皆さんはシャツをどこで買っていますか? 勿論、全てビスポーク!(誂え)なんていう方もいると思いますが、デザインなどを考えると、殆どの方は、シャツの何割かは既製のシャツだと思います。
そこで問題になってくるのが袖丈(袖<そで>の長さ)です。通常、シャツは首回りでサイズ分けされているのですが、首回りは身長に余り比例しないため、おなじ首回り38cmの人でも、手が長い人~短い人の差が非常に激しくなります。
袖丈は短いと着られませんが、(見栄えは悪くなりますが)長ければ着られるため、おおよそ、手が長い人にそのサイズがあわされていることが殆どで、私のように手が短いと余ってしまう場合が多いですよね^^;
※ 特に高価格帯や、インポート物にその傾向が顕著です。
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そこで、余ってしまった袖をどうするか、あるいは袖が長くて買うのをあきらめていたのをどうするか、今回は長いシャツの袖について考えてみたいと思います。
最適な袖の長さとは
対策を考える前に、「最適な袖の長さ」とは何かを軽く考えてみます。いろいろな視点があると思いますが、私が普段意識しているのは次の2点です。
- ジャケットの袖から覗くシャツの長さ
- ジャケットを脱いだときのシャツのだぶつき
前者はよく「ハーフインチ」(1.3センチくらい)なんて言われますが、これが無かったり、長かったりすると、不格好に見えてしまうところです。
後者は対策1でもご紹介する、無理矢理手首の位置で留めた場合に出来る物です。シャツを下着と考えてしまえば良いことは良いのですが、ジャケットを脱いでしまうと、これも不格好に見えてしまいます。
上記2点を考慮した上で、引き続き対策法を考えたいと思います。
対策案1:ボタンの位置をかえる
袖の長さの「余り」が軽度な場合に最適な方法です。既製品のシャツの多くは、手首(カフ)のサイズが大きな人向けに作られています。カフサイズが大きければ、太い手首の人も細い手首の人も入りますが、逆だと問題ですよね。
そのため、手首の丁度良い位置でカフが止まらず、袖が長く見えてしまうのです。したがって、ボタンの位置を内側にずらすことで、袖が出てしまうのを防ぎます。
次の画像を御覧下さい。
これはインポート物のシャツのボタン位置をずらした(自分で付け替えた)例です。本来であれば、ステッチの少し内側くらいにボタンがあるはずですが、内側に2センチ程度ずらしました。
ボタンをとめると以下のような感じになります。
すこしアール(カーブ)の部分が隠れてしまいますが、殆ど見た目に違和感が無いことが分かります。
だいたい3~5センチ程度長い物であれば、この方法で対処できます。ではもう少し長い場合はどうでしょうか。 その場合は対策案2を御覧下さい。
対策案2:アームバンド、シャツガーターを使う
皆さんはアームバンドやシャツガーターをご存じでしょうか?
こちらがアームバンド。フォーマルウェア/グッズの範疇に入ることが多いです。
アームバンドはシャツをたぐり寄せた状態で二の腕や肘の部分で留めてしまう物で、装着がしやすく、調整もしやすいのがメリットですが、キツい物を選んでしまうと腕が痛くなる(鬱血する)のがデメリットです。
また、「一昔前の事務職員」というイメージも、人によってはあるかも知れません。
そして、こちらがシャツガーターです。ビリヤードをやっている方ならよく見かけると思いますが、値段も手頃で、国内でも、だいたい1000円ちょっとで買えます。
こちらは二の腕の位置で使い、余ったシャツをつり上げるようにして使います。(ガーターベルト、ガーター勲章とおなじ意味のガーター(garter)です)
このようにして鰐口を開き、
装着します。
アームバンドが一般的には金色、銀色、黒色などしか無いのに対して、シャツガーターはバンドに様々な色/模様のものがあるので、コーディネートもしやすいです。一方で、装着や調整が面倒というデメリットもあります。
さて、アームバンドやシャツガーターも使いたくない、あるいは留めている部分のだぶつきも気になると言う方は、対策案3へお進み下さい……。
対策案3:シャツの袖丈を「お直し」する
店にも依りますが、だいたい2500円~4000円程度でシャツの袖丈を詰めてくれます。一番良いのは、シャツを買うときに頼んでしまうことで、土井縫工所など、安いところは1000円位でやってくれます。
ただし、この方法にもいくつかデメリットがあります。一番大きいのはシルエットが微妙に変化してしまうことです。
シャツの腕は、肩から袖にかけて湾曲しながらすぼまっていく設計になっています。特に高級シャツの場合は、これが緻密に計算されたカーブを描いていることが殆どです。これを詰めてしまった場合、そのシルエットが崩れてしまいます。
ですから、5センチ以上詰める場合は、シルエットが結構崩れることを覚悟すべきです。
もう一つのデメリットが縫製が引き継がれないことです。シャツの袖つめは、カフをいったん取り外した上で、剣ボロごと肘側に移動させます。従って、手縫いのシャツによくあるカフの細かいプリーツなど、店によっては再現出来ない可能性や、追加料金を取られる可能性があります。
決して万能でない「お直し」ですが、優秀な修理工場であれば、かなりの部分まで元のテイストを再現してくれます。街の修理屋からチェーン店まで、評判の良いところを見つけてみて下さい。
お薦めの方法として、いつも使っているテーラーに頼んでしまうというのがあります。テーラーは服の修理も行うため、サイズ直しについては人脈があります。取引のある修理工場や、修理職人があるはずで、また、修理後のサイズも十分に理解しています。
まとめ
既製品のシャツは万人が着用できるよう、特に海外物を中心に袖丈が長い傾向があります。ジャケットの袖から覗くシャツのサイズが長すぎたり短すぎたりするのは不格好です。従って、既製品のシャツの袖丈は調整する必要がある場合があります。今回考えた案は3つ。
案1:ボタンの位置を変える
・メリット:低コストで簡単手軽
・デメリット:袖が長すぎる場合はシャツがだぶついてしまうことも
案2:アームバンド、シャツガーターを使う
・メリット:そのものにもファッション性があり、ある程度長い袖にも使える
・デメリット:腕が痛くなる(アームバンド)、調節が難しい(シャツガーター)ことも
案3:シャツの袖丈を「お直し」する
・メリット:道具を使った煩わしさが無い
・デメリット:費用がかかる、詰めすぎるとシルエットが崩れるなど
手持ちのシャツに長すぎたりするものはありますか?
私は、基本的にシャツは作ってしまうことが多いのですが、既製品も衿が綺麗であることなどを理由に、買うことが多々あります。案1~3は全て私が実践していることなのですが、最近は案3が多めです。
また、シルエットが崩れそうなときは、軽めの案3(袖詰め)をやっておきながら、案1(ボタン移動)を併用するというパターンもあります。
「ジャケットから少し覗くシャツの袖」については「トラウザーズ(ズボン)から覗くホーズ(靴下)」
と似たような格好良さ/色っぽさを感じるところですよね。ですから、シャツはどんな姿勢でも同じ位の長さが出て欲しいのですが……難しいところです。
※ ジャケットの袖の長さ、ジャケットの構造なども決め手になるのですが――その話は別の機会にでも。