繊維にさえこの状態ではカビが発生します。
スーツはクリーニングである程度落ちるのですが、ネクタイはクリーニングが難しく、がっかりしてしまいます。
どのくらいでカビが発生するか
諸説ありますが、60%程度を境にして、これよりも湿度が高くなるとカビが生えやすいとのこと。とくに密閉した(空気の通りが悪い)環境では、飛躍的に発生確率が高くなります。
2.ハンガータイプの除湿剤とは?
除湿剤が小分けされた袋に入っており、それを一体型のハンガーでクローゼット内に吊すことが出来ます。除湿剤の内容そのものは、基本的に据え置きタイプと同じものが使われており、発売しているメーカーもだいたい同じです。(防虫剤や防カビ剤などを添加した物もあるようです)
メリット
衣服と衣服の間に吊すことが出来るので、服に溜まった湿気を優先的に取り除くことが出来ます。
また、これは実物を見て初めて実感したのですが、湿気を吸収する面積が据え置きタイプの何倍もあるため、湿気の吸収スピードが段違いに早く感じました。
左が据え置きタイプ、右がハンガータイプ。面積は3倍以上。
デメリット
「湿気は下に溜まるので、クローゼットの床面に置ける据え置きタイプが有利」と従来は言われていましたし、私もそう思ったので据え置きタイプを使ってきました。
しかし、(レビューの項で後述しますが)実際に使うとそんなことは無いか、あるいはメリットの方が上回ったので、湿気の吸収力は段違いにハンガータイプの方が上でした。
従って、現時点でのデメリットは、良く湿気を吸収するので使用期間が短い(1~2ヶ月程度)ことと、価格が若干割高なこと(セールにかかることも少ない)、2枚入りの場合は袋を開封したら両方とも使い始めなくてはならないこと、ぐらいです。
3.据え置きタイプの除湿剤とは?
ドラッグストアーなどでよく安売りをしているアレです。3個パックタイプがメジャー。
メリット
除湿できる総量が多いことと、床面に置くため邪魔になりにくいと言う事が挙げられます。
ハンガータイプは大きなクローゼット用タイプが2シートで500gの除湿量があります。一方据え置きタイプは1個で400~550gの除湿量があります。
そのため、除湿量に対するコストも据え置きの方が有利です。ハンガータイプは2シート単位、据え置きタイプは3個パック単位でだいたい販売されており、それでも価格はハンガータイプの方が高いことが多いです。
デメリット
ハンガータイプの項目にも書きましたが、除湿スピードが非常にゆっくりなことが挙げられます。除湿総量は多いのですが、緩やかな除湿になってしまうため、密閉されていないクローゼットでは効果を発揮しにくいようです。
また、クローゼットの床面に鞄を置きたい場合は要注意です。除湿剤に使用される塩化カルシウムは革を溶かすため、溶液が鞄に付着しないように置き場所に留意した方が良いでしょう。
4.買ってみた
とりあえず、半信半疑のままハンガータイプの除湿剤を購入してみました。
今回は2種類購入してみました。いずれも白元アース社のものです。
大型のもの(写真上)が500円台、小型のもの(写真下)が200円台でした。
クローゼット用
クローゼット用は、4連装2枚入り。
よく見ると、据え置きタイプの除湿剤に入っているやつと同じに見えます。
湿気を吸う不織布の面積はかなり広いです。
実際にクローゼットへ掛けてみたところ。かなり薄いので邪魔になることはありません。
洋服ダンス用
こちらは2連装2枚。パッケージの色は薄いですが、中身は同じもののようです。クローゼットの容量に合わせ、クローゼット用と洋服ダンス用は組み合わせて利用できます。
ウラはこんな感じ。
クローゼット用との比較。
5.使ってみた
実験は2日に亘って行ったのですが、曇りの天気が続き、東京の平均湿度は連日70%を越えていました。
据え置きタイプの結果
比較のために、最初に据え置きタイプの除湿剤を使ってみます。1,000L程度、服がそこそこ入ったクローゼットの左端と右端にそれぞれ1個ずつ配置します。(何れの実験でも、湿度の確認以外で扉の開閉はしませんでした。)
6時間後、湿度計を確認します。クローゼットが置いてある部屋の湿度計は70%に対して、クローゼットの中は65%。あまり下がっていない印象です。さらに6時間後、部屋は68%に対して、クローゼットは65%と変わらずでした。
ハンガータイプの結果
据え置きタイプの除湿剤をクローゼットから取り出し、換気して1日後、今度はハンガータイプの除湿剤を入れます。クローゼットの容量は約1,000Lなので、クローゼット用を1シート使う事にしました。
同じく6時間後に湿度計を確認します。部屋の湿度計は71%に対して、クローゼット内は61%とかなり健闘しています。さらに6時間後、部屋は67%に対して、クローゼット内は60%でした。
考察
今回、据え置きタイプにはオカモトの550gタイプを2つ使いました。つまり総容量は1,100gです。一方、ハンガータイプは250gタイプを1つ。吸湿の総容量的には、クローゼットタイプが4分の1以下の能力ですが、結果はクローゼットタイプに軍配が上がりました。
実験に使ったクローゼットは換気用のスリットはないものの、観音開き式に開閉するため、ドアと本体に僅かな隙間があります。また、木製のため、湿度が外から追加で入ってきやすい環境にあったと思います。従って、湿気の吸収スピードでは、ハンガータイプの方が優秀なのだと考えます。
上記結果から、パッキンなどで密閉がしっかりしている収納であればコストパフォーマンスの観点から「据え置きタイプ」が、密閉が完璧で無く開け閉めが多い場合には「ハンガータイプ」がオススメです。
6.まとめ
- ハンガータイプの方が吸湿スピードが早い
- 吸湿できる総容量は据え置きタイプの方が多い
- 密閉出来る環境では据え置きタイプが良いが、普通のクローゼットではハンガータイプの方がおすすめ
- 据え置きタイプでは、クローゼットの床にカバンを置く人は、溶液に触れないよう注意する
「湿気は下に溜まるもの → 据え置きの方が良いはず!」「据え置きの方が総容量が多い → コスパも優秀!」と、かなり先入観にとらわれていましたが、湿気は常に外から浸入してくると考えると、吸湿スピードの観点も重要だと分かりました。
参考リンク
- 過去記事:「梅雨への備え! クローゼットの除湿を考える」
今回は衣替え用など、開け閉めが多くないクローゼットを念頭に考えました。これが、一日数回開け閉めをする場合は、木炭による調湿+サーキュレーターによる換気をオススメします。 - ドライ&ドライUP 湿気とり クローゼット用(今回レビューしたもの)
- ドライ&ドライUP 湿気とり 洋服ダンス用(今回レビューしたもの)